不妊症への対処と鍼灸治療の効果

晩婚化や女性のキャリア形成思考など、さまざま要因で増加傾向の「不妊症」

不妊症の原因は男女双方にあり、婦人科で原因を特定することが大切になります。

不妊治療に鍼灸を併用することで骨盤腔内の血液循環を整い、受精卵の着床率向上に期待が持てますが、卵子の質改善や持病(器質的疾患)が原因の場合にはあまり効果が期待出来ません。

今回はそんな不妊症について綴らせていただきました。

そもそも不妊とは

WHO(世界保健機関)では「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間(1年)妊娠しないもの」と定義しています。

日本では、一年以内80%、二年以内90%、三年以内93%の確率で妊娠にいたると考えられており、不妊の可能性が考えられる場合には「タイミング法」など、からだへの負担が少ない方法から不妊治療に取り組んでいきます。

不妊症の原因

不妊症は男性と女性の双方に原因があり、不妊症の1/3は原因不明といわれています。

男性不妊の原因

造精機能障害、精路通過障害、性機能障害が主な原因になります。

造精機能障害

精子の数が少ない(無い)、精子の運動性が悪い状態のことです。

男性不妊症の中で最も多く、病院で精液分析をおこなうことで判明します。

最近流行りの「サウナ入浴」も陰嚢温度が上昇して、精子数や運動能の低下に繋がります。
サウナ浴の中止から6ヶ月で精子数や運動能が戻るため、妊活期間中のサウナ浴は注意が必要です。

精路通過障害

精子がペニス先端まで通るための道中で詰まる、射精をしても精子が排出できていない状態です。

尿道炎や外傷によって起こるケースもあります。

性機能障害

精神的、肉体的に性機能が後退した状態を広く指します。

加齢による性行為への関心や意欲の低下、前立腺炎症などの副性器障害による精子への影響などがあります。

女性不妊の原因

子宮、内分泌や排卵、卵管系の問題が主な原因になります。

子宮の問題

子宮筋腫や子宮内膜症が不妊症に関係します。

女性不妊症の原因で最も多く、子宮筋腫は受精卵の着床を妨げるだけでなく、精子が卵子に到達するのを妨げてしまうケースもあります。

内分泌・排卵系の問題

「多嚢胞性卵巣症候群」や「甲状腺の病気」により、女性ホルモンが乱れることで起こります。

女性ホルモンは精神的ストレスや短期間ダイエットなど、環境変化でもホルモンバランスが乱れて、月経不順になり不妊症へと繋がるため注意が必要です。

卵管系の問題

精子が卵子と出会い、子宮に戻るための道「卵管」が詰まってしまうケースです。

「卵管留水腫」や「卵管間質部の閉塞」などが原因となります。

治療方法

原因に応じてタイミング療法、体外受精、人工授精といった妊娠を補助する治療が行われます。

また、妊娠を妨げるような原因を取り除き、妊孕率を上げる(妊娠しやすい状態にする)ために生活習慣の改善や鍼灸も効果的です。

タイミング療法

基礎体温や血中・尿中ホルモン数値などを参考に、排卵日を予測して、最も妊娠しやすいタイミングに性交渉を行う方法です。

からだへの負担が少なく、不妊治療の開始時に検討されます。

体外受精

卵巣から取り出した卵子を培養液中で精子と受精させ、受精卵を子宮に戻して着床させる方法です。

精子の数や運動率が低い場合には、精子を極細ピペットで卵子の中へ直接注入する顕微授精法がおこなわれるケースもあります。

人工授精

精液中から運動能の良好な精子を選び、不要な赤血球や白血球を取り除いて子宮内に注入する方法です。

妊孕率を上げる鍼灸

鍼灸には「血流の改善」や「ストレスの緩和」作用があります

血流改善は男女共に効果があり、からだを整えることで妊孕率の向上が期待できます。

男性の骨盤内血流促進には、EDの回復や精子の量・運動率改善につながります。
実際に、男性患者の骨盤周囲(仙骨)に鍼を施してパルス通電したところ、精子運動能の向上がみられとの報告もされています。

女性の骨盤内血流を促進することは子宮内膜の発育を促します。
受精卵は子宮内で血流量の多い部分に着床する特徴があるため、受精卵の着床しやすい環境を整えることに繋がります。

鍼灸で改善が期待できないケース

鍼灸は「からだを妊娠しやすい状態へ」お手伝いすることは可能ですが、卵子の問題、子宮奇形などの器質的疾患が原因の場合には、あまり効果を期待できません。

子宮筋腫の場合には手術や超音波治療、別の原因に関してもホルモン療法を優先しておこなうなど、病院での治療が最優先のケースが多くあります。

そのため、不妊症の原因を特定されて、からだの状態を整えることが効果的な場合に、鍼灸併用のご検討をおすすめ致します。

不妊治療をお考えの場合には

不妊症の原因を特定して取り組まれることが大切になります。

卵子の問題、子宮奇形などが原因の場合には病院での治療を優先に行い、からだの状態を整えることで改善がみられる原因の場合には鍼灸が効果的です。

からだを整えることで少しでも妊孕率を向上させたいとお考えの方は、鍼灸もご検討ください

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
「白金のかかりつけ鍼灸院」を目指し、日々鍼灸施術に励んでおります。

鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。

当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。

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