下痢症への対処と鍼灸治療の効果

お腹の冷えや食当たりなど、多くの方が経験される「下痢症」

5歳未満の小児では死亡原因2位になる危険な疾患です。

下痢症は細菌感染や自律神経の乱れなど様々な原因が挙げられ、原因の特定と対処が大切になります。

原因が生活習慣やストレスによる自律神経の乱れにある場合には、鍼灸で自律神経を整えることが下痢症の解消につながります

今回はそんな身近で危険な下痢症について綴らせていただきました。

下痢症とは

下痢症は「1日に3回以上(普段よりも回数が多い状態)の軟便または水様便の排泄」と定義されています。

理想的な便の水分は70%~80%含まれているバナナ状ですが、水分量が80%~90%と増えることで便は緩くなり、90%を超えると液状の水様便(下痢便)になります。

軟便や水様便を繰り返し、腹痛や腹部不快感を伴う状態を「下痢症」と呼び、下痢症は重度の脱水になってしまうことで生命にも関わります。

そもそも便が出来る過程とは

口から取り入れた食物は胃や小腸で身体に必要な栄養や水分を消化・吸収された後、大腸へと運ばれます。

大腸は主に水とミネラル(電解質)を吸収する働きをしており、大腸でゆっくりと水分が吸収されます。

そして、吸収されなかった物や腸璧から剥がれ落ちた粘膜が便となります。

便として固形化されて肛門へと運ばれるのですが、便の含む水分量によってバナナのようにスルッと出る便や、水分量が不足した兎糞のような硬い便(便秘時に現れることが多い)や水分量が多い水様便(下痢時に現れることが多い)と便の形が変わります。

そのため、腸の調子により便秘になることもあれば下痢にになることもあり、便秘と下痢を繰り返すケースもあります。

下痢症の種類と原因

下痢症は浸透圧性下痢、分泌性下痢、滲出性下痢、運動亢進性下痢の4つあり、それぞれ原因が異なります。

また、頻繁に下痢や便秘を繰り返す場合には「過敏性腸症候群」の可能性も考えられます。

『過敏性腸症候群に関する詳細はこちら

浸透圧性下痢

脂っこい物や人工甘味料の摂り過ぎが原因で起こります。

口から取り入れた食べ物には水分を引き付ける力(浸透圧)があり、浸透圧が高いと腸での水分吸収が不十分のまま排便されてしまうため下痢となります。

牛乳を飲むとおなかが緩くなる方(乳糖不耐症)もこちらに当てはまります。

分泌性下痢

細菌による毒素やホルモンバランスの悪化が原因になります。

腸は水分吸収の他にも腸液分泌をおこなっており、腸液の分泌量が増えることで便中の水分が増加します。

お腹を下す物を口にした記憶が無い場合や発熱などを伴う場合には感染症の疑いもあるため、病院の受診をご検討ください。

滲出性下痢

クローン病や潰瘍性大腸炎などでみられるタイプです。

腸に炎症が起こり炎症部位から血液成分などの液体が滲み出ることで便の水分量が増加します。

運動亢進性下痢

ストレスによる自律神経の乱れやバセドウ病などの疾患でもみられます。

腸の運き(蠕動運動)が活発になり過ぎることで、便が腸を通過する時間が短くなり、便から水分を十分に吸収できないことで下痢になります。

なぜ自律神経の乱れが下痢症に繋がるのか

腸から肛門へと便を運ぶ運動(蠕動運動)や食物の消化は自律神経によって調節されています。

蠕動運動と自律神経の関係

腸管は輪状筋と縦走筋の2つの筋肉で構成され、それらがリズミカルに収縮を繰り返す事で内容物(便)を移動させます。

この腸管の動きを蠕動運動といい、蠕動運動をコントロールするのが自律神経になります。

リラックスした際に優位になる副交感神経が蠕動運動や消化を亢進させ、興奮時に優位になる交感神経はその逆の働きを持ち、消化や蠕動運動を抑制する働きがあります。

『自律神経に関する詳細はこちら

下痢症に対する鍼灸の効果

自律神経やホルモンバランスの乱れが原因の場合に鍼灸が効果的です。

自律神経の乱れは、大腸運動の亢進や胃十二指腸の運動抑制を引き起こすため、腹痛や食欲減退にも繋がります。

鍼灸は過緊張状態に陥った自律神経の働きを和らげたり、βエンドルフィンの分泌を活性化させるリラクセーション効果を発揮することで症状を和らげられます。

また、腸管内の環境(血流等)が整うことで栄養を消化・吸収しやすいお身体にもなります。

そのため、生活週間の改善と併せておこなうことで、より高い改善効果を期待することが出来ます。

急性下痢症の時には

急な下痢は脱水症状(電解質異常)をきたす危険性が考えられます。

そのため、スポーツ飲料などで水分と電解質を補給することが大切になり、下痢止めなどの薬はお身体の状態により服用の良し悪しが異なるため注意が必要です。

脱水症状や体力の消耗が激しい場合には服用をお勧めしますが、本来下痢とは身体に有害な物を体外へ排出する生態防御反応の1つです。

感染症が原因の場合には下痢止め薬の使用で有害な物を腸内に留めてしまう恐れがあります。

激しい腹痛、発熱、血便などをともなう下痢の場合には、感染性下痢の疑いも考えられるので医療機関を受診してください。

感染症や隠れた疾患の可能性を除外した後に、生活リズムの改善や鍼灸を試され、お身体の改善へと繋げていただけますと幸いです。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。

鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。

当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。

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