アトピー性皮膚炎(AD)への対処と鍼灸治療の効果
皮膚の湿疹や強い痒みを伴う「アトピー性皮膚炎(AD)」
アトピー性皮膚炎の強い痒みは不眠につながり、日常生活にも影響を及ぼします。
ステロイド薬での治療が中心になりますが、鍼灸を併用することで、皮膚のターンオーバー改善にも期待ができます。
今回はそんなアトピー性皮膚炎について綴らせていただきました。
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎(AD:Atopic Dermatitis)は「寛解と憎悪を繰り返し、かゆみのある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義されています。
アトピー素因とは
ご本人やご家族で「アレルギー性鼻炎」や「気管支喘息」といったアレルギー性の病気を持っていて、アレルギー反応に関与する「IgE抗体」を産生しやすい体質のことをいいます。
症状
ジクジクした湿疹・瘡蓋(かさぶた)を伴う、湿疹と強い痒みが特徴です。
掻いたり、擦ったりすることで皮膚が厚く(苔癬化)硬くなり、掻き刺激によって更に痒みが増すことで、また掻いてしまうという悪循環になります。
原因
「皮膚バリア機能低下」と「アレルギー体質」が主な原因です。
また、生活環境やストレスが悪化因子になります。
皮膚のバリア機能低下
皮膚には外からの刺激や雑菌、体内からの水分蒸発(乾燥)、を防ぐ機能が備わっております。
皮膚は外側から表皮→真皮→皮下組織という3層からなり、表皮の最も外側にある「角質層」がバリア機能を担っております。
アトピー性皮膚炎はバリア機能の低下により、細胞の間を埋めている「角質細胞間脂質」や「水分を保つ天然保湿因子」が減ってしまうため、アレルギーの原因物質(アレルゲン)が侵入しやすくなります。
アレルギー体質
アレルギー反応はダニ・ほこり、食べ物、ストレスなど、さまざまな要因で起こります。
からだを保護する「免疫」が外敵以外にも過剰に反応してしまう状態をアレルギー体質といいます。
治療方法
ステロイド薬での治療が中心におこなわれます。
ステロイド薬は過剰に反応している免疫を抑える作用があり、痒みが辛い時に使用する薬です。
医院によっては漢方薬を処方するケースもあり、柴朴湯の併用がアトピー性皮膚炎や気管支喘息に有効とのデータも挙げられているため、漢方薬も試されたいとお考えの場合には病院選びも大切になります。
ステロイドとは
ステロイドとは、副腎(腎臓の上に乗っている臓器)から作られる副腎皮質ホルモンの1つです。
ステロイド薬は、炎症抑制や免疫力抑制の作用がある強い薬です。
強い薬であるが故に使用を控えたいと考えられる方も多いのですが、急な断薬を自己判断ではおこなわず医師と相談して減薬してください。
断薬ではなく減薬をお勧めする理由
副腎からのホルモン分泌は脳(下垂体)からの信号(ACTH)で分泌量を調整しています。
そのため、ステロイドの長期服用は、脳(下垂体)から信号(ACTH)を弱めてしまい、副腎皮質の萎縮へ繋がる恐れがあります。
ホルモン分泌が正常に戻るまでには数ヶ月を要すため、断薬ではなく減薬していく必要があります。
補完代替療法としての鍼灸
ステロイド薬での治療に鍼灸を併用することで皮膚のターンオーバーを整え、悪化因子であるストレスの緩和にも効果を期待できます。
アトピー性皮膚炎患者への施術結果として、過去6ヶ月以上掻痒感を有している20名に鍼灸をおこなった結果、掻痒感・皮水分蒸散量・角層水分量など、さまざまな項目で改善傾向がみられたとの報告もあげられており、皮膚のターンオーバーに影響を与えていると考えられています。
そのため、皮膚の状態を少しでも改善したい方に鍼灸はおすすめです。
鍼灸の併用で緩和・安定を図りませんか?
ステロイド薬は害悪のような風潮もありますが、アトピー性皮膚炎の炎症を最も鎮静させられる薬として、その有効性・安全性が科学的に立証されており、強い炎症時にはステロイドを服用した方が良い場合が多くあります。
病院での治療に併用して鍼灸を取り入れ、ステロイド薬をコントロールしながら、皮膚の状態やストレスの緩和に取り組まれることをおすすめします。
この記事の著者
![中島 裕(Nakajima Yutaka)](https://shirokane-hari.com/wp-content/uploads/2021/12/k1746-150x150.png)
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「白金のかかりつけ鍼灸院」を目指し、日々鍼灸施術に励んでおります。
鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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渋谷-田町「三光坂下」より徒歩3分
鍼灸師のコメント
アレルギー反応とは私たちの身体を守る「免疫」が、ある特定の異物に対して過剰に反応することをいいます。
免疫細胞には細菌やウイルスの場合に対応する「th1細胞」、ダニや花粉などに対応する「th2細胞」がそれぞれ存在し、どちらかが活性化すると、もう片方は抑制される関係性のため、免疫バランスが崩れて「Th2細胞」が過剰になるとアレルギー症状が起こります。