ドケルバン症候群への対処と鍼灸治療の効果
スマートフォンの使い過ぎによる手首の痛みから「スマホ腱鞘炎」という通称まで存在するドケルバン症候群。
今回は、そんなドケルバン症候群について綴らせていただきます。
目次
ドケルバン症候群とは
親指(手首)の使い過ぎにより親指を伸ばす筋肉の腱(短母指伸筋腱)や親指を広げる筋肉の腱(長母指外転筋腱)の表面が傷くと同時に、その2つの腱を覆う腱鞘(腱を止めるバンドのようなものです)も厚くなるため腱の通り道が狭くなってしまいます。
腱の通り道が狭くなるに伴い腱の動きが悪くなるので親指(手首)を使い辛くなり、腫れや痛みといった不快な症状が酷くなるといった悪循環に陥ってしまいます。
そのため、ドケルバン病は「狭窄性腱鞘炎」とも呼ばれております。
腫れや炎症が起きているため、手首の親指側に痛みを生じ、動かすことで更に痛みが強くなるのが特徴です。
主な原因
ドケルバン症候群の主な原因は下記の2つです。
親指の使い過ぎ
最も多い原因が親指の使い過ぎです。
スマートフォンの使い過ぎから、手先をよく使う職業の方やスポーツで痛められる方などが見受けられます。
ホルモンバランスの変化
女性にも多く見受けられるドケルバン症候群ですが、特に妊娠出産期や更年期の女性に多く生じる傾向があります。
月経周期にも関与し、日常生活を送るうえでも変動している「プロゲステロン」と言うホルモンが妊娠出産期には妊娠維持を行うために普段より多く分泌されます。
このホルモンは腱鞘を収縮させる特徴があります。
そのため、腱の滑りが悪くなる一因とも考えられています。
また、出産後に乳児を持ち上げる動作などで普段より手首を酷使することで痛めてしまう場合もございます。
ドケルバン症候群の確認方法
手首(特に親指の付け根側)が痛む際にフィンケルシュタインテストと言う検査を行いドケルバン症候群の疑いがあるかを確認します。
フィンケルシュタインテストと検索を行うと動画や写真付きでの解説を行って下さるサイトもございますが、関節リウマチなど他の疾患が原因で痛みが現れる場合もございますので、
- 正確に確認できているか
- 他に疑わしき原因が無いか
など気になる場合には病院での診察をお勧め致します。
フィンケルシュタインテスト
痛みがある方の手で親指を包み込むように他の4指で親指を握り込み、握り込んだ状態で手首を小指側に曲げていきます。
この動作を行って手首(親指側)に痛みが生じるようであれば、ドケルバン症候群の可能性が考えられます。
治療方法
主な治療方法は下記の3つです。
痛み以外に痺れや力が入らないと言った場合には、重症化や別の病気(リウマチや手根管症候群など)の可能性もございますので早めの病院受診をお勧め致します。
保存的治療
最初に行う治療方法且つメインの治療方法になります。
ドケルバン症候群の治療に伴い最も大切なことは「親指(手首)をあまり動かさずに休ませてあげること」です。
- 安静
- アイシング(急性期)や温浴(慢性期)
- 湿布や消炎鎮痛剤の投与
軽症は上記のような対応で痛みや腫れなどの症状改善が期待できます。
特に「安静」は最も重要且つ身近に行えるため手首を頻繁に動かす動作を控える、出産後間もないお母様は抱