脱毛症への対処と鍼灸治療の効果
毛の生え替わりが早い、毛の抜ける量が多い、そんな状態を指す「脱毛症」
脱毛症は、
- 毛の生え替わり周期が乱れることで抜けるケース(AGAなど)
- 毛が何かしらの理由で破壊されるケース(円形脱毛症など)
の大きく2つに分けられます。
鍼灸治療では、「AGA」にはあまり効果を期待できませんが、原因に成り得る誘因の1つにストレスや免疫異常によって生じる「円形脱毛症」のようなケースには効果をでき、改善した報告も多く挙げられております。
しかし、円形脱毛症の原因や鍼灸の円形脱毛症への作用機序が完全に明らかになっている訳ではないため、盲信できない現状です。
今回はそんな脱毛症について綴らせていただきました。
AGA
AGAとは、Androgenetic(男性ホルモン)Alopecia(脱毛症)の略です。
20代以降の男性特有な脱毛症で、抜け毛や薄毛が徐々に目立っていく特徴があります。
AGAは治療せずに放置すると進行していくため、早めの治療が大切になります。
AGAの原因
遺伝や男性ホルモン分泌が主な原因とされています。
DHT(ジヒドロテストステロン)と呼ばれる男性ホルモンが過剰に分泌されることで、「毛が生える→育つ→抜ける」といった毛周期(ヘアサイクル)を早めてしまい、毛髪が十分に育つ前に抜けてしまいます。
毛周期の回数には上限があるため、上限回数に達すると毛が生えてこなくなります。
>AGAの一般的な治療法
下記3つが代表的です。
フィナステリド
男性ホルモン(DHT)の産生を抑制してAGAの進行を止める作用があります。
メソセラピー
毛髪の成長因子を頭皮に直接注入することで、発毛を促す作用があります。
ミノキシジル
頭皮の血流を改善、毛根(毛乳頭)での成長を助ける作用があります。
AGAへの鍼灸治療の効果
鍼灸治療はAGAの原因であるDHT(ジヒドロテストステロン)の抑制効果は無いため、直接AGAを治療するといったことは期待できません。
しかし、休止期脱毛症候群(男性型脱毛症)では頭皮の血行不良と身体的過緊張に深い関係性がみられたとの報告も挙げられており、頭皮環境を含めた身体全体を整えて、薬がしっかり効く土台作りを目的とされる際にはおすすめできます。
円形脱毛症
円形脱毛症は抜け方により、
- 頭部に1つだけ円状の脱毛がある「単発型」
- 複数箇所抜ける「多発型」
- 頭部全体が抜けてしまう「全頭型」
- 全身に脱毛が及ぶ「汎発型」
に大きく分けられます。
症状は生涯で一度だけのこともあれば再発することもあり、なかでも全頭型と汎発型は治りにくい傾向にあります。
円形脱毛症の原因
自己免疫疾患説が有力で、ウイルスや細菌から身体を守る「免疫(リンパ球)」が毛の根本(毛根)を異物と誤認識して攻撃することで毛が抜けてしまいます。
しかし、何故その様な誤認識を生じてしまうのかは未だ明らかになっておらず、
免疫の異常を発生させる要因として、ストレスやアトピー素因などが挙げられています。
円形脱毛症の一般的な治療法
ステロイド局所注射、局所免疫療法、ステロイド外用療法が代表的です。
ステロイド局所注射
ステロイドを患部に注射して免疫機能を抑制することで症状の改善を目指す治療法です。
単発型や多発型の患者さんにおこなわれます。
局所免疫療法
脱毛部位に炎症を引き起こす物質を塗布し、アレルギー反応(かぶれ)をわざと起こすことで免疫バランスを変化させて円形脱毛症の改善を目指す治療法です。
広範囲の脱毛に効果が現れることも期待できますが、アトピー性皮膚炎を合併している方は皮膚炎が悪化してしまうこともあり注意が必要です。
ステロイド外用療法
ステロイドを患部に塗り、皮膚の炎症や免疫機能を抑える治療法です。
軽症~中等症の患者さんにおこなわれます。
円形脱毛症への鍼灸治療の効果
鍼灸では脱毛頭皮部に鍼やお灸を用いることで、局所免疫療法に似た考えで局所治療をおこないます。
鍼灸治療をおこなった結果、円形脱毛症が改善した例(特に単発型)は多く報告されており、成長期毛性脱毛症候群(円形脱毛症)では自律神経の変調を想起させる症状が頭皮と身体の双方で高確率に認められたとの報告も挙げられています。
そのため、患部と全身を整えることの出来る鍼灸治療は効果を期待できます。
脱毛症に鍼灸治療をお考えの際には
鍼灸はAGAの原因であるDHT(ジヒドロテストステロン)の抑制効果はありませんが、お身体全体を整えて薬のしっかりと効く土台作りのお手伝いは可能です。
AGAは進行性の脱毛症のため、疑われる際には早めに皮膚科の受診をご検討ください。
円形脱毛症の場合には全身状態を整えることに加えて、脱毛頭皮部に鍼やお灸を用いて局所免疫療法に似た局所治療もおこうことで改善例が多く報告されております。
しかし、円形脱毛症の原因や鍼灸の円形脱毛症への作用機序が完全に明らかになっている訳ではないため、盲信できない現状です。
そのため、皮膚科での治療に併用した鍼灸治療をおすすめいたします。
この記事の著者
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『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。
鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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