お灸の施術目的と効果ついて
お灸には温熱刺激による血行の改善、免疫力を向上させる効果があります。
鍼とペアなイメージがありますが、過去にはお灸だけの施術を行う治療院も多くあり、肩凝り腰痛の治療以外にも風邪予防などの目的で親しまれていました。
最近は自宅で手軽に行えるお灸も販売されているため、セルフケアにもおすすめです。
今回はそんな「お灸」ついて綴らせていただきました。
お灸とは
艾(モグサ)を皮膚やツボに置いて燃やし、その温熱刺激によって身体を整える療法です。
艾(モグサ)とはヨモギの葉を乾燥させて精製したもので、その艾を指先で円錐状に形作り、先端に線香で火を点けて燃やしていきます。
灸療法は中国で2千年以上前から行われており、日本でも松尾芭蕉「奥の細道」の序文に記載されている程に古くから親しまれてきた療法です。
松尾芭蕉「奥の細道」の序文
「三里に灸すうるより、松島の月まづ心にかかりて」
(三里に灸をすえるなど、旅の支度にかかるうちに、早くももう松島の月が心に浮かんで)
膝下の足三里というツボにお灸をすえることが、旅の準備に大切である旨が記載されています。
「足三里」は足の疲れや胃腸の調子を整える事で有名なツボです。
お灸を据える目的
温熱刺激による血行の促進、わざと小さな火傷をつくることで白血球の数を上昇させる免疫力の向上、壊れた組織を正常に直そうとする「ヒートショックプロテイン」効果が期待できます。
また、お灸の成分には「シネオール」という炎症をやわらげる成分が含まれているため、症状に対応するツボにお灸を据えることで症状の緩和が期待できます。
このような作用から、昔は季節の変わり目などの免疫力が下がりやすい時期にお灸をする習慣がありました。
お灸の種類
わざと小さい火傷をつくる「有痕灸」、火傷を作らない「無痕灸」、の2つに分かれます。
有痕灸
直接灸とも呼び、艾(もぐさ)を直接皮膚に乗せて着火する方法です。
(悪いことをした子供に灸を据える…と表現される方法です。)
お灸によって皮膚が少し火傷したタイミングで消火する方法のため、熱いというよりはチクっとした感覚が生じます。
傷口から艾(もぐさ)の有効成分「シネオール」という精油成分が浸透するため、消毒・殺菌・鎮静・鎮痛作用なども期待できます。
しかし現在は痕にならない施灸方法が身近になり、直接灸を行う頻度は減少傾向にあります。
無痕灸
間接灸とも呼び、艾(もぐさ)を台座などの上で燃やすため火傷痕が残らない方法です。
市販の物では千年灸のような台座の上で燃えるお灸があります。
見かける頻度は減りましたが、ビワの葉や生姜をスライスした物を台座として、お灸と皮膚の間に入れる方法も行われています。
生姜成分が経皮吸収されることで温熱効果などが得られる反面、匂いが充満してしまうため使われる頻度は高くありません。
千年灸とは
千年灸は艾(もぐさ)が包んである円柱状のお灸を台座の上で燃やすため、お灸痕が残らず初めての方でも安心安全に取り扱うことのできるお灸です。
台座の中心に熱が通る穴が空いているため、ジワジワと少しずつ暖かくなる作りになっています。
最近ではアロマの香りや煙が少ない物など、さまざまな種類が揃っているのでセルフケアをお考えの方におすすめです。
お灸の効果
お灸をすることで血流促進と免疫力が向上し、細菌やウイルス感染症の予防に繋がります。
お灸直後は免疫細胞である好中球が増え、一定時間経過するとリンパ球が増えることが判明しています。
また、免疫細胞には細菌やウイルスに対応する「TH1」や寄生虫に対応する「TH2」などの種類や役割があり、お灸をすることで免疫細胞のバランスが整いアレルギー疾患を鎮める効果も期待できます。
実際に人体や感染状況にあるマウスへの実験でも、
- 身体にお灸をすることで白血球の数が増加した
- ヘルペスウイルス感染マウスの足三里というツボに直接灸を行った結果、生存率が向上した
- 黄色ブドウ球菌を腹腔内投与したマウスの関元というお腹のツボへの間接灸はマクロファージの自食作用が増強した
など、感染予防や実際に感染した後にも効果を期待できる報告が多くされております。
市販のお灸でも効果を期待できますのでセルフケアにおすすめです。
お灸をやってみようとお考えの方は
火傷痕を残さない「無痕灸」を使用した際にも、皮膚が薄い・刺激に弱い方の場合には、軽い水膨れになってしまいます。
そのため鍼灸院で受ける際にも、ご自宅でセルフケアされる際にも、不快な熱さに感じた時には1度取り除き火傷や水脹れにならない熱さから試されることをおすすめします。
この記事の著者
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「白金のかかりつけ鍼灸院」を目指し、日々鍼灸施術に励んでおります。
鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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運動器系 | 肩凝り・肩関節周囲炎(五十肩)・腰痛・股関節痛・膝痛・腓骨筋腱炎・足底腱膜炎・ドケルバン症候群・ゴルフ肘・上腕二頭筋長頭腱炎・骨折、打撲、捻挫・脳卒中後遺症・寝違え・テニス肘・後脛骨筋腱炎・シンスプリント・鵞足炎・膝蓋腱炎(ジャンパー膝)・腸脛靭帯炎(ランナー膝)・顎関節症・前脛骨筋腱炎・胸郭出口症候群(TOS) |
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鍼灸師のコメント
ツボとは長年積み重ねた経験により、刺激を与える事で何らかの効果が現れるポイントの事を言います。
そのため、現在不快に感じている部位から離れた場所に刺激をしても特定の部位に血流が増えるなどの変化が起こります。