女性の更年期障害への対処と鍼灸治療の効果

ホルモンの分泌量が低下することで症状が現れる「更年期障害」

更年期障害は男性にもみられ、減少するホルモンの種類が異なります。

過度なホルモンの分泌量低下はホルモン補充療法が主な治療方法になりますが、ホルモン補充療法をする手前の状態やガンの再発リスクがある場合には、乱れた自律神経や血流を整えることができる鍼灸の併用がおすすめです。

今回はそんな更年期障害、特に女性の更年期障害について綴らせていただきました。

(男性の更年期障害についてはこちらをご参照ください)

女性の更年期障害

閉経期に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減少して自律神経に影響を及ぼすことで、ホットフラッシュや手足の冷え、気分の落ち込みなど心身に症状が現れます。

閉経時期を挟んだ前後10年間が更年期といわれ、閉経前後の2年間がピークとなり閉経後には症状が安定してきます。

女性ホルモンの1つエストロゲン

エストロゲンには、閉経後にメインのE1(エストロン)、閉経前にメインのE2(エストラジオール)、E1とE2から変換される作用の弱いE3(エストリオール)の3種類があり、コレステロールから作られるため肥満予防にも貢献しています。 

エストロゲンは「心身を安定させるセロトニン」や「意欲に関わるドーパミン」、「やる気を促すノルアドレナリン」という神経伝達物質と相関性があり、エストロゲンが高い状態の時にこれらも高まる性質があります。

そのため、エストロゲンが減少するとこれらの神経伝達物質の乱れにもつながります。

そもそもホルモンとは

血液中に分泌される情報伝達物質です。

身体の内側と外側に変化が起こっても身体の状態を一定に保つ働きをしています。

体内には100種類以上ものホルモンが存在し、常に身体を外部環境へ適応させております。

閉経について

月経が12ヶ月間来ない状態をいいます。(途中で月経が来た場合には再度そこから12ヶ月間) 

また、閉経は婦人科でホルモン数値を計測することでも判断可能です。

エストロゲンと性腺刺激ホルモとの数値を測定し、E2:10pg/ml以下、FSH:40mu/ml以上の場合には閉経と診断されます。

症状

代表的な症状はエストロゲン減少に伴うイライラや不安感、血管運動神経の障害による冷えやのぼせです。

症状は「精神的な症状」と「身体的な症状」のどちらもあり、同時に現れるケースもあります。

精神的な症状

  • 気分の落ち込み、意欲の低下
  • イライラ、不安感、
  • 不眠、食欲不振

などの精神状態や「気持ちの上がり下がりが激しい」といったケースもあります。

身体的な症状

  • ホットフラッシュ(のぼせ)
  • 手足の冷え、全身倦怠感
  • 頭痛、肩こり、腰痛

他には、動機や息切れも多く見受けられます。

なかでも不眠と冷えの症状が強く出る方が多い傾向があります。

自己判断にはご注意ください

更年期障害の症状と似たものに、バセドウ病による異常発汗、橋本病による気分の落ち込み、心臓疾患による動悸、など別の疾患が原因の場合もありますので、症状が強い場合や長期にわたる場合には、自己判断ではなく他疾患の可能性がないか調べられることをおすすめします。

原因

卵巣から分泌されるエストロゲンの低下が主な原因です。 

視床下部(脳)からFSH(性腺刺激ホルモン)が分泌されて血流に乗って移動し、卵巣に作用することでエストロゲンを分泌します。

ホルモンの分泌量を監視することで体内に足りているのかを判断しているのですが、 卵巣から視床下部へのフィードバックが来ないとホルモンが足りていないと判断して更にホルモンを分泌する指示を出すため、ホルモンバランスが乱れしまいます。

そのため、このホルモンを運ぶ道「血管」の状態はとても大切なため、血流や自律神経を整えることは症状を緩和するうえで重要になります。 

ホルモンバランスが乱れる原因は加齢やストレスの他にも、子宮内膜症、卵巣嚢腫といった婦人科系の疾患や悪性腫瘍が原因の場合もあるため、まずは病院で問診や血中ホルモン濃度の測定をされることで他疾患の可能性を排除されることをおすすめいたします。

予防と治療方法

適度な運動と睡眠で血流や自律神経を整え、症状が強い場合には漢方やホルモン補充療法と段階的に対応されることをおすすめします。

ホルモン補充療法(HRT)

エストロゲンを補う治療法です。

ホルモン補充療法はホットフラッシュや発汗といった血管の拡張と放熱に関与する症状に対して特に効果的とされております。

使用するホルモン剤には飲み薬の他、貼り薬や塗り薬や注射などいくつかのタイプがあり、投与方法も様々です。

HRTは約2ヶ月でホットフラッシュなどの改善がみられる効果的な反面、乳がんや子宮がんの病気進行や再発リスクがあるので注意が必要です。 

向精神薬

抗不安薬や催眠鎮静薬といった向精神薬が用いられるケースもあり、最近では副作用が少なくホットフラッシュなどの症状にも有効であるとされる「セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害するお薬(SNRI)」が処方されるケースも多いようです。

漢方薬

桂枝茯苓丸(下腹部痛)、当帰芍薬散(貧血や冷え性)、加味逍遥散(不眠や不安感)が代表的で、女性周期に関連した症状の際に多く処方されます。

漢方薬はお身体がどのような状態か「証」というものを立て、証に基づいて効果がありそうな漢方薬を服用する必要があるため、漢方に詳しい先生の処方をおすすめいたします。

その他

生活習慣の改善や病院でのカウンセリング、自律訓練法などをおこなうケースもあります。

また、各症状の緩和やお身体の状態を整えることに効果的な鍼灸の併用もおすすめです。

鍼灸が効果的な理由

鍼灸は肩こり腰痛や頭痛といった各症状の改善・緩和の他、自律神経や血流を整えることでホルモンバランスを安定させる効果が期待できます。

筋緊張の緩和や皮膚への刺激は視床下部(脳)に影響を与えてホルモンの分泌バランスを整えることにも関与し、血流が整うことでホルモンの巡りも改善します。

また、脳内のβエンドルフィンという神経ペプチド「脳内麻薬物質」の分泌を活性化させてリラクセーション効果を促すため、精神的な症状の緩和にも適しています。

更年期障害は症状の現れ方や強さに個人差があるため、お一人お一人に合わせた施術をおこなえる鍼灸はおすすめです。

更年期障害が疑われる場合には

更年期障害はホルモンバランスの乱れによって起こり、肩こり腰痛などの身体的な症状から、不安感や不眠など精神的な症状までさまざまです。

ホルモンバランスの乱れは加齢やストレスの他、子宮内膜症、卵巣嚢腫といった婦人科系の疾患や悪性腫瘍が原因の場合もあるため、まずは婦人科の受診をご検討ください

ホルモンバランスをはじめ、お身体の状態を整えて各症状の緩和や改善を図る場合には鍼灸の併用もおすすめです。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。

鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。

当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。

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