鵞足炎(がそくえん)への対処と鍼灸治療の効果

膝の内側に炎症が起こる「鵞足炎(がそくえん)」

鵞足炎は膝の筋肉を使いすぎることで起こるため、安静にして回復するのを待ちます。

安静時やリハビリ時期に鍼灸を行うと筋肉の緊張を緩和して柔軟性が向上するため、早期回復や予防につながるのでおすすめです。

今回はそんな鵞足炎について綴らせていただきました。

鵞足炎とは

鵞足(がそく)と呼ばれる膝内側の部位に炎症が起こる病気です。

膝の周囲にはいくつかの筋肉が腱となって骨に付着しています。

それら筋肉の中で、縫工筋(ほうこうきん)、半腱様筋(はんけんようきん)、薄筋(はくきん)と呼ばれる3つの筋肉が集まっている部分を後ろから見ると、ガチョウの足に似ていることから鵞足と呼ばれています。

ランニングやジャンプ動作など、膝の屈伸運動を繰り返すことで、鵞足の腱付着部や摩擦を軽減するクッション(鵞足滑液包)に炎症が起こります。

症状

膝内側の痛みが主な症状です。

炎症が起こっているため、熱感や腫れにより膝関節の可動域が低下します。

鵞足炎初期は、運動開始時のみ違和感が現れますが、悪化していくと安静時にも痛むようになります。

また、滑液包の炎症悪化は膝に水が溜まる原因にもなります。

原因

使いすぎ(オーバーユース)が原因です。

ランニングやジャンプ動作を繰り返すスポーツで多発する傾向がみられます。

鵞足を構成する縫工筋(ほうこうきん)、半腱様筋(はんけんようきん)、薄筋(はくきん)の筋疲労が蓄積して柔軟性が低下すると起こりやすくなります。

他には、転倒や強打による外傷、姿勢や筋力のアンバランスなど、膝への負担も要因になります。

運動前後のストレッチや大腿四頭筋とハムストリングス(大腿二頭筋)のバランスを考えながらトレーニングされることも大切です。

治療

安静が中心になります。

患部に熱感があるような場合にはアイシングや抗炎症剤を使用します。

炎症が落ち着いてきたら膝周囲の筋力強化やストレッチを行います。

しっかりと筋肉をほぐして柔軟性を向上することが大切になるため、鍼灸も効果的です。

鍼灸の効果

鍼灸は膝関節周囲の硬くなった筋肉を緩め、過敏になった神経を鎮静させる効果があります。

鵞足を構成する縫工筋(ほうこうきん)、半腱様筋(はんけんようきん)、薄筋(はくきん)を個別に緩めることで、腱同士の干渉を緩和してバランスを整えることができるのも強みの1つです。

リハビリや筋力強化を行なっても、筋肉のバランスが崩れて余計に痛みが増しては元も子もありません。

関節運動は実際に力を加える筋肉(主動筋)とゆっくり緩む筋肉(拮抗筋)が円滑に働くことが重要になります。

拮抗筋が力の強弱を調整することで円滑な関節運動が可能になり、仮に拮抗筋が機能しないと「扉をバタンと強く締めるような動き」になってしまうため、どちらか一方だけのトレーニングやストレッチで筋肉がアンバランスになってしまう状況は好ましくありません。

膝関節は臀部や大腿部の筋肉が緊張することで、動きを制限してしまうこともあるため、お身体全体の動きを確認しながらバランスを整える必要があります。

そのため、湿布やセルフストレッチで改善しない、すぐ再発してしまう方は鍼灸をご検討ください。

膝の内側に痛みを感じた場合には

膝の痛みは鵞足炎の他にも「膝蓋靭帯炎」など、さまざまな原因で痛みは現れます。

そのため、自己判断で安静にせずまずは整形外科の受診をご検討ください。

鵞足炎の場合には安静や理学療法が中心になりますが、鍼灸を併用することで筋肉の柔軟性とバランスを整うため早期回復や予防につながります。

「1ヶ月以上安静にしても回復しない方」や「治ってもすぐに再発してしまう方」は鍼灸をご検討ください。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。

鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。

当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。

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