パーキンソン病(PD)への対処と鍼灸治療の効果
運動機能が低下することで日常生活に影響を与える難病「パーキンソン病」
パーキンソン病は指定難病の1つで、早期発見と治療が大切になり、適切なサポートにより生活の質が向上します。
また、鍼灸を併用することで局所血流改善や筋緊張緩和により進行を抑制することが期待できるためおすすめです。
今回はそんなパーキンソン病について綴らせていただきました。
パーキンソン病とは
パーキンソン病(PD:Parkinson disease)は神経変性により運動機能障害が起こる「指定難病(6)」になります。
脳内(黒質)ドパミン神経細胞や青斑核ノルアドレナリン神経細胞が変性する神経変性疾患です。
好発年齢は50〜65歳で、高齢化や診断率の向上により患者数は増加傾向にあります。
神経変性は運動機能や認知機能、自律神経機能を障害するため、運動障害や認知障害、便秘や睡眠障害など、さまざまな症状が現れます。
症状
4大兆候は安静時振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害です。
その他、意欲低下や認知機能障害、便秘や不眠などの自律神経障害、さまざまな非運動症状を伴います。
安静時振戦
静止時にみられる手や指先の震えです。
震えは初期症状として多くみられます。
筋固縮
筋肉が硬くなり、スムーズな動きができない状態です。
関節の動きがガクガクと歯車のよう抵抗感を感じます。
無動
動作開始に時間がかかり、動きもスローモーションになります。
また、まばたきが減り、表情が硬くなります。
姿勢反射障害
身体のバランスを保つことが難しくなり転倒のリスクが上がります。
原因
脳(黒質)のドパミン神経細胞の減少が原因で起こります。
神経細胞内にαシヌクレインというタンパク質が溜まり、脳の機能を妨げていると考えられています。
ドパミンは神経細胞の間を行き来して、運動に関する情報をやり取りする神経伝達物質です。
そのため、ドパミンが減少してしまうと運動の調節が上手く出来なくなるため、筋肉の硬直、手が震えるなどの運動障害が現れます。
治療
薬物療法が中心になります。
不足したドパミンの補充やその効果を高める薬が用いることでドパミンの働きを円滑にします。
その他、便秘や睡眠障害になどの自律神経症状(非運動症状)に対する薬物治療も行われます。
薬物療法で効果のない場合に脳深部刺激療法やL-ドパ腸管内持続投与療法のような外科的療法が検討されます。
重症度によっては、運動機能の維持・向上のための理学療法、話す・飲み込むが難しくなる前に言語療法を行う場合もあります。
重症度分類
パーキンソン病の重症度分類としてI〜Ⅴ度の「Hoehn&Yahr 重症度分類」があります。
- Ⅰ度:身体の片側に震えや筋固縮がみられるが日常生活に影響はない
- Ⅱ度:身体の両側に震えや筋固縮がみられるが日常生活に介助は必要ない
- Ⅲ度:歩幅が小さくなる、転倒が増えるため日常生活に支障はあるが介助なしで過ごせる
- Ⅳ度:歩くことが難しくなり介助が必要になる
- ⅴ度:車椅子が必要になり全面的な介助が必要になる
Ⅲ度以上が指定難病の医療費助成対象になります。
また、重症度の進行抑制に鍼灸の併用もおすすめです。
鍼灸の効果
パーキンソン病は進行性で完治は期待できませんが、症状を管理することで生活の質を向上させることが可能です。
鍼灸は血流改善や筋緊張を緩和して進行を抑制する期待ができます。
パーキンソン病は主症状の「筋固縮」により、筋肉が常に緊張しているため筋肉とても硬く、関節の動きも制限されています。
鍼で筋肉の弾性を取り戻すことで関節の可動域を広がり、転倒予防にもつながります。
実際にパーキンソン病の方に鍼治療を行なったところ、「局所血流・筋緊張緩和・下行性抑制効果により改善に有効である」との報告や「薬物療法のみ群と鍼灸併用群を比較した結果、鍼灸併用群ではパーキンソン病の進行抑制に効果を与えた」との報告もされています。
血流や筋緊張の改善は転倒予防や疼痛緩和につながり、薬物療法とも併用できるためおすすめです。
パーキンソン病と診断されたら
パーキンソン病は進行性疾患のため完治は難しいですが、早期に治療を行うことで発症後10年程は通常の生活が可能で、生命予後も悪くありません。
しかし、進行とともに認知機能の障害や転倒リスクが増えるため適切なサポートが必要です。
薬物療法に鍼灸を併用することで進行を抑制する効果が期待できるためサポートの1つとしておすすめです。
この記事の著者

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「白金のかかりつけ鍼灸師」を目指し、日々鍼灸に励んでおります。
鍼灸は多くの症状改善に効果が期待できる一方で、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先する場合もあります。
当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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