鍼治療の目的・効果や痛みについて
鍼治療は、
- 血液循環の改善
- 免疫力の適正化
- 自律神経の調整
などの変化がお身体に生じることで肩こり腰痛を始め、風邪や胃腸症状など様々な症状に効果を期待することができます。
今回はそんな鍼治療について綴らせていただきます。
目次
そもそも鍼治療とは?
鍼治療では凝りを感じる部分や症状に対応するツボに鍼を施して行きます。
ツボとは長年積み重ねた経験により、刺激を与える事で何らかの効果が現れるポイントの事を言います。
そのため現在不快に感じている部位から離れた場所に刺激をしても特定の部位に血流が増えるなどの変化が起こります。
鍼治療を行う事で、部分的・全身的な血流改善や鎮痛作用、免疫力の向上など様々な効果が挙げられます。
鍼施術の方法
鍼治療では経穴(ツボ)に鍼を施していきます。
ツボに刺入した鍼は、
- 鍼を上下させる、回旋させる
- 微弱な低周波パルス通電させる
- 鍼を刺してはすぐに抜くを繰り返す
- 鍼を刺した後、一定時間おく
など、お身体の状態に合わせて刺激量を調節していきます。
他にも、皮膚に接触させたり押圧させたする方法もあり、「刺激にとても敏感な方」や「小児」に用いることの多い方法で、乳幼児の夜尿症や夜泣きなどに効果があります。
鍼治療で使われる鍼に関して
鍼と言うと注射針のような物を想像される方も多くいらっしゃると思いますが、鍼灸治療に用いられる鍼は注射針と形状や太さが異なります。
鍼灸鍼の形状や太さ、注射針との違い
鍼灸に使用される鍼は皮膚や筋繊維をかき分けて進むよう先端が丸みを帯びています。
そのため、筋肉などの組織に刺し進め易い形状になっております。
当室で主に使用している鍼の太さが0.16mmで日本人の髪の毛(0.05~0.15mm)と殆ど変わりません。
一般的に使用されている太さの物でも0.20mm程で、注射針の約1/3程の太さになります。
ちょうど注射針の薬剤が出る穴程の細さなどと言われております。
なお、注射針に関しては、皮膚や血管破るようにナイフのような形状しており、お薬を静脈や組織へ届けやすくしております。
注射針の太さが静脈採血の物で22~23G(0.6~07.mm)程になります。シャーペンの芯より少し太いくらいです。
鍼の衛生面
当室も含め、ほとんどの鍼灸院ではステンレス製の滅菌された使い捨ての鍼を使用しております。
特殊な形状の鍼を使用している鍼灸院も稀にありますが、そのような鍼を使用している鍼灸院ではオートクレーブと言う「高温高圧式滅菌装置」や化学的な方法で安全を期してた物を使用しております。
鍼は痛いのか?
