脚気への対処と鍼灸治療の効果
ビタミンB1の欠乏で起こる「脚気」
脚気は倦怠感や末梢神経障害、酷い場合には心不全につながります。
末梢神経障害が起こっている場合には回復に半年以上要することもあり、ビタミンB1の補充に鍼灸を併用することで消化吸収能力の向上と末梢神経障害からの回復に期待ができます。
今回はそんな「脚気」について綴らせていただきました。
脚気とは
ビタミンB1が欠乏して起きる病気です。
ビタミンB1は炭水化物(糖質)の代謝に深く関わるビタミンです。
お米などの炭水化物を摂取すると「炭水化物→グルコース→ピルビン酸→二酸化炭素と水」と分解していく最中に身体で使えるエネルギーを取り出します。
このエネルギーサイクルの補助をしているのがビタミンB1になります。
そのため、ビタミンB1が欠乏すると糖質の代謝が上手く機能しないため、全身倦怠感をはじめとした各症状が現れます。
症状
初期症状として食欲不振、全身倦怠感など糖質(エネルギー)代謝不良の症状が現れます。
過度なビタミンB1欠乏は、神経や脳の障害、心不全にもつながるため注意が必要です。
神経障害
筋肉の萎縮、手足の痛みや痺れ、感覚鈍麻などが起こります。
脳の障害(ウェルニッケ・コルサコフ症候群)
脳幹部の障害により、眼振(眼球運動障害)や運動失調(随意強調運動障害)が起こります。
心不全
「末梢組織(身体の末端)の酸素需要増加」や「心筋のエネルギー代謝障害」により心臓の鼓動が速くなります。
長期間心臓が同じ速さで働くことはできないため最終的に心不全になり、肺うっ血や血圧低下によるショック症状に陥ってしまいます。
脚気の原因
ビタミンB1の不足です。
ビタミンB1は体内で合成することが難しいため、食べ物から摂取して補う必要があります。
過去には「江戸患い」とも呼ばれ、江戸時代に白米食の方に体調悪化が多くみられたことが由来で、玄米胚芽部に多く含まれるビタミンB1が精米時に取り除かれることが原因でしたが、現在では主菜や副菜で自然に補えるようになったことで発症数も激減しています。
しかし、過剰な飲酒や食事の偏り、胃切除や透析中の方は発症リスクがあるため注意が必要です。
アルコールの過剰摂取
アルコール分解に多量のビタミンB1が使用されるため、大量の飲酒によりビタミンB1が不足してしまいます。
食事の偏り
ジャンクフードや加工食品の偏食により、必要量のビタミンB1が不足してしまいます。
胃切除
胃の切除により、ビタミンB1の分解や吸収不全が起こります。
透析
透析はビタミン類を喪失しやすく、透析前後で血中のビタミンB1濃度は1/2になります。
治療方法
ビタミンB1の補給が中心です。
ビタミン剤の経口投与、点滴や注射で早急に補給するケースもあります。
ビタミンB1を補給することで概ねの症状に改善しますが、末梢神経障害など重度のビタミン欠乏の場合には回復に時間がかかる場合もあります。
アルコール依存症が原因で脚気になった方はアルコール依存症の治療と並行します。
脚気は食生活の乱れや体調不良(消化吸収障害)でも起こるため、生活習慣や鍼灸でお身体の状態を整えておくことも大切です。
鍼灸の効果
鍼灸は消化吸収能力の向上と末梢神経障害の回復が期待できます。
鍼灸はお身体本来の力を引き出す方法のため、体内でビタミンB1を作る・増やすといったことはできませんが、食事からきちんと必要な栄養素を吸収できる身体に整えておくことができます。
そのため、胃腸の消化吸収力が落ちて脚気になってしまう方におすすめです。
また、ビタミン剤で脚気は治ったものの、手先の痺れや感覚鈍麻のような末梢神経障害の回復が芳しくない方は鍼灸をご検討ください。
脚気が疑われる場合には
食欲不振や全身倦怠感を生じる「脚気」はビタミンB1不足で起こります。
脚気の場合にはビタミンB1の補給が大切になりますので、まずは内科の受診をご検討ください。
体調不良(消化吸収障害)や重度のビタミンB1欠乏により指先の痺れなどの末梢神経障害が現れている方は鍼灸の併用をおすすめします。
この記事の著者

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「白金のかかりつけ鍼灸師」を目指し、日々鍼灸に励んでおります。
鍼灸は多くの症状改善に効果が期待できる一方で、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先する場合もあります。
当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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