肩関節周囲炎(五十肩)への対処と鍼灸治療の効果

眠っている時も肩が痛む、腕が挙がらない「肩関節周囲炎(五十肩)」

五十肩は肩関節内の炎症で痛みが現れるため、炎症の状態により症状や対処方法が異なります。

主な治療方法は安静(保存療法)ですが、鍼灸を併用することで神経の異常興奮を抑え、筋緊張緩和を緩和してスムーズな回復につながるためおすすめです。

今回はそんな五十肩について綴らせていただきました。

五十肩とは

肩関節周囲炎のことを五十肩といいます

あまりの痛さに動かせなくなることから「凍結肩」とも呼ばれます。

肩関節周囲炎という名称ですが、炎症が起こるのは関節包という組織です。

関節包の炎症による痛み、庇うことでの筋肉緊張が血流悪化や神経の異常興奮につながり、痛みと可動域制限を強めてしまいます。

そのため、炎症が落ち着くのを待ちながら、筋肉や関節が硬くなりすぎない程度の運動を行うことが大切です。

関節包の問題はレントゲンには写りませんのでMRIやエコーで捉える必要があります。

五十肩の名前の由来

江戸時代の俗語集「俚言集覧(りげんしゅうらん)」の一文

「凡、人五十歳ばかりの時、手腕、骨節痛むことあり、程過ぐれば薬せずして癒えるものなり、俗にこれを五十腕とも五十肩ともいう。また長命病という。」から五十肩の名称が来ています。

症状

肩の痛みと可動域制限です。

痛みは肩の違和感から徐々に増す場合もあれば、突然激しい痛みを感じるようになる場合もあります。

炎症での痛みを庇うことで筋肉が硬くなってしまい、関節包の炎症が落ち着いた後にも直ぐには可動域制限が治りません。

五十肩は、「炎症期」と「拘縮期」を経て回復していきますが、症状や対処法は異なり、それぞれの期間がどの位続くかは個人差があります。

炎症期

炎症を起こしているため激しく痛む時期です。

夜間睡眠時に痛くて眠れない方もいます。

この時期は痛みを堪えて肩動かすことで炎症が長期化してしまうため、炎症が落ち着くまでは激しく動かす訓練はおすすめできません。

しかし、全く動かさないと肩が拘縮して、拘縮期から快方に向かう際に時間を要してしまうため、無理のない範囲で動かす必要はあります。

拘縮期

炎症が落ち着いて関節が固くなる時期です。

安静時に痛むことはなくなりますが、関節が硬くなることで腕を挙げられず着替えができないなどの問題が発生します。

この時期は炎症が落ち着いているので、積極的に動かしていく必要があります。

しかし無理矢理に動かすと炎症が再燃するので注意が必要です。

水中は肩の重さが約1/9程に軽減されるため、痛みでリハビリ運動が捗らない方にはプールやお風呂内でのリハビリがおすすめです。

原因

原因は不明です。

打撲やムチ打ちなどの外傷、筋肉や靭帯の衰え(変性)、糖尿病などが関わっていると考えられます。

五十肩と同じような症状が現れる「腱板断裂」や「石灰沈着性腱板炎」という病気もあります

腱板断裂

肩関節を固定する棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋を「ローテーターカフ」と呼びます。

ローテーターカフは腱になって骨に付着するのですが、腱の部分に穴が空いている状態が腱板断裂です。

五十肩は肩に力を入れることができますが、腱板断裂は腕や肩に力が入りにくい特徴があります。

放っておくと断裂が大きくなることもあるため、放置せずに整形外科の受診をご検討ください。

石灰沈着性腱板炎

肩関節内にリン酸カルシウムが結晶化することで炎症が生じる病気です。

何となく痛い、腕が挙がらない、など五十肩同様の症状が現れます。

石灰沈着はレントゲンだけでも診断可能なため、整形外科を受診することで石灰沈着性腱板炎かどうか確認することができます。

治療

炎症期は安静と薬物療法、拘縮期は運動療法が中心になります。

炎症期は炎症を抑えて痛みを落ち着かせることを優先に、拘縮期に炎症が落ち着いて硬くなった関節をしっかりと動かしていきます。

状態によっては「ヒアルロン酸注射」や「外科的療法」も検討されます。

また、疼痛や筋緊張の緩和に鍼灸の併用もおすすめです。

ヒアルロン酸注射

ヒアルロン酸には消炎効果や軟骨保護効果、組織の柔軟性を増す効果があります。

注射は保険適応のため、ステロイド系よりも優先して五十肩の治療に使われる傾向がありますが、痛みを取るという点ではステロイド剤の方が効果があるようです。

外科的療法

関節鏡視下関節授動術という関節包を切る手術が行われます。

3.4箇所1センチ程の傷から関節鏡や道具をいれて、炎症部位の切除や関節包の伸展を行います。

鍼の効果

鍼灸には神経の興奮や筋緊張を緩和する効果を期待できます。

炎症周囲の筋肉は攣縮(れんしゅく)と短縮(たんしゅく)を起こすため、硬く短い状態の筋肉になっています。

また、関節包の炎症は神経にも影響を及ぼします。

五十肩との関わりが深い「肩甲上神経」の活動が低下すると肩を後ろに回す(外旋)動作低下につながり、興奮のしすぎるは力が抜けない状態になります。

肩の周囲には他にも神経が走行しているため、筋肉と神経の働きを整えることは、痛みをコントロールして関節の可動域を広げるために重要です。

鍼灸は炎症期と拘縮期に適正な施術をすることでスムーズな回復のお手伝いができるため、薬物療法や運動療法との併用をおすすめします。

肩の痛みが続く場合には

中高年に多くみられる肩関節周囲炎(五十肩)は早期発見と治療が大切です。

五十肩は関節包の炎症により痛みや可動域制限が現れるため、レントゲンではなくMRIやエコーで確認する必要があります。

そのため、五十肩を得意とされる整形外科の受診をご検討ください

また、薬物療法や運動療法以外の治療方法をお探しの場合には、鍼灸で神経や筋肉の緊張を緩和することでスムーズな回復につながるため、鍼灸の併用をおすすめします。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。

鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。

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