便秘症への対処と鍼灸治療の効果
便秘症は60代以降に男性割合も増えることで性差は加齢に伴い無くなり、高齢化社会の日本では便秘人口は今後更に増加すると考えられます。
便秘は2017年にガイドラインが設けられ、症状や原因により細かく分類されるようになりました。
大腸癌などの病気や薬の副作用が原因の便秘などを除くと、便秘の主な原因は生活週間や自律神経の乱れにあるため、生活習慣の見直しや鍼灸治療で自律神経を整えることが便秘解消に効果的です。
今回はそんな便秘について綴らせていただきました。
便秘の定義
便秘症の定義は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」とされております。
毎日排便されている方でも、排便後のスッキリ感が無い場合には便秘症と考えられ、
- 排便回数が減ってしまっている
- 排便時に困難を要する
などお一人お一人の便秘症状や便の状態(硬さ)に合わせた治療が重要となります。
そもそも便の作られる過程とは?
便が作られる過程として、口から取り入れた食物は胃や小腸で身体に必要な栄養や水分を消化・吸収されて大腸へと運ばれます。
大腸は主に水とミネラル(電解質)を吸収する働きをしており、大腸でゆっくりと水分が吸収されます。
そして、吸収されなかった物や腸璧から剥がれ落ちた粘膜が便となります。
便として固形化されて肛門へと運ばれるのですが、便の含む水分量によってバナナのようにスルッと出る便や兎糞のような硬い便など、硬さや形状が変わって来ます。
そのため、大腸内に便が長時間留まってしまうと水分吸収が通常よりも進み、便は硬く小さくなります。
便秘の種類
便秘は大きく2タイプ分かれます。
一般的に慢性便秘といわれるものは機能性便秘に含まれます。
器質性便秘
大腸癌や腸閉塞などの病気が原因とされるものや、生まれつき大腸が長い体質の「腸過長症」が原因で起こります。
機能性便秘(慢性便秘)
便の作られる過程や排便が原因で起こります。
機能性便秘は更に「排便回数減少型」と「排便困難型」に分けられます。
排便回数減少型と排便困難型は同時に呈する場合もあります。
排便回数減少型
食物繊維の不足や薬の副作用で大腸の通過に時間を要してしまうことが原因になります。
排便困難型
硬便や腹圧の低下などが原因になります。
便秘の原因
病気や薬の副作用を除くと、便秘の主な原因には下記3つです。
大腸癌などの重篤な疾患(病気)や薬の副作用を確認し、それぞれの原因に適した対処をおこなってください。
食物繊維や水分不足
食物繊維や水分不足によりコロコロとした硬い便になり排便困難へと繋がります。
運動不足
腹圧低下に繋がり、スッキリとした排出がおこなえない原因へ繋がります。
自律神経の乱れ
睡眠リズムや睡眠時間の乱れは自律神経の乱れに繋がり、腸から肛門へと便を運ぶ運動(蠕動運動)が低下します。
また、便意を感じづらくなってしまいます。
自律神経に関する詳しい記事はこちら
鍼灸治療の効果
自律神経の乱れに鍼灸治療が効果的です。
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」が状況に応じてスイッチングしているかのように伝えられていますが、身体に最も良い状態はどちらも高い状態にある時です。
自律神経が乱れは、大腸運動の亢進や胃十二指腸の運動抑制を引き起こすため、腹痛や食欲減退にも繋がります。
鍼灸は過緊張状態に陥った自律神経の働きを和らげたり、βエンドルフィンの分泌を活性化させるリラクセーション効果を発揮することで症状を和らげられます。
また、腸管内の環境(血流等)を整うことで栄養を消化・吸収しやすいお身体になります。
そのため、生活週間の改善と併せておこなうことで、より高い改善効果を期待することが出来ます。
最後に
便秘症には大腸癌など重篤な疾患が原因となるものや薬の副作用が原因の場合もあるため、疑いのある場合には1度病院を受診された後に改善方法を試されることをお勧めいたします。
慢性的な便秘症の主な原因は自律神経の乱れに伴うことが多いめ、生活習慣の見直しに加えて鍼灸治療を併用し、最良となる改善に繋げていただけますと幸いです。
この記事の著者

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『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。
鍼灸治療は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当治療室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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鍼灸師のコメント
蠕動運動と自律神経の関係
腸管は輪状筋と縦走筋の2つの筋肉で構成され、それらがリズミカルに収縮を繰り返す事で内容物(便)を移動させます。
この腸管の動きを蠕動運動といい、蠕動運動をコントロールするのが自律神経になります。
自律神経を整えるのに鍼灸治療は効果的です。