不妊症への鍼灸治療
不妊症の治療を専門とする鍼灸院もあり、病院での治療と併用されえている方も増えております。
鍼灸治療は子宮内膜の改善などに効果を期待することができます。
しかし、卵子の質改善や器質的疾患の治療にはあまり効果を期待出来ないため、すべての方に有効であるといえません。
今回はそんな不妊症への鍼灸治療について綴らせていただきました。
そもそも不妊とは
WHO(世界保健機関)の定義では「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間(1年)妊娠しないもの」とされております。
日本では、
- 6か月以内に65%
- 1年で80%
- 2年で90%
- 3年で93%
の確率で妊娠にいたると考えられております。
不妊症の原因
妊娠適齢期において、
- 男性側に問題があるケースが約24%
- 女性側に問題があるケースが41%
- 両性に問題があるケースが24%
- 原因不明な場合が11%
があると考えられています。
男性不妊
造精機能障害
精子の数が少ない、または無い、あるは精子の運動性が悪いといった問題です。
男性不妊の原因として最も多く、病院で精液分析をおこなうことで判明します。
精路通過障害
作られた精子がペニス先端まで通るための道中で詰まっていたり、射精はしていても精子を排出できていない状態です。
性機能障害
前立腺炎症など副性器の障害によって精子が影響を受ける場合や、射精(性交)ができないなどの問題です。
その他
加齢に伴う生殖能力の低下(30歳代後半から男性の生殖能力は徐々に低下していきます)など。
女性不妊
内分泌・排卵系の問題
甲状腺など女性ホルモンを出す仕組みに影響を与える病気やホルモンバランス異常(多嚢胞性卵巣症候群)が挙げられます。
その他、環境の変化等に伴う精神的ストレスや短期間な大幅ダイエットも月経不順をきたし不妊症の原因となります。
卵管系の問題
卵管とは精子が卵子と出会い、受精した卵子が再び子宮に戻るための道です。
卵管留水腫や卵管間質部の閉塞などにより卵管が詰まってしまう場合があります。
子宮の問題
女性不妊症の原因で最も多いのが子宮で、子宮筋腫や子宮内膜症も問題に含まれます。
子宮筋腫は着床を妨げるだけでなく、精子が卵子へ到達するのを妨げて妊娠しにくくなることもあります。
その他
原因不明:原因不明は不妊症の1/3をしめるといわれています。
鍼灸の治療効果
鍼灸治療を行うことにより下記のような改善を期待する事が出来ます。
血行改善
女性の骨盤内血流を促進する事で子宮内膜の発育を促し、受精卵を着床しやすい環境を整えます。
受精卵は子宮内で血流量の多い部分に着床する特徴もあり、骨盤内の環境を整えることはとても大切です。
男性の場合にはEDの回復や精子の量・運動率改善に効果を発揮します。
股関節やお腹周りを整えることで、精子の量や運動率の改善に繋がります。
また、仙骨に鍼を施した後に電気をかけるなどの結果、精子運動能の向上が見られたなどの結果も出ております。
ストレス緩和
卵巣は脳(視床下部)からホルモン調節されてています。
そのため、治療長期化などによりホルモンバランスは乱れてしまいます。
そのような方には、
- 手足が冷えている(浮腫んでいる)
- よく眠れない
- 普段より肩凝りが激しい
などの諸症状も多く見受けられます。
このような症状を含め、お身体全体の調子を改善する事でストレスの減少や精神的な安定へ繋がります。
医薬品等の副作用軽減
服用されている医薬品によっては、胃腸の消化吸収力を落としてしまったり、お身体を冷えやすくしてしまう物がございます。
現在の症状に有効な薬品で必要だから止めるわけには・・・
といった場合にも、鍼灸治療により食欲の回復や冷えを解消して辛い副作用を軽減する効果を期待できます。
鍼灸で効果を期待できないもの
卵子自体の問題や器質的疾患に対しては、あまり効果を期待できません。
また、鍼灸はお身体に備わっている自然治癒力を最大限に引き出すお手伝いができる治療法でのため、良性腫瘍といわれるものの改善にも効果を大きく期待できません。
子宮筋腫の場合には手術や超音波治療、別の原因に関してもホルモン療法を優先しておこなうなど、病院での治療が最優先のケースが多くあります。
そのため、まずは
- 経膣超音波検査
- 子宮卵管造影検査
- ホルモンの検査
- 性交後試験(Huhnerテスト、またはPCT)
- 精液検査
などお身体の状態や原因に適した検査を受けられることが重要になります。
そして、検査結果を踏まえて鍼灸治療を併用されることをお勧めいたします。
最後に
鍼灸は子宮内膜の環境やホルモンバランスの改善に期待することができます。
しかし、卵子自体の問題や器質的疾患に対しては、あまり効果を期待できません。
そのため不妊治療をお考えの場合には、原因をしっかりと特定し、
- 不妊期間の確認
- 「お身体状態を整えての妊活」または「病院の受診」
- 病院の結果を踏まえて鍼灸を併用される
という順序をご検討いただけますと幸いです。
この記事の著者

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『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。
鍼灸治療は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当治療室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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