逆子への対処と鍼灸治療の効果

外回転術や逆子体操に並んで有名な「逆子のお灸」

「逆子のお灸」は矯正率が80%以上との報告もあり、早い段階で鍼灸を受けられるほど矯正率は上がります。

そのため、逆子状態と分かった際には早めの鍼灸施術をおすすめします。

今回はそんな逆子について綴らせていただきました。

そもそも逆子とは

通常、胎児は頭を下にして丸くなっています。

対して、逆子は「骨盤位」と呼ばれ胎児の頭が上に、おしりや足が下になっている状態です。

逆子の種類

胎児の姿勢により呼び名(種類)が変わり、単臀位、足位、膝位、横位が代表的な姿勢です。

単臀位

お尻を下に向け、両足が上に伸びている状態です。

逆子のなかでも多い姿勢で、産院によっては経膣分娩が可能な場合もあります。

足位

足を下に伸ばした状態です。

足の伸ばし方により、両足を伸ばした「全足位」、片足を伸ばした「不全足位」と呼び名が変わります。

分娩時は頭が最後になり胎児に危険がおよぶため、帝王切開での出産になります。

膝位

曲げた膝が下を向いている状態です。

膝の状態により、両膝をついた「全膝位」、片膝ついた「不全膝位」と呼び名が変わります。

こちらも足位と同様で帝王切開での出産になります。

横位

胎児の身体が横を向いている状態です。

肩や手が下を向くため、頭が産道を通る事が難しく、帝王切開での出産になります。

全体の約1%以下と非常に稀な体位です。

逆子が危険な理由

胎児と胎盤を繋ぐ「臍帯(臍の緒)」や「頭・腕(肩甲部)」の娩出困難を防ぐために、頭位での出産が推奨されています。

臍帯や頭・腕が引っかかり娩出困難になってしまうと、児頭と臍帯の圧迫による新生児仮死、肩甲部の娩出困難による鎖骨骨折、児頭の娩出困難による腕神経麻痺などが起こります

そのため、妊娠33週の検診で骨盤位の場合に37〜38週での予定帝王切開が多く行われています。

逆子が判明する時期

27週〜34週頃の間に「逆子」と判明することが多いようです。

27週までは子宮内が広いので、胎児は動き回ることができます。
そのため、妊娠中期(27週未満)での逆子の割合は全妊娠の20%~30%と言われておりますが、多くは妊娠後期に胎児の成長に合わせ、最も重い頭を下に向けた「頭位」に落ち着きます。

また、妊娠中いつの時点においても自然に頭位になる可能性があり、36週でも分娩時までに6~7%は頭位になるため、37週以降での逆子の割合は全分娩の約3%になります。

逆子の原因

子宮や骨盤の形態、多胎妊娠、羊水の量、胎児によるものなど、原因はさまざまです。

なかでも子宮奇形、前置胎盤、多胎妊娠、重症妊娠高血圧症候群は鍼灸不適応になります。

子宮の形態によるもの

子宮筋腫や生まれつき子宮が狭い場合、胎児の動きが制限されるため、逆子になりやすいと考えられています。

胎盤によるもの

胎盤の端が胎児の出口(内子宮口)近くにある状態「低置胎盤」、出口を覆ってしまう状態「前置胎盤」は、逆子になりやすいと考えられています。

多胎妊娠

双子や三つ子など、胎児の動けるスペースが狭くなることで、逆子になりやすいと考えられています。

洋水によるもの

羊水の過小は胎児が動きづらい状態に、洋水の過多は自由に動けるがために逆子になりやすいと考えられています。

胎児によるもの

子宮内胎児発育遅延や水頭症は逆子になる可能性があると考えられています。

逆子への対処法

有名なものとして「外回転術」、「逆子体操」、「逆子のお灸」があります。

しかし「逆子体操」と「逆子のお灸」は科学的根拠(エビデンス)が薄いとの理由から推奨していない産院もあるため、主治医の先生とお話のうえで試されることをおすすめします。

外回転術

超音波で胎児の向きを確認し、妊婦さんのお腹の上から胎児の頭とお尻をしっかりと持ち、回転させて「頭位」に矯正する手技です。

一般的に36週や37週目で逆子の際に行われます。

逆子体操

胎児が「頭位」になるよう手伝う体操です。

「ブリッジ体操」

仰向けにな、腰の下にクッションを入れ、膝を曲げてブリッジするように骨盤を持ち上げた姿勢を10分程キープする運動です。

「胸膝体操」

四つ這いになり、お尻を高く持ち上げた姿勢を10分程キープする運動です。

逆子のお灸

逆子に有効とされるツボにお灸を施します。

代表的なツボが「至陰」と「三陰交」です。

足の小指の爪外側に位置する「至陰」

内踝(くるぶし)から指4本分上に位置する「三陰交」

ツボとは長年積み重ねた経験により、刺激を与える事で何らかの効果が現れるポイントを言います。

不快な箇所から離れた箇所を刺激することで、特定の部位で血流が増えるなどの変化も起こります。

鍼灸の効果

逆子のお灸は体動を増やし、矯正率(89.9%)を上昇させる効果が期待できます。

血管抵抗指数に変化がみられるため、子宮筋の緊張が和らいで、胎児が動きやすい状態になるのではないかと考えられます。

「逆子のお灸」は34週目まで改善率が高く、34週以降は改善率が低下していくため、早めに鍼灸施術を試されることをおすすめします。

また、セルフケアに千年灸(せんねんきゅう)も効果的です。

千年灸によるセルフケア

ツボにのせて火を点けるだけのお灸「千年灸」は薬局やインターネットで購入できます。

間接的に身体を温めるお灸(棒灸)にも逆子の改善はみられ、棒灸を行ったグループでは改善率75.4%、何もしなかったグループでは改善率47.7%、と「改善率に差がある」と報告されています。

そのため、棒灸と同様に間接的に温める「千年灸」にも効果を期待できます。

最近は無香料やアロマの香りがするタイプの千年灸も市販されていますので、是非お好みのお灸を探してみてください。

セルフケア方法

まずは1週間、逆子のツボ(左右の至陰と三陰交)へ1日2回、各ツボに3壮ずつ千年灸をお試しください。

逆子が判明した際には

「逆子のお灸」は早期に取り組まれるほど改善率が高い傾向があります

そのため、逆子状態と分かった際には早めの鍼灸施術をおすすめします。

また、ご自宅での「千年灸」も逆子改善に効果的です。

千年灸は薬局やインターネットで購入可能なため、逆子治療のセルフケアとして是非ご検討ください。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。

鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。

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