胸郭出口症候群への対処と鍼灸治療の効果
腕を挙げ上げた際に、痛みや痺れが現れる「胸郭出口症候群(TOS)」
胸郭出口症候群は首から腕にかけての神経や血管が圧迫されることで、さまざまな症状が現れます。
改善には安静や肩甲骨ストレッチが大切で圧迫ポイントにアプローチできる鍼灸も効果的です。
今回はそんな胸郭出口症候群について綴らせていただきました。
胸郭出口症候群とは
「腕の神経や血管」に圧迫・牽引ストレスが加わることで症状が現れる疾患です。
首から腕にかけての神経(腕神経叢)や血管(鎖骨下動静脈)は、その走行中に刺激されやすい隙間(トンネル)が3つあります。
3つの隙間「斜角筋間隙、肋鎖間隙、小胸筋下間隙」は肩を挙げる動作や重い物を持つ動作により、そのトンネルが狭くなることで神経や血管を刺激するため、痛みや痺れが誘発されます。
斜角筋間隙
前斜角筋(前壁)、中斜角筋(後壁)、第1肋骨(底面)で構成されるトンネルです。
首の筋肉が緊張することで神経を圧迫してしまいます。
いかり肩の人、携帯電話を耳に挟むような動作を行う人に現れ易い特徴があります。
肋鎖間隙
第1肋骨と鎖骨で構成されるトンネルです。
なで肩姿勢のような鎖骨が引き下がった(下制)状態はトンネル上面が低くなるため、神経と血管が圧迫され易くなります。
重い鞄を持つような動作で症状が現れ易い特徴があります。
小胸筋下間隙
肩関節の周囲(烏口鎖骨靱帯と小胸筋)で構成されるトンネルです。
電車の吊り革を掴む姿勢(肩関節外転位)で症状が現れ易い特徴があります。
TOSの症状
首から腕に掛けての痛みや痺れが主な症状です。
神経に圧迫や牽引ストレスが加わると「痺れ」や「痛み」が現れ、血管の循環障害が起こると「指先の冷感」や「浮腫み」のような症状が現れます。
首肩凝りから斜角筋が硬くなることで生じる場合もあるため、頭痛や眩暈(めまい)などの症状を感じる方もいます。
「腕を上げた状態」や「腕を垂らした状態」で症状が強く現れ易く、楽な姿勢をしていれば痛みや痺れが現れない場合もあります。
そのため、安静時にも熱感や痛みを生じる五十肩とは少し様子が異なります。
『五十肩の詳細はこちら』
治療方法
姿勢の見直しや日常生活動作の改善など、保存療法が中心になります。
症状が強い場合や早期治療が必要な場合は、薬物療法や神経ブロックを行うこともあります。
胸郭出口症候群は神経や血管の圧迫(牽引)で起こるため、隙間(トンネル)を広げることが重要です。
症状を悪化させる「腕(肩)の挙上」や「重い物を持つ(背負う)」動作を避けて、肩甲骨周囲を柔らかくしておくことが改善や予防につながります。
また、圧迫ポイントに直接アプローチできる鍼灸もおすすめです。
鍼灸の効果
鍼灸には「筋肉の緊張を緩める作用」や「血流を促進する作用」があります。
そのため「圧迫・牽引ストレス箇所の緊張緩和」や「血流障害の改善」に効果を期待できます。
また、肩甲骨周囲のバランスを整えることは、リハビリ運動の土台作りとしても大切です。
「怒り肩は斜角筋の筋緊張」、「なで肩は鎖骨の下制」に伴い、肩甲骨が固定された状態(外転・下方回旋)になります。
これらを除圧して肩甲骨が動く(内転・上方回旋)ようにすることで、僧帽筋や菱形筋がきちんと機能するようになるため、改善(予防)につながります。
鍼灸は副作用が少なく、安全に原因箇所に直接アプローチできる療法のため、「安静以外の方法をお探しの方」は是非ご検討ください。
首や腕に痛みがある時は安静に
胸郭出口症候群は「筋肉の緊張」や「牽引ストレス」で起こります。
そのため、過度な動きや刺激は症状を悪化させてしまいます。
首や腕の痺れは胸郭出口症候群以外にも、さまざまな原因で生じるため、症状の長引く場合には整形外科の受診をご検討ください。
「安静以外の方法をお探し中の方」や「リハビリ運動の効率を上げたい方」は鍼灸をお試しください。
この記事の著者
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「白金のかかりつけ鍼灸院」を目指し、日々鍼灸施術に励んでおります。
鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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