全身性強皮症(SSc)への対処と鍼灸治療の効果

皮膚や内臓が硬化する難病「全身性強皮症」

全身性強皮症は指定難病の1つで、早期の治療開始と内臓病変の進行を抑えることが大切になります。

また、鍼灸の血流改善効果により、血液循環の悪化による壊死や四肢切除を防げるため、足先や指先の血流悪化がみられる方は鍼灸併用をご検討ください。

今回は全身性強皮症について綴らせていただきました。

全身性強皮症とは

全身性強皮症(SSc:Systemic Sclerosisi)は皮膚や内臓の結合組織が硬化する「指定難病(51)」です。

30〜50代の女性に多くみられ、70代以降の高齢者に発症する場合もあります。

全身性強皮症は「びまん皮膚硬化型」と「限局皮膚硬化型」に分かれ、症状や予後(病気の経過)が異なります。

びまん皮膚硬化型

発症から5年以内に皮膚の硬化や内臓の病変が現れます。

5年以上経過すると皮膚の硬化は自然と柔らかくなりますが、内臓の状態は元に戻りません。

そのため、早期の治療開始と内臓病変の進行を抑えることが重要になります。

限局皮膚硬化型

皮膚のみの病気で内臓病変が起こりません。

病気の進行も緩やかで、比較的軽症な型です。

症状

主症状は皮膚硬化と肺線維症、血流障害によるレイノー症状や血管病変です。

その他、食道の下部が硬くなることで生じる「逆流性食道炎」や心臓の筋肉が硬くなることで生じる「心不全」が起こる場合もあります。

皮膚硬化

皮膚が硬くなり弾性が低下します。

最も代表的な症状で、手指や前腕に現れやすい特徴があります。

また、皮膚の色が変わりシミができる「色素沈着」や指先に潰瘍ができる「指尖潰瘍」などが現れる場合もあります。

潰瘍ができた場合には自分で処置をせずに主治医に処置してもらってください。

肺線維症

肺が硬くなることで空咳や息苦しさなどの呼吸困難が生じます。

肺線維症は細菌感染を起こしやすく、重症化すると生命に関わります。

発熱や痰の増加といった炎症反応が現れた際には主治医に連絡してください。

血流障害

レイノー症状や腎クリーゼに注意が必要です。

レイノー症状

手指が青白く、痺れや指先の違和感を生じます。

強皮症に続発したレイノー症候群は、手指の壊疽へと進行することがあるので注意が必要です。

腎クリーゼ

腎臓の血管に障害が起こり血圧が上昇して、頭痛や眩暈を生じます。

全身性強皮症の重篤な合併症の1つです。

原因

原因は不明です。

免疫異常、線維化、血管障害の3つとの関連性が指摘されています。

免疫異常

免疫は自己と非自己を識別して、非自己を排除することで身体を守る働きをしています。

この免疫システムに異常が現れることで、普段は細菌やウイルスから身体を守る免疫システムが、誤って自己の細胞を攻撃することで炎症と硬化が引き起こされます。

繊維化

皮膚や肺が硬くなることを線維化といいます。

皮膚や臓器はコラーゲン繊維が適量含まれることで、柔軟性と張りのバランスを保ち、型崩れしないよう形状を維持しています。

しかし、コラーゲンを作り出す細胞が働きすぎてしまうと、繊維質になり皮膚や臓器が硬くなります。

血管障害

血管が硬くなったり、内側が狭くなったり、することで血流が悪化します。

血流の悪化は毛細血管を詰まらせて損傷させたり、酸素や栄養素が必要な細胞(組織)に届けられなくなることで、さまざまな症状が現れます。

治療

免疫抑制剤、抗繊維化薬、血管病変を抑制する、薬物療法が中心になります。

  • 免疫抑制剤:免疫システムの過剰な反応を抑える薬です。
  • 抗繊維化薬:結合組織の硬化(繊維化)を遅らせるために使用します。
  • 血管病変薬:血液をサラサラにしたり、血圧を下げて腎クリーゼなど合併症を予防します。

現在、完治できる薬はなく、重度の間質性肺炎や指尖潰瘍の場合には外科的療法も検討されます。

全身性強皮症の治療は、進行を遅らせて生活の質を向上させることが目的になります。

そのため、薬物療法に併せて関節の柔軟性を保つための「運動療法」や筋緊張の緩和や血流改善効果のある「鍼灸」も効果的です。

鍼灸の効果

鍼灸には血流改善と筋緊張緩和が期待できます。

結合組織疾患に続発したレイノー症候群は、最悪の場合、疼痛を伴う手指の壊疽へと進行します。

鍼灸は循環改善が期待できるため「循環不良による指先の壊疽」から回復できる場合があります。

そのため、手指や足先の切断も考慮するように伝えられた方は、是非一度鍼灸をご検討ください。

全身性強皮症と診断されたら

全身性強皮症の予後(経過)は症状や治療内容により異なります。

現在は特効薬がありませんが、早期の治療開始と内臓病変の進行を抑えることが可能です。

しかし、病気が進行して手指の壊疽や合併症を伴うリスクは常にあります。

もし末梢循環の不良により指先、足先の切断を迫られた場合には、血流改善効果のある鍼灸を受けられることをおすすめします。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。

鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。

当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。

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指定難病 パーキンソン病(PD)全身性強皮症(SSc)

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