上腕二頭筋長頭腱炎への対処と鍼灸治療の効果

腕を上げる、肘を曲げるといった力瘤（こぶ）の筋肉を使用した際に肩の前側に痛みが生じる場合には、「上腕二頭筋長頭腱炎」の可能性が考えられます。

鍼灸では「上腕二頭筋長頭腱炎」のメイン筋肉である上腕二頭筋の緊張緩和や消炎、鎮痛の目的で鍼をおこないます。

今回はそんな労働やスポーツが原因で生じることの多い、上腕二頭筋長頭腱炎について綴らせていただきました。

上腕二頭筋長頭腱炎とは

肩の腱鞘炎です。
上腕二頭筋と呼ばれる力瘤（こぶ）の筋肉は、2又の腱に移り変わって骨に付着するのですが、骨に付着する近辺で上腕骨（腕の骨）の溝と横上腕靭帯（肩の別の靭帯）からなるトンネルを通ります。
重労働や投球動作のようなオーバーハンドスポーツを繰り返しおこなうことで、腱とトンネルとの間で摩擦が生じて炎症となってしまった状態を「上腕二頭筋長頭腱炎」と呼びます。

肩（前面）で炎症が起こっているため、腕を上げたり肘を曲げた時に痛みを生じてしまいます。
自然回復も期待できますが慢性化や腱断裂に繋がることもあり注意が必要です。

検査（診断）方法

上腕二頭筋にわざと軽い負荷を加えることで反応をみる（スピードテストやヤーガソンテスト）方法を中心に、MRI検査や超音波検査をおこなうケースもあります。

スピードテスト

掌を上に向け、肘を伸ばした状態から力瘤を作る動きをする際に、第三者が下向きに抵抗をかけて肩前面に痛みが生じるかを調べる方法です。

ヤーガソンテスト

肘を９０度曲げ、手を内向きに捻った状態（パチンコ台に座った時のような姿勢）で第三者に握手してもらい抵抗を掛けてもらいながら手を外向きに返す動きをして肩前面に痛みが生じるかを調べる方法です。

上腕二頭筋長頭腱炎の治療法

患部の安静や消炎鎮痛剤の投与といった保存療法が中心になります。
症状の程度や受診場所によって超音波などの物理療法や徒手療法を行うケースもあり、徒手療法では上腕二頭筋をはじめとする肩周りの筋肉を緩めて患部にかかるストレスを減らすと同時に、運動療法で再発予防のトレーニングをおこないます。

しかし半年以上症状が改善しない（難治例）場合には、

• 上腕二頭筋長頭腱の走行を変える手術
• 腕の骨の溝（結節間溝）と横靱帯を切開する手術

などをおこなう場合もあります。

ケアや予防法

患部が熱をもっている時には、冷却が最も重要になります。
炎症を起こして肩周囲（特に前面）が熱くなっておりますので、このような時には

• 強度な運動
• 無理なストレッチ

など筋肉や腱に負荷がかかることはお控えください。
まずは2.3日冷やして安静にすることで患部に熱が篭もらなくなったのを確認した後に、
筋肉（患部）のケアや日常生活の改善に移るられることをおすすめいたします。
また、筋肉や患部のケアに鍼灸がとてもおすすめです。

鍼灸がおすすめな理由

鍼灸では

• 筋緊張の緩和
• 消炎鎮静作用

を期待でき、早期回復の一助になります。

筋緊張の緩和

上腕二頭筋をはじめとした肩周囲の筋肉を緩めることで、上腕二頭筋腱のストレスを軽減し摩擦少なく（減圧）する効果を期待できます。

消炎・鎮静作用

患部の痛みや炎症を抑える箇所（ツボ）や肩の負担が軽減するようにお身体のバランスを整えることで、回復力の向上が期待できます。

上腕二頭筋長頭腱炎を悪化させないためにも

上腕二頭筋長頭腱炎の多くの原因が使いすぎによるものです。
そのため、

• 生活動作やスポーツでのお身体の使い方の意識
• 運動前後の適度なストレッチ
• オーバーワークしてしまった際にはお身体のメンテナンス

といったことが大切になります。
また、鍼灸は筋緊張の緩和や消炎鎮痛作用があるため上腕二頭筋長頭腱炎の治療にも予防にも効果的です。
肩（前面）に痛みや違和感を感じる際には是非ご検討ください。