肩関節周囲炎(五十肩)への対処と鍼灸治療の効果
肩が痛み、腕が挙がらなくなる「肩関節周囲炎(五十肩)」
五十肩は関節内で炎症が起こっており、経過状況によって対処方法が異なります。
基本は保存療法になりますが、疼痛緩和や関節可動域の改善に、鍼灸の併用も効果的です。
今回は肩関節周囲炎への対処方法と鍼灸の効果についてご紹介いたします。
肩関節周囲炎(五十肩)とは
明確な外傷がないにもかかわらず生じる、肩の痛みと可動域制限を主徴とする症候群です。
腱板炎、肩峰下滑液包炎、関節包炎など複数の病態が含まれ、関節が硬くなり動きにくくなることから「凍結肩」とも呼ばれます。
関節包の炎症はレントゲンには写りにくく、必要に応じてエコーやMRIで確認されます。
炎症を悪化させない範囲で関節を動かし、拘縮を防ぐことが重要になります。
症状
肩関節の痛みと可動域制限です。
動作時の痛みが中心ですが、夜間や安静時に痛みを伴うこともあります。
経過は大きく三段階に分けられます。
- 炎症期(痙縮期):強い痛みが中心
- 拘縮期:痛みは軽減するが動きが固まる
- 回復期:徐々に可動域が戻る
自然経過で改善することもありますが、長期化する場合もあります。
原因
明確な原因は特定されていません。
加齢による組織変性、糖尿病、外傷歴などが関与していると考えられています。
肩全体に制限が及ぶ場合は肩関節周囲炎、特定角度でのみ痛む場合は他疾患の可能性も考慮されます。
なかでも、部分的な腱障害である棘上筋症候群(インピンジメント症候群)との鑑別は大切です。
棘上筋症候群については、『インピンジメント症候群への対処と鍼灸治療の考え方』で解説しています。
治療方法
保存療法が中心です。
炎症期は安静や消炎鎮痛薬を中心に疼痛を抑えます。
状態によってはヒアルロン酸注射や関節鏡視下授動術が検討されることもあります。
拘縮期以降は運動療法によって関節可動域の改善を図ります。
痛みを抑えながら、肩周囲の筋肉の緊張や血流を整えたい方には鍼灸もおすすめです。
鍼灸の効果
鍼灸には筋肉の緊張を緩和して、血流を整える作用があります。
肩関節の筋肉は、攣縮(れんしゅく)と短縮を起こし、筋肉は硬く短い状態になっています。
この状態は、肩周囲の血流を悪化させて神経を過敏にすることで、痛みの悪循環を生じます。
鍼灸で肩関節の緊張を緩和することは、筋肉の柔軟性を高めるだけでなく、血流を整えて回復を支え、神経の興奮を抑制することにもつながります。
施術を検討する目安
炎症が落ち着いた後も、
- 痛みが続いている
- 関節の可動域が改善しない
- 運動療法に併せたケアを検討している
このような場合には、鍼灸を検討する目安となります。
鍼灸を受ける際の注意点
鍼灸は比較的安全性の高い施術とされていますが、お身体に鍼を用いる以上、内出血やだるさなどの反応がみられることがあります。
副反応については『鍼灸の副反応(内出血やだるさ)について』もあわせてご確認ください。
こうした特徴を踏まえたうえで、症状や体調に応じて施術を検討していくことが大切になります。
当室の考え方
肩の痛みには、腱板断裂や石灰沈着性腱板炎など、整形外科での診断・治療を優先するものがあります。
そのため当室では、必要に応じて医療機関の受診をお願いしています。
一方で、受診後も痛みや可動域制限が続いている、という方も少なくありません。
私はそのような不調を「年齢だから仕方ない」と諦めてほしくありません。
鍼灸は万能ではありませんが、検査で捉えきれない身体の不調に対してアプローチすることが可能です。
だからこそ当室では、お身体全体を丁寧にみつめ、検査結果だけではわからない、一人ひとりの「つらさ」に向き合うことを何より大切にしています。
この記事の著者

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鍼灸師/港区白金で開業8年
安心してご相談いただける鍼灸院を目指し、日々施術に取り組んでおります。
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五十肩の名前の由来
「凡、人五十歳ばかりの時、手腕、骨節痛むことあり、程過ぐれば薬せずして癒えるものなり、俗にこれを五十腕とも五十肩ともいう。また長命病という。」
江戸時代の俗語集「俚言集覧(りげんしゅうらん)」の一文から五十肩の名称は来ています。