前立腺肥大症への対処と鍼灸治療の効果

男性特有の疾患で50代以降に増加傾向がみられる「前立腺肥大症」

前立腺肥大症は症状や前立腺の大きさによって治療方法が異なります。

鍼灸では初期に現れる排尿困難などの諸症状に効果を期待することができますが、前立腺自体の縮小効果などは大きく期待できません。

今回はそんな前立腺肥大症について綴らせていただきました。

前立腺肥大症とは

尿道を囲む前立腺が加齢に伴い肥大することで、尿道が圧迫されて排尿がスムーズにおこなえない疾患です。

前立腺肥大症は加齢に伴い増加する傾向があり、50代以降の2割以上が前立腺肥大症であるともいわれております。

また、前立腺に関する疾患の中で最も多い疾患になります。

そもそも前立腺とは

前立腺は直腸と恥骨の間に存在し、膀胱出口で尿道を取り囲む男性のみに存在する生殖器の1つで、精子の栄養や保護をする前立腺液を作る働きを担っています。

平均的な前立腺の大きさは「クルミぐらいの大きさ」と例えられますが、肥大する事で鶏卵大以上にもなります。

そのため肥大に伴い、尿道が圧迫されて排尿に関わる症状が現れます。

症状

  • トイレの回数が増えた
  • 排尿時間が長くなった
  • 尿の勢いが弱くなった
  • 排尿時に力むようになった
  • 尿が少量しか出なくなった
  • 尿切れが悪くなった

などの排尿に関する症状が中心です。

進行すると症状が強く現れ、前立腺が尿道を完全に狭めてしまうと排尿ができない「尿閉」になってしまいます。

原因

詳細な原因は不明です。

明らかな危険因子は加齢で、男性ホルモンの働きに変化が起きるとの考えが有力です。

その他、高血糖や脂質異常症といった生活習慣病との関係性も指摘されており、食生活をはじめとした生活習慣の改善も効果的ではないかと検討されております。

しかし一方で、アルコールや喫煙との関係性が明確にされておりません。

治療方法

前立腺の諸症状は肥大症の他に癌などの可能性も考えられるため、泌尿器科で専門的な診察を受けることが大切になります。

泌尿器科では超音波検査、血液検査、直腸診、尿流量測定、X線検査などをおこなうことで、他の疾患の可能性や前立腺の肥大具合を総合的に判断します。

検査の結果、比較的軽症の場合には薬物療法、症状が進行している場合には外科的療法が行われます。

薬物療法

前立腺や尿道の筋緊張を緩和する目的に「α1遮断薬」を使用して排尿しやすい状態を目指します。

また、男性ホルモンの作用を抑えて肥大した前立腺を徐々に小さくする事を目的に「5α還元酵素阻害薬」の服用や、頻尿や残尿感を和らげる植物製剤や漢方薬を併用するケースもあります。

外科的治療

薬物療法後で改善がみられず、尿閉(尿が出ない状態)や血尿、腎機能の悪化が見受けられる場合には内視鏡やレーザーを用いた手術が検討されます。

これまで電気メスで内側から縮小させる方法が主流でしたが、現在は尿管内からレーザー照射するHOLEP(ホーレップ)という治療法がおこなわれるようになり、周囲の神経へのダメージを軽減など身体への負担も軽減されてきています。

予防方法

適度な運動やバランスの良い食事といった生活習慣の改善が中心になります。

同時に、身体を冷やさない、長時間同じ姿勢を取らないことも大切になります。

お身体(特に腰腹部)の冷えは膀胱の筋肉を緊張させて尿を溜めづらくしてしまいます。

寒い時や緊張した時にトイレが近くなってしまうのと同様で、冷えや緊張による交感神経の興奮は膀胱の筋肉を緊張させてしまうため、膀胱が膨らみづらく尿意を感じやすくなります。

そのため、お尻を冷やさない、飲み物は温かいものにすることも効果的です。

また、お身体の緊張緩和や自律神経を整えることに鍼灸治療もおすすめです。

鍼灸に効果が期待できる症状

鍼灸は自律神経や血流が整える作用があるため、排尿困難や夜間頻尿など様々な症状の改善に期待することが出来ます。

実際に、前立腺肥大症の初期症状の方に鍼灸治療をおこなった結果、排尿困難などの症状緩和がみられたとの報告も挙げられています。

しかし一方で、重度の症状や前立腺自体を縮小させることには、あまり期待出来ません。

前立腺肥大症は前立腺癌のような悪性のものではなく、良性腫瘍の分類になります。

鍼灸は自然治癒力を最大化させる治療法になるため、前立腺肥大症をはじめとした良性腫瘍の縮小(改善)に大きく効果を期待することが出来ません。

そのため、初期症状への対処や薬物療法の併用としてご検討ください。

頻尿などの排尿症状を感じたら

前立腺の肥大が頻尿や排尿時間の延長に関わっているかもしれません。

前立腺は尿道を取り囲むように位置しているため、肥大が進行して尿道を完全に狭めてしまうと尿閉になってしまいます。

少しだけ気になるといった場合には、「国際前立腺症状スコア(I-PSS)」という前立腺の簡易チェックができる項目用紙がインターネットで閲覧可能ですので試されてみてください。

前立腺肥大症の疑いがある場合には、前立腺癌などの他の疾患の可能性を排除することもとても大切なため、まずは泌尿器科の受診をご検討ください。

また、病院での薬物療法に鍼灸を併用することで、排尿困難などの症状緩和に期待を持つことが出来るためおすすめです。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。

鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。

当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。

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