前脛骨筋腱炎への対処と鍼灸治療の効果

ランニングやジャンプ動作時に脛(すね)が痛む「前脛骨筋腱炎(ぜんけいこつきんけんえん)」

前脛骨筋腱炎は前脛骨筋(足の筋肉)への負荷により炎症が生じた状態のため安静が大切になります。

また、鍼灸で前脛骨筋を緩めることも早期回復や再発予防に効果的です。

今回はそんな前脛骨筋腱炎について綴らせていただきました。

前脛骨筋腱炎とは

前脛骨筋腱炎は足の使い過ぎによる筋肉の炎症です。

前脛骨筋は「膝下→脛(すね)→内踝(くるぶし)→足裏」と走行する足の筋肉で、足首を上げる働きをしています。

周囲の筋肉と比べて大きな筋肉ではないため、長時間の歩行やランニングにより疲労が溜まりやすく、炎症を起こしやすい特徴があります。

前脛骨筋の痛む箇所には足三里という有名なツボがあり、松尾芭蕉の「奥の細道」にも登場する程、昔から重要視されています。

松尾芭蕉「奥の細道」の序文

「三里に灸すうるより、松島の月まづ心にかかりて」

(三里に灸をすえるなど、旅の支度にかかるうちに、早くももう松島の月が心に浮かんで)

膝下の足三里というツボにお灸をすえることが、旅の準備に大切である旨が記載されています。

「足三里」は足の疲れや胃腸の調子を整える事で有名なツボです。

症状

下肢前面外側の痛みが主な症状です。

痛みによる関節可動域の低下、炎症による腫れが現れる場合もあります。

ランニングなどの運動時に痛むことが多く、悪化すると歩行時やストレッチ時にも痛みます。

原因

前脛骨筋の使い過ぎが主な原因です。

前脛骨筋は足首を上げる動作で使う筋肉のため、過度なランニングやジャンプ動作の繰り返しで痛める方が多くいます。

ふくらはぎの筋肉などと比較しても小さい筋肉のため、筋肉の硬さや疲労感に気付きづらいのも痛めてしまう原因の1つです。

治療・対処方法

痛みや腫れが強い場合には薬物療法が検討されますが、保存療法が中心になります。

薬物療法

ヒアルロン酸やステロイド、抗炎症薬を使用して痛みを和らげるケースもありますが、ロキソニンやモーラステープのような鎮痛系の湿布薬が処方されるケースの方が多いようです。

保存療法

最も重要且つ代表的な治療法です。

痛みや腫れが酷い場合にはアイシングをおこない、運動を制限(休止)して患部を休ませて炎症を落ち着かせることが大切になります。

日常生活に支障をきたす程に痛む場合には、テーピングでの負担軽減も効果的です。

お風呂場でのセルフマッサージも筋疲労を抜くのに優れていますが、強い力で押圧すると症状が悪化するため注意が必要です。

「マッサージの力加減がわからない方」や「治っても直ぐ痛めてしまう方」は鍼灸がおすすめです。

鍼灸の効果

鍼灸は凝り固まった前脛骨筋に過剰な負荷を加えず緩めるため回復時間を短縮できます。

また、鍼灸を行うことで血流が改善して筋肉の硬さが取れる他、過敏になっている神経を鎮静化することで痛みを緩和することもできます。

前脛骨筋が走行する内踝(くるぶし)付近には後脛骨筋の他、長趾屈筋や長母趾屈筋という筋肉も隣接して走行しており、同じような動作を行っています。
身体の状態によっては股関節や腰臀部に筋緊張や痛みが現れることもあるので、前脛骨筋だけでなく不均一な状態の筋緊張を整えることは負担軽減や早期回復につながります。

そのため、「局所麻酔のような1回で痛みが無くなった」というようなことはあまり期待出来ませんが、中長期な視点で捉えると身体に無理な負担を掛けずに回復時間の短縮や再発予防に繋がります。

脛(すね)が痛む場合には

ランニングやジャンプ、足首を上げる動作時に脛が痛む場合には前脛骨筋腱炎の可能性が考えられます。

前脛骨筋腱炎は筋肉の炎症反応のため、痛みがある場合には安静が重要です。

あまりにも痛みが強い場合には整形外科の受診もご検討ください。

また「炎症の鎮静化」や「無理な力が加わった筋肉の緊張を整える」ことで早期改善や再発予防につながるため、保存療法に併せた鍼灸もおすすめです。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
「白金のかかりつけ鍼灸院」を目指し、日々鍼灸施術に励んでおります。

鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。

当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。

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