痔疾(じ)への対処と鍼灸治療の効果
排便痛や出血で気付くことの多い「痔疾(じ)」
痔疾は重症の場合や手術が必要な種類の痔疾もあるため、不快感を感じた際には肛門科の受診をご検討ください。
軽症の場合には市販薬や投薬治療に併せて鍼灸治療をおこなうことで、静脈鬱血や知覚神経・血管運動神経の緊張を緩和し、よりスムーズな回復が期待できます。
今回はそんな痔疾について綴らせていただきました。
痔疾(じ)とは
排便痛や出血、便座に腰掛けた際の違和感など、お尻に関する症状を総称して「痔疾」と呼びます。
- 下痢や便秘からなるケース
- 長時間の立ち姿勢や座り姿勢からなるケース
- 食生活や細菌感染からなるケース
など様々で、痔の種類によって異なります。
痔の種類
痔核(いぼ痔)、裂肛(きれ痔)、痔瘻(じろう)の3種類に分けられます。
痔核(いぼ痔)
肛門の出口付近にある静脈叢(毛細血管が密な部位)が詰まることで鬱血(しこり)が出来てしまった状態を「痔核」と呼びます。
静脈叢の血液は通常であれば門脈(肝臓へと流れる静脈)へ進んでいきますが、便秘や下痢、長時間の同一姿勢、妊娠・出産など血流が悪化すると静脈叢が鬱血してしまいます。
この鬱血して出来た「痔核」は形成される部分(直腸と肛門の堺)により、
- 肛門内側にできる:内痔核
- 肛門外側にできる:外痔核
に分かれ、症状や特徴が多少異なります。
内痔核(内痔静脈瘤)
直腸粘膜側には知覚神経が乏しいため、排便時も出血のみで痛みを感じることがありません。
そのため、出血や症状が進むことで痛みが現れる「脱肛」によって痔を自覚されるケースもあります。
内痔核は症状の程度により4段階に分類され、1.2度であれば投薬やジオン注射での対応、3.4度の重度(嵌頓)の場合には手術の適応になります。
外痔核(外痔静脈瘤)
肛門外側には知覚神経が存在するため外痔核は痛みを感じます。
内痔核に比べて痛みを強く感じる反面、肛門より外側のため出血するケースが少ないのが特徴です。
一般的に2.3週間程度で腫れが引くとされております。
裂肛(切れ痔)
硬くなった便を排泄する際に肛門が切れる(裂ける)ことで生じます。
痛みを避けるために排便回数を抑制すると、便がより強固になり排泄時に傷を広げて慢性化してしまう悪循環になり易いため、排便回数の抑制よりも軟便になるように水分量や食物繊維の摂取が大切になります。
出血はトイレットペーパーに多少付着する程度ですが傷口に感染が加わると「肛門潰瘍」の原因になり、潰瘍の過程によって「痔瘻」を引き起こす原因にもなるため注意が必要です。
痔瘻 (じろう)
肛門管や肛門周囲に瘻孔(トンネル)が出来てしまった状態で、化膿→痛み→排膿を繰り返して長期化、癌化する事もあります。
痔瘻は自然治癒が難しく手術療法を必要とするため、肛門科の受診が必要です。
下痢や飲酒、香辛料の取り過ぎが主な原因として挙げられます。
治療方法
症状が軽度の場合には市販薬や投薬で効果を期待出来ますが、重度の痔核や痔瘻のように手術療法を必要とするケースもあるため、まずは肛門科の受診をご検討ください。
また、市販薬をご利用される際にも内服薬や肛門部に塗布するタイプがあり、「軟膏は塗布使用するため肛門内側に生じる内痔核には使えず、外痔核や切れ痔に使用される」など薬により用法や効能が異なるため、症状に合った物を薬剤師や登録販売者にご相談のうえ使用されることをおすすめします。
セルフケア
病院での治療や市販薬の使用と併せ、長時間の同一姿勢や便秘や下痢にならない生活習慣を心掛けることも大切になります。
また、痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)には鍼灸も効果的です。
鍼灸治療の効果
鍼灸をおこなうことで、
- 血液循環を改善して全身(患部)の血流が整い、静脈叢の鬱血が緩和する
- 自律神経が整うため、便秘や下痢といった痔の原因となる症状が起こりづらくなる
- 知覚神経や血管運動神経の緊張や緩和が調整される
このような効果が期待できるため、軽度の痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)治療の際には鍼灸治療の併用をおすすめいたします。
セルフケアの場合には、鍼灸治療との併用を
痔は長時間の同一姿勢や便秘・下痢が原因で生じるとても身近なものです。
症状の状態によって重度の場合は手術療法が必要になるため、まずは肛門科の受診をおすすめします。
症状が比較的軽症で市販薬やセルフケアで治療される際には、鍼灸治療を併用ことでより早い回復・改善が期待できますため、一度お試しいただければと思います。
この記事の著者
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『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。
鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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