便秘症への対処と鍼灸治療の効果
便秘症は2017年にガイドラインが設けられ、症状や原因により細かく分類されました。
大腸癌などの病気や薬の副作用によるものを除くと、主な原因は生活習慣やストレスによる自律神経の乱れにあるため、生活習慣の見直しや鍼灸で自律神経を整えることが便秘解消につながります。
今回はそんな便秘症について綴らせていただきました。
便秘とは
便秘は診断名や症状名ではなく、状態を表す名称です。
「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。
毎日排便されている方でも、排便後のスッキリ感が無い場合には便秘症と考えられ、排便頻度や便の状態(硬さ)によって便秘に該当します。
そもそも便の作られる過程とは?
口から取り入れた食物は、胃や小腸で必要な栄養素や水分を消化吸収されて大腸へと運ばれます。
大腸は主に水とミネラル(電解質)を吸収する働きをしており、大腸でゆっくりと水分が吸収されます。
そして、吸収されなかった物や腸璧から剥がれ落ちた粘膜が便となります。
便として固形化されて肛門へと運ばれるのですが、便の含む水分量によってバナナのようにスルッと出る便や兎糞のような硬い便など、硬さや形状が変わります。
大腸に便が長時間留まってしまうと水分吸収が進むので、便は硬く小さくなります。
便秘の種類
便秘は器質性便秘と機能性便秘の大きく2タイプ分かれます。
一般的に慢性便秘といわれるものは機能性便秘に含まれます。
また、頻繁に便秘や下痢を繰り返す場合には「過敏性腸症候群」の可能性も考えられます。
『過敏性腸症候群に関する詳細はこちら』
器質性便秘
大腸自体に何かしらの原因があるケースです。
大腸癌や腸閉塞など疾患、生まれつき大腸が長い体質の「腸過長症」が原因で起こります。
器質性便秘の場合には病院での治療が必要になります。
機能性便秘
一般的な便秘はこちらに該当し、鍼灸が適応の便秘も機能性便秘です。
機能性便秘は「排便回数減少型」と「排便困難型」の2つがあり、両方同時になる場合もあります。
排便回数減少型
食物繊維の不足や薬の副作用により大腸の通過に時間を要してしまうため排便回数が減少します。
排便困難型
硬便(便が硬い)や腹圧の低下により排出に時間を要してしまいます。
便秘の原因
病気や薬の副作用を除くと、食物繊維や水分不足、運動不足、自律神経の乱れが原因になります。
大腸癌などの重篤な疾患や薬の副作用の可能性を確認してから、生活習慣の見直しをご検討ください。
食物繊維や水分不足
食物繊維や水分不足によりコロコロとした硬い便になり排便困難へと繋がります。
運動不足
筋力の低下は腹圧低下に繋がりスッキリとした排便がおこなえない原因へ繋がります。
自律神経の乱れ
内臓は自律神経にコントロールされているので、肛門へと便を運ぶ運動(蠕動運動)が低下します。
また、便意を感じづらくなる事で排便回数の低下につながります。
治療・予防方法
腹痛などの症状が酷い場合には酸化マグネシウム薬や坐薬(浣腸)によって排便を促せますが一時的な解消方法のため、生活習慣の見直しも大切になります。
マグネシウムの作用
マグネシウムは胃十二指腸に届くと胆嚢を収縮させる働きがあります。
胆嚢が収縮すると胆汁という消化液が分泌され、消化管の蠕動運動が活発化するため便通が改善します。
便秘による激しい腹痛の場合にはおすすめですが、一時的な改善であることに注意が必要です。
生活習慣の見直しが大切
水分や食物繊維をしっかり摂ることが重要です。
水分や食物繊維は便の水分量を確保し、腸内を移動しやすい状態にします。
ウォーキング(全身運動)や腹筋運動も腹圧を高めてスムーズな排便につながります。
また、ストレスや睡眠不足など自律神経の乱れを感じる場合には鍼灸もおすすめです。
鍼灸の効果
鍼灸は自律神経を整えることで蠕動運動の働きを円滑にする効果を期待できます。
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」という2つの神経が血管や内臓を自動で調節する神経です。
からだが休息状態(副交感神経優位)になると内臓の働きは活発になるのですが、ストレス過多や睡眠不足が続いて自律神経が乱れると、からだを休息状態にすることができなくなります。
その結果、排便周期の悪化や便意を感じづらくなることで、腹痛や食欲減退といった症状が現れます。
鍼灸には自律神経の働きを整えて、リラックス時に分泌されるβエンドルフィンを促す作用があるため、便通の改善やストレス緩和が期待できます。
便通が停滞している場合には
激しい腹痛や長期間続く便秘の場合には消化器科の受診をご検討ください。
便秘症の多くは水分や食物繊維の不足を補い、腹圧を上げるトレーニングにより改善がみられます。
また、鍼灸を併用しすることで自律神経が整い、排便が円滑になるのでおすすめです。
この記事の著者

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「白金のかかりつけ鍼灸師」を目指し、日々鍼灸に励んでおります。
鍼灸は多くの症状改善に効果が期待できる一方で、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先する場合もあります。
当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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鍼灸師のコメント
蠕動運動と自律神経の関係
腸管では輪状筋と縦走筋、2つの筋肉がリズミカルに収縮する事で便を移動させています。
この腸管の動きを蠕動運動といい、蠕動運動をコントロールするのが自律神経になります。
自律神経が乱れると蠕動運動の弱まるため、排便回数の減少につながります。
『自律神経に関する詳細はこちら』