顎関節症への対処と鍼灸治療の効果

口を大きく開けられない、硬い物が食べられない「顎関節症」

顎関節症は関節包や靱帯・筋肉の問題など、さまざまな原因で起こります。

安静にして関節や筋肉の負担を和らげることが優先になり咀嚼筋の緊張が原因の場合には、鍼灸で筋肉を緩めることで改善するためおすすめです。

今回はそんな顎関節症について綴らせていただきました。

顎関節症とは

顎の関節包や筋緊張などにより開口障害や顎関節痛が起こる病気です。

症状を感じても少し経てば回復するため気付きづらく、2人に1人が経験するといわれています

噛み合わせの問題は筋肉の持続緊張、上下の歯をつける癖、噛み合わせの悪さや関節の構造、さまざまな要因が合わさって、その人の関節や筋肉の耐久力を超えると問題になります。

症状

顎関節痛、開口障害、関節雑音が主な症状です。

顎関節痛

ものを咬む時や開口時の痛みです。

筋肉の緊張による場合には下顎やこめかみ、関節包や靱帯の場合には顎関節周囲(耳の前)に痛みが現れます。

開口障害

口が途中までしか開かない、大きく開けられない状態です。

指一本分の幅しか口が開かなくなることがありますが、上下の歯が接触するほど開かなくなることはありません。

当初開けにくくても自然に少しずつ改善していきます。

関節雑音

クリック音とクレピタス音があります。

クリック音

パキパキ、ガクガクなどの弾發音で関節円板のズレに関係します。

指や関節を鳴らすのと同様で、顎関節の音は耳のすぐ前で鳴っているため余計気になることが多く、痛みを伴わないケースもあります。

クレピタス音

ギシギシ、ザラザラなどの軋轢音で顎関節の骨や関節円盤の変化が進むと現れます。

クレピタス音は関節の摩擦が増えていることを示唆しているので、痛みを伴う場合には摩擦を少なくする対応が必要になります。

原因

日本顎関節学会の基準では5つのタイプに分類され、それぞれ原因も異なります

長時間モニターを見ることによる歯の上下接触させる癖(TCH)の増加、下顎頭が小さい構造的な問題、噛み合わせなど、さまざまな要因も関わっています。

タイプⅠ:咀嚼筋障害(全体の15%)

筋肉の緊張が持続することで筋疲労が溜まり、緩めることができない(緩み辛い)状態です。

顎関節や関節包に問題がみられないのが特徴です。

口を開ける際の拮抗筋(閉口筋)が弛緩せず、筋肉が伸ばされることで痛みが現れます。

顎の運動時に音もなく痛む場合には、筋肉の緊張が疑われます。

タイプⅡ:関節包・靱帯障害(全体の10%)

顎関節を取り巻く関節包や靱帯に傷があり、開口するたびに顎関節が痛む状態です。

噛み違えや打撲などの外傷で起こります。

足首の捻挫とは異なり、外傷直後ではなく翌日に口を開けようとして痛むことが多い特徴があります。

口を開けないようにして柔らかい食事にすることで10日〜14日程で症状は落ち着きます。

タイプⅢ:関節円盤障害(全体の70%)

関節円盤の異常により「クリック音がでる(a型)」と「音が出ないが口が開かない(b型)」に分かれ、下顎に付着する関節円板にズレが生じて起こります。

関節円板は下顎頭が前方移動する際に一緒に移動して仮の軸受けになっており、下顎頭と骨との食い違いを埋める緩衝材の働きがあります。

この関節円板が下顎頭に乗り上げる際に音がするのが「a型」、関節円板を下顎頭が潜り抜けられず運動障害が起こるのが「b型」です。

タイプⅣ:変形性顎関節症(全体の1%)

下顎頭や関節隆起の骨に病的変形を起こしたタイプや骨の変形を伴うものです。

タイプⅤ:その他

上記4タイプに該当しないものになります。

治療方法

鎮痛薬、マウスピース作製、歯を削る噛み合わせ調整が一般的です。

外れた関節円板を元に戻す、関節円板の変形が見られるような珍しいケースの場合には外科的療法が行われることがあります。

歯は削ってしまうと元には戻せないので、鎮痛薬やマウスピースなど他の要因を排除した最終段階でご検討ください。

また、咀嚼筋の運動時に痛みが場合には鍼灸がおすすめです。

鍼灸の効果

鍼灸は硬くなった筋肉を直接緩めることができるため、咀嚼筋障害に効果的です。

口を開ける際の痛みは、拮抗筋(閉口筋)が弛緩せず筋肉が伸ばされることで痛みが現れます。

開口筋は顎下や前頸筋が、閉口筋は咬筋や側頭筋などが担っており、これらの筋肉がきちんと収縮と弛緩することで口の開閉が円滑に行えるようになります。

口を開けた時(運動時)に痛む、下顎やこめかみに痛みが現れる方は鍼灸をご検討ください。

顎の痛みを感じた場合には

顎関節症の診断には他の病気の可能性を排除したうえで、雑音や痛み、開口障害を確認する必要があるため、歯科医の判断が必要不可欠になりますので、まずは歯科口腔外科の受診をご検討ください。

「口を開けた時(運動時)に痛む方」や「下顎やこめかみに痛みが現れる方」は咀嚼筋障害の可能性が考えられます。

咀嚼筋障害でお悩みの場合には鍼灸がおすすめです。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。

鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。

当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。

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