過活動膀胱(OAB)への対処と鍼灸治療の効果

若者から年配の方まで男女問わず起こり、近年では40歳以上の約14%の方が過活動膀胱であるともいわれる程、身近な病気です。
過活動膀胱の代表的な症状である尿意切迫感や頻尿(尿失禁)に対して、鍼灸で尿意切迫感や尿失禁の改善がみられたなどの報告もされており、過活動膀胱への治療法に加えられることがお勧めできます。

今回はそんな過活動膀胱について綴らせていただきました。

過活動膀胱とは?

過活動膀胱(OAB:over activ bladder)は様々な原因により膀胱が過敏な働きをすることで、膀胱に尿が溜まり切る前に尿意を感じる状態のことを指します。

そもそも膀胱とは

一時的に尿を溜めておく臓器のことで、左右の腎臓で作られた尿は「尿管」と言う細い管を通過して膀胱に入ります。
膀胱は伸び縮みする尿が溜まりやすい形状で、尿が膀胱に一定量溜まる事で脳へと信号が伝わり尿意を催し、トイレの準備が整うと脳からの指令で膀胱にたまった尿は「尿道」と呼ばれる管を通り体外に排泄されます。
排尿直前まで膀胱から尿が漏れないように堰き止める働きをしているのが尿道括約筋になり、過活動膀胱の治療では膀胱が一定量溜めておける状態を目指すとともに、この尿道括約筋や骨盤底筋といった堰き止める役割をする筋肉のトレーニングも大切になります。

過活動膀胱の症状

代表的な症状として下記3つが挙げられます。

  • 尿意切迫感:
    急に生じる尿意、漏れそうで我慢できない尿意
  • 頻尿:
    トイレに行く回数が増えている状態。
    日中で8回以上、夜間の睡眠時に1回以上尿意で目覚めてしまう場合には頻尿といえます。
  • 尿失禁:
    トイレまで我慢出来ずに漏れてしまう。

原因

過活動膀胱では、脳と膀胱を繋ぐ神経のトラブルが原因とされる「神経因性」のものと、それ以外が原因とされる「非神経因性」のものに大きく分けられます。

神経因性

脳神経疾患や脊髄疾患により脳と膀胱を繋ぐ神経が円滑に働かない場合を指します。

  • 脳神経疾患:
    脳梗塞などの脳血管障害やパーキンソン病などが挙げられます。
  • 脊髄疾患
    脊椎損傷や多発性硬化症などが挙げられます。

非神経因性

  • 加齢やストレス
  • アルコールやカフェインの過剰摂取
  • 尿量が増加する内服薬

をはじめとした様々な原因が考えられ、女性の場合には加齢や出産に伴う骨盤底筋の低下やホルモン変化も考えられます。
また、こうした原因が複合して起こる場合もあるため原因に合った対応が大切になります。

治療・予防法

薬物療法、行動療法、生活改善が代表的な治療法になります。
病院やクリニックによっては「電気刺激療法」や「仙骨刺激療法」といった骨盤(仙骨部)に刺激を与える治療を併用するケースもあります。
また、これら治療法と併用した鍼灸治療もお勧めです。

薬物療法

薬を服用して膀胱に多くの尿を溜められる状態を目指します。
代表的なお薬として、

  • 抗コリン薬:膀胱の異常(過剰)な収縮を抑える薬。
  • β3(ベータスリー):膀胱を広げて尿道を縮ませる

という2種類の薬が使用されます。

行動療法

排尿機能に関する訓練を行います。
尿意を我慢する時間を少しずつ伸ばす訓練で、15分→30分→60分と排尿までの間隔を徐々に延長していく訓練です。
我慢のし過ぎは膀胱炎にも繋がってしまうので焦りは禁物です。
また、骨盤底筋などの排尿をコントロールする筋肉も鍛えることで尿トラブル軽減することが出来ます。

生活改善

体質や生活習慣は過活動膀胱と深い関わりがありますので、無理のないコントロールが大切になります。

体重コントロール(減量)

体重の減少は有効性も高いとされており、体重の8%減少により尿失禁回数が47%減少したという報告もあります。

カフェインやアルコールを控える

カフェインやアルコールは利尿作用があるため、症状を悪化させる恐れがあります。
また、ニコチンも膀胱を収縮させる要因になりますので可能であれば禁煙を考慮されることをお勧め致します。

就寝前の水分管理

過活動膀胱に限らず頻尿の方には、水分摂取量が多い傾向があります。
一般的な目安としては1.5リットルから2リットルといわれておりますので、現在の水分摂取量を一度記録して確認されることも効果的です。
しかし他に持病をお持ちの場合や高血圧の薬が頻尿の原因のケースもありますので、水分調節をされる前にはお薬手帳の確認や主治医と相談のうえで行ってください。

鍼灸治療

鍼灸治療では仙骨(骨盤部)を含めた全身的な治療を行っていきます。
仙骨(骨盤部)への刺激という面では、病院やクリニックで行われる「電気刺激療法」や「仙骨刺激療法」に近しいものがあるかもしれません。
実際に過活動膀胱の方へ鍼灸治療を行った結果として、

  • 鍼灸治療対象群の82%に切迫性尿失禁および尿切迫感の改善がみられた。
  • 仙骨部へ鍼刺激は膀胱機能だけでなく尿道機能も含めた下部尿路機能にも影響を及ぼす可能性が示唆される。
  • 脊髄損傷者(不全損傷症例)への鍼治療で4回終了時に61%の症例で尿失禁が減少し、鍼治療終了後1ヶ月を経過しても膀胱容量の増大が見られ持続性も示唆されている。

といった様々な報告もされております。

過活動膀胱を進行させないためにも

過活動膀胱は加齢に伴う増加傾向もあり完全に症状を無くすといったことは難しいかもしれませんが、適切な治療や日常の意識(訓練)で改善できる部分も多くございます。

鍼灸治療も過活動膀胱に効果的であるといった報告も多く挙げられており副作用なども起こりづらいため、病院での治療や生活改善との併用をお勧めです。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。

鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。

当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。

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