お身体への刺入方法は、主に管鍼法という円柱形をした合成樹脂製の筒を用いて無痛で刺入します。
一部の鍼灸院では、筒を使わずに鍼を親指と人差し指でつまんで刺入する方法(中国で行われている方法)も行われておりますが、
どちらもほとんど痛みを感じません。
稀に痛点(皮膚の痛みを感じとるセンサー)へ当たった際に感じる事があります。
皮膚には他にも、
- 触られた、振動している
- 熱い、冷たい
などの情報を感知するセンサーが張り巡らされております。
そのため、同じエリアに鍼をしても痛点に当たる確率はとても低くなっております。
また、持続するような痛みはございませんのでご安心下さい。
鍼治療の独特の感覚「響き(得気)」
鍼を刺した痛みとは別に、鍼を身体の深部へ進ませるに連れて「ズーン」とした重怠いような独特な感覚を生じることがございます。
これは、響き(得気)と呼ばれるもので鍼が効いている目安にもなります。
鍼を刺した際の痛みよりも独特なため、この響き(得気)が鍼の好みを大きく分けています。
しかし、この響き(得気)は施術者側の裁量である程度コントロールできますので苦手な際にはお気軽にお伝え下さい。
痛み・響きが感じやすくなる場合
- 疲れや凝りが強い状態
- 精神的に緊張している場合
など、感覚が普段より研ぎ澄まされている際には感じ易くなります。
そのため、痛みや響きの苦手な方は刺鍼前にマッサージや千年灸のようなお灸を受けられてから鍼を試されることをお勧め致します。
鍼の効果
鍼は様々な効果があり、WHO(世界保健機関)も鍼灸適応症に多くのものを挙げております。
代表的な効果が下記の3つです。
血液循環の改善
お身体(細胞)にわざと小さな傷を作る事で、この傷を修復するために血行を促進する働きが活性化します。
血行が促進することで患部に滞っていた不要物質が排泄され、身体の組織に必要な栄養素や酸素が行き届くことで不快感などの諸症状を改善していきます。
免疫力の活性化
お身体に鍼という異物をわざと入れる事で、お身体の細胞はこの異物(鍼)を排除しようとするため活性化します。
自律神経を整える
ストレスなどで自律神経が乱れると「血流の悪化」「ホルモンバランスの乱れ」など様々な症状が現れます。
ホルモンは血液に乗って身体の中を移動するため、「血流悪化」の影響を強く受けてしまいます。
そして、ホルモンバランスが乱れることで「眠れない」、「お腹の調子が良くない」などの症状へと繋がることで、自律神経を更に乱してしまいます。
そのため、血流改善を行うことでホルモンバランスが整い、自律神経も整ってきます。
WHOの表記
WHOが鍼灸適応としている症状(疾患)に下記が挙げられます。
- 運動器系
関節炎/リウマチ/頚肩腕症候群/五十肩/腱鞘炎/腰痛/外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫) - 神経系
神経痛/神経麻痺/痙攣/脳卒中後遺症/自律神経失調症/頭痛/めまい/不眠/神経症/ノイローゼ/ヒステリー - 消化器系
胃腸(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘) /胆嚢炎/肝機能障害/肝炎/胃十二指腸潰瘍/痔疾 - 呼吸器系
気管支炎/喘息/風邪 - 循環器系
心臓神経症/動脈硬化症/高血圧や低血圧症/動悸/息切れ - 代謝内分泌系
バセドウ氏病/糖尿病/痛風/脚気/貧血生殖・泌尿器系疾患/膀胱炎/尿道炎/性機能障害/尿閉/腎炎/前立腺肥大/陰萎 - 婦人科系
更年期障害/乳腺炎/白帯下/生理痛/月経不順/冷え性/不妊 - 小児科系
小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)/小児喘息/アレルギー性湿疹/耳下腺炎/夜尿症/虚弱体質 - 眼科系
眼精疲/仮性近視/結膜炎/疲れ目/かすみ目/ものもらい - 耳鼻咽喉科系
中耳炎、耳鳴、難聴、メニエル氏病、鼻出血、鼻炎、蓄膿(ちくのう)、咽喉頭炎、扁桃炎(へんとう炎)
最後に
鍼はお身体に備わっている自然治癒力を最大限に引き出すお手伝いができる治療法です。
そのため、様々な症状に対して効果を期待することが出来ます。
しかし一方で、良性腫瘍への治療など効果を期待できないものや病院での治療を優先とするものもございます。
鍼灸適応の判別をしっかりと行なっている治療院(施術者)と相談しながら、お身体に合った施術・治療を受けていただけますと幸いです。
この記事の著者

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『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し日々鍼灸臨床に励んでおります。
鍼灸治療は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当治療室では、鍼灸適応の判別やご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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呼吸器系 | 風邪症候群・喘息(気管支喘息) |
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泌尿生殖器系 | 前立腺肥大症・膀胱炎・陰萎(ED)・過活動膀胱(OAB) |
その他 | 全身倦怠感・更年期障害 |
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