慢性疲労症候群(CFS)への対処と鍼灸治療の効果
回復しない疲れ、倦怠感の続く「慢性疲労症候群」
慢性疲労症候群は、からだを一定に保つ力「恒常性」が落ちている状態です。
そのため、鍼灸で自律神経やホルモンバランスを整えることが効果的になります。
今回はそんな慢性疲労症候群について綴らせていただきました。
慢性疲労症候群とは
慢性疲労症候群(CFS:Chronic Fatigue Syndrome)は持続的な疲労感が特徴の病気です。
「6ヶ月以上継続ないし繰り返す疲労、他の慢性的な疾患・病態は除外する」状態をいいます。
1984年に米国ネバダ州で集団発生した疲労性疾患が発端で、長引く疲労感の他に筋肉痛も多くみられたため、正式名称は「慢性疲労症候群」または「筋痛性脳脊髄炎」(CFS/ME)と呼ばれています。
日本では慢性疲労症候群と呼びますが、米国では「疲れて働けないなど自己管理ができていない証拠」と思われる傾向があるためか、筋痛性脳脊髄炎と呼ばれています。
症状
労作後(ストレスから48時間)の強い倦怠感が主な症状です。
一般的な疲労感であれば休息することで回復しますが、疲労感が長期間継続する特徴があります。
倦怠感の他には、筋肉痛や関節痛、頭痛や睡眠障害など、さまざまな症状が挙げられます。
通常の疲労感や倦怠感との違いは、休息しても回復しないという特徴があり、悪化して「うつ病」になってしまうケースもあるので注意が必要です。
『うつ病の詳細はこちら』
そもそも疲労感とは
気力や活力が減少し、健康感を喪失した感覚をいいます。
疲労感は身体の機能低下や組織障害があった時に「炎症性サイトカイン」という物質が脳に働きかけることで無意識に活動量を低下させるアラーム機能です。
「炎症性サイトカイン」は発熱や疼痛、腫脹などの炎症が生じた際に細胞から分泌される物質で、体内に微生物が侵入した時や組織破壊が起きた時に免疫細胞を患部に集める役目や破壊された組織の掃除をする働きをしています。
そのため、疲労時は脳内で炎症が起きている状態ともいえます。
原因
原因は不明です。
ヒトパピローマウイルス(HHV-6)やエルシュタイン・バーウイルス(EBV)などのウイルス感染が疑われていますが詳細は不明です。
ウイルス説の他にも、脳内の免疫を担当する細胞(ミクログリア)の活性化、自律神経や内分泌系の異常、酸化ストレスなど、さまざまな系統に異常を確認されてはいますが、「ここが悪くなったため慢性疲労症候群です」といった特異的な指標や客観的な治療法は確立されていません。
そのため、症状はあるが原因が掴めない「不定愁訴」として扱われるケースもあります。
不定愁訴(ふていしゅうそ)とは
十分な検査や診察を行なっても、原因を医学的に説明できない状態をいいます。
重だるい、辛いなどの症状はあるが、検査で異常がないため「病気の手前状態」を指す際に使われます。
自律神経やホルモンバランスが乱れることで起こるケースが多く、疲肩こり腰痛、動悸や腹痛など、さまざまな症状が現れます。
『不定愁訴の詳細はこちら』
治療方法
慢性疲労症候群への治療方法は確立されておらず、原因や症状に合わせて薬物療法や運動療法、認知行動療法がおこなわれます。
その他、ヨガや鍼灸、マッサージなども推奨されています。
これら治療方法や対処方法の実践は大切ですが、最も重要なのことは十分な休息です。
特にエナジードリンクなどの摂取タイミングには注意が必要です。
薬物療法
症状の緩和を目的にビタミン剤や漢方薬、向精神薬などの使用します。
運動療法
無理のない範囲で運動を継続するで体力の向上を図ります。
認知行動療法
ストレス管理や症状への対処法を学ぶことで「生活の質」の向上を図ります。
エナジードリンクの摂取タイミング
疲労回復効果のある薬や飲料水は「ストレスを乗り切りたい時に使用するもの」で、体力をつけたい(体調を回復したい)時に使用するものではないため注意が必要です。
エナジードリンクは交感神経を活性化することで、ストレスに対応できる状態を作り出します。
疲れを抑制しているため「疲れが取れたような気になってしまう」点にはお気をつけください。
鍼灸の効果
鍼灸は、からだを一定に保つ力「恒常性(こうじょうせい)」を整える効果が期待できます。
恒常性は脳内(視床下部)で自律神経とホルモンをコントロールすることで、体温や血液量などを一定範囲に調整して外部環境に適応させる働きをいいます。
90度のサウナに入っても体温が90度にならないのは恒常性のおかげです。
鍼灸刺激は「自律神経」や「ホルモン」の信号を適切な状態に調節する効果があるため、長期ストレスにより低下してしまった恒常性を回復することで症状の改善が期待できます。
休息しても回復しない、疲れが取れない方は是非一度鍼灸施術を受けに来てください。
疲労感の続く場合には
日常生活に影響がある、6ヶ月以上疲労感が続く場合には「慢性疲労症候群」の可能性が考えられます。
慢性疲労症候群は「他の病気による疲労感ではない」ことを確認(除外)することが大切になります。
そのため、まずは内科の受診をご検討ください。
休息しても回復しない、疲れが取れない方には鍼灸もおすすめです。
この記事の著者

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「白金のかかりつけ鍼灸師」を目指し、日々鍼灸に励んでおります。
鍼灸は多くの症状改善に効果が期待できる一方で、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先する場合もあります。
当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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鍼灸師のコメント
ストレス時の身体の反応
ストレスを受ける→対応するために交感神経を活性化→副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリンの分泌促進という反応が起こり、からだの応答性が上がります。
また同時に、緊急時は痛みを庇っていられないため、副腎皮質からコルチゾル(ステロイド)の分泌が促進して炎症を抑制します。
一時的には何も問題ありませんが、長期間に渡り炎症状態を繰り返していると疲労困憊になりストレス対応できなくなることで、慢性疲労や鬱病になります。
回復には十分休息が重要になり、からだを休息状態に上手く切り替えられない方には鍼灸がおすすめです。