アトピー性皮膚炎への対処と鍼灸治療の効果
痒みの他に、
- 便秘や下痢などの消化器症状
- 自律神経失調による不眠
- 慢性的な疲労感
など様々な症状のあるアトピー性皮膚炎。
アトピー性皮膚炎は病院での治療に鍼灸治療を併用することで、自律神経が整い症状の緩和・安定を図る期待が持てるためおすすめです。
今回はそんなアトピー性皮膚炎について綴らせていただきました。
アトピー性皮膚炎とは
日本皮膚学会の定義では、
「寛解と憎悪を繰り返し、かゆみのある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」
と定義され具体的には、
- 痒みのある湿疹
- 悪化や改善を繰り返す
- アレルギーが起こりやすい体質(アトピー素因)
の3つを指します。
アトピー性皮膚炎の原因
様々な原因が考えられますが、代表的な原因は下記の2つです。
皮膚のバリア機能の低下
皮膚には、
- 外から刺激や雑菌が体内に入らないよう防ぐ
- 体内から水分の蒸発による乾燥を防ぐ
といった、バリア機能が備わっております。
皮膚は外側から表皮→真皮→皮下組織という3層からなり、表皮の最も外側にある「角質層」がこのバリア機能を担っております。
アトピー性皮膚炎ではバリア機能が低下しており、角質細胞の間を埋めている角質細胞間脂質や水分を保つ天然保湿因子が減っております。
そのため、外からの様々な刺激やアレルギー反応の原因(アレルゲン)が侵入しやすくなります。
アレルギー反応が起こり易い体質
アレルギー反応は、ダニ・ほこり・食べ物やストレスなどの要因が重なることで生じます。
外からアレルゲンが侵入すると身体を保護する役割の「免疫」が対峙するのですが、退治する必要のないものにも過剰に反応して炎症が生じてしまう体質をアレルギー体質と呼び、痒みにより皮膚をかくことで更にバリア機能を壊してしまう悪循環に陥りやすくもなります。
病院での代表的な治療方法
ステロイド薬治療が中心におこなわれます。
ステロイド薬は過剰に反応している免疫を抑制する作用があり、痒みが辛い時に使用する薬です。
医院によっては漢方薬を処方するケースもあり、柴朴湯の併用がアトピー性皮膚炎や気管支喘息に有効とのデータも挙げられているため、漢方薬も試されたいとお考えの場合には病院選びも大切になります。
ステロイドとは
ステロイドとは、副腎(腎臓の上に乗っている臓器)から作られる副腎皮質ホルモンの1つです。
ステロイド薬は、炎症抑制や免疫力抑制の作用がある強い薬です。
強い薬であるが故に使用を控えたいと考えられる方も多いのですが、急な断薬を自己判断ではおこなわず医師と相談して減薬してください。
断薬ではなく減薬をお勧めする理由
副腎からのホルモン分泌は脳(下垂体)からの信号(ACTH)で分泌量を調整します。
生理的量を超えるステロイドを長期服用すると、負のフィードバックがかかり続ける結果、脳(下垂体)からの信号(ACTH)が弱まり、副腎皮質の萎縮へ繋がる恐れがあります。
これが正常に復帰するまでに数ヶ月かかるため、巷で耳にする補完代替療法との併用や変更をお考えの際にも主治医と相談のうえで減薬されることをおすすめいたします。
補完代替療法としての鍼灸
長期戦になることの多いアトピー性皮膚炎に対し、鍼灸治療はアトピー性皮膚炎に付随する不調を1つ1つ取り除いていくことで症状の緩和・安定を図ることが期待できます。
ステロイド治療をされている方のお身体状態は炎症反応を示しているが、ステロイドで炎症を抑えている状態です。
例えると、車のスピードが出過ぎた状態でアクセルを緩めずにブレーキをかける力を増大している状態ともいえます。
鍼灸治療を併用する事で、アクセルを緩めて適度なブレーキでしっかり止まってくれるバランスの取れた状態を目指すことができます。
なぜ鍼灸で身体のバランスが整うのか
鍼灸には自律神経を整える効果があります。
自律神経は交感神経と副交感神経2つの種類があり、活動時には交感神経が、休息時には副交感神経が優位になり、環境に適した生活を送れるよう調節する機能があります。
アトピー性皮膚炎でお困りの方には交感神経優位の方が多い傾向もあり、自律神経を整えることは症状を緩和することに繋がります。
鍼とお灸にはそれぞれ、
- 鍼には交感神経が過敏に反応している際に落ち着かせる作用
- お灸には副交感神経を抑制する作用
このような作用も持ち合わせており、自律神経を整えることに適しています。
また、自律神経が整うことで、白血球内の免疫グロブリン(IgeやIga)の数値も整うため、主症状の改善のほかに、
- 便秘や下痢などの消化器症状
- 自律神経失調による不眠
- 慢性的な疲労感
など様々な辛い症状を改善することが期待できます。
自律神経についての詳しい記事はこちらをご覧ください。
鍼灸院を選ぶ際の注意点
アトピー性皮膚炎の特徴に「寛解と増悪を繰り返す」とあるように、「1度の施術で治りました」などの情報は鵜呑みにされないようにご注意ください。
病院と鍼灸の併用で症状を緩和・安定を図っていきましょう
自律神経が整うことで改善するのであれば鍼灸治療だけで良いのでは?とお思いになる方もいらっしゃると思いますが、アトピー性皮膚炎の特徴として「寛解と増悪を繰り返す性質」があり、症状・強さもその時々で変化します。
ステロイド薬はアトピー性皮膚炎の炎症を最も鎮静させられる薬として、その有効性・安全性が科学的に立証されており、強い炎症時にはステロイドを服用した方が良い場合が多くあります。
そのため、病院での治療に併用して鍼灸治療をおこない、ステロイドを断ちたいとお考えの方は主治医とご相談のうえで少しずつ減薬される事が望ましいと考えております。
この記事の著者

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『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。
鍼灸治療は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当治療室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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