月経痛への対処と鍼灸治療の効果
下腹部の痛みやイライラ感など様々なお悩みの原因になる月経痛。
月経痛に対して鍼灸治療をおこなうことで自律神経やホルモンバランスを整い、様々な症状の緩和・改善が期待できます。
今回はそんな月経痛について綴らせていただきました。
そもそも月経とは
子宮内部では「子宮内膜」という赤ちゃんのベッドが日々作られます。
「子宮内膜」は妊娠していない場合に剥がれ落ち、血液と一緒に体外へ排出されます。
ベット作成と排出の周期が約4週間で繰り返され、その際に感じる腰や下腹部痛を「月経痛」と呼びます。
この約4週間の月経周期は、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2つの女性ホルモン分泌が生じることでリズムが形成されます。
月経周期は約4週間(28~30日)を1サイクルとし、生理が始まってからおよそ14日目に「排卵」が起こります。
ストレスなどにより1週間程前後することはありますが、生理予定日の前後2~5日は正常なズレとされております。
月経痛の原因
月経痛には大きく2つの原因があります。
プロスタグランジンの分泌量が多い
不要になった子宮内膜を体外に排出するために、体内では子宮を収縮させて体外に押し出す働きをする「プロスタグランジン」を分泌します。
プロスタグランジンの分泌が多くなることで子宮の収縮が過剰になり、下腹部や腰の痛みの原因になってしまいます。
また、プロスタグランジンには痛みを強める作用があるので、下腹部痛だけでなく頭痛などの原因にもなります。
血行不良
血行不良は「プロスタグランジン」が骨盤内に滞る原因にも繋がるため、症状を悪化させて悪循環を形成してしまいます。
月経痛の種類
月経痛は症状や生じる時期などにより、大きく2つに分かれます。
月経前症候群(PMS)
生理前に不快な症状が現れて、日常生活に支障をきたすことを月経前症候群(PMS)といいます。
浮腫や頭痛・肩凝りなどの身体症状やイライラ・憂うつ・睡眠障害などの精神症状があります。
多くの場合は生理が始まると症状が軽くなり消失するのが特徴的です。
生理1週間前から症状が気になる方が多いですが、2週間前から症状が現れる人や2.3日前に現れる急な症状にお悩みの方など千差万別です。
また、日常生活に支障が無い場合には月経困難症(PMS)と診断されない場合もございます。
月経困難症(PMS)の原因
エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)と言う、月経周期に深く関与しているホルモンの分泌異常が原因との説がありますが詳しい発症メカニズムは解明されていません。
腎臓に関与するレニンやアンジオテンシン、アルドステロンなどのホルモン異常が関与しているとの考えもあります。
一方でPMSの神経症状は脳内のホルモンや神経伝達物質の異常が原因であることがわかっております。
黄体期という月経周期中に高値となる「プロゲステロン」と言うホルモンの分泌が低下することで、気持ちを落ち着かせる効果のある「セロトニン」というホルモンの分泌が妨げられたり、脳内GABAの活性が低下したりすることでイライラ感や抑うつなどの症状を引き起こします。
月経困難症
月経困難症は、更に大きく2つに分類されます。
器質性月経困難症
- 子宮筋腫
- 子宮腺筋症
- 子宮内膜症
- 子宮の形態異常
などの病気が原因で月経困難症を生じる場合があり、生理期間以外にも痛みが生じる場合があります。
月経時以外の下腹部痛・排便や性交に伴う痛みがある場合はこのタイプが疑われるので注意が必要です。
こちらは鍼灸治療の適応外のため、婦人科での治療が必要となります。
機能性月経困難症
月経症状のうち日常生活に支障をきたし治療が必要なほど重く、明らかな原因となる疾患が見つからない場合を指します。
下腹部痛や腰痛の他、頭痛・憂うつなどの症状が日常生活に支障をきたすほど重い場合に診断されます。
大部分の月経困難症がこれにあたり、プロスタグランジンの分泌量が多かったり子宮筋の感受性が高いなどの場合には子宮筋が過剰に収縮し強い生理痛となります。
その他、月経注意点
過小月経
出血後2.3日で終わるなどの少量の場合、無月経の前兆症状の場合があります。
過多月経
生理が8日間以上続く、眠るのが怖いほどの量や血の塊が出たりする場合には、ホルモンバランスの乱れや子宮筋腫の可能性が出てきます。
奇発月経
月経周期が39日以上となる場合を指します。排卵の無い場合には不妊症や無月経の原因にもなることがあるため、ホルモン療法を行うことがあります。
頻発月経
ひと月に2度、3度と生理がある状態で、更年期などホルモンバランスの崩れ易い女性に多く、不正出血の場合もあります。
その場合には早めに婦人科を受診して下さい。
月経痛への対処
月経痛の主な原因は「血行不良」と「発痛物質」が原因です
そのため、セルフケアの場合には
- 下腹部や腰を温める
- 身体を冷やさない(ゆっくり入浴する)
- ストレスを溜めすぎないようにリフレッシュする
- 鎮痛薬を服用する
などが挙げられます。
また、血行改善に鍼灸も効果的です。
月経痛に鍼灸が効果的な理由
鍼灸治療は世界保健機関(WHO)でも、生理不順に対する有効性が認められています。鍼はお身体に刺すと、刺した周囲の血管が拡張して血行を良くする効果があります。
また、同時にお灸も行うことで温熱効果も加わり、更なる血行改善へと繋がります。
血行や冷えを改善することで自律神経やホルモンバランスが整い、様々な症状改善に効果が期待できます。
しかし、
- 器質性の疾患
- 月経時以外(排泄や性交時)に痛みを伴う場合
には鍼灸不適応になりますのでご注意ください。
月経痛と上手に付き合うためにも
お身体を冷やさないことが最も大切になります。
また、諸症状改善に鍼灸を取り入れられることもおすすめです。
しかし、症状が辛すぎる場合や月経時以外に痛みを伴う場合には、無理をせず早めに婦人科の受診をお願いいたします。
この記事の著者

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『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。
鍼灸治療は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当治療室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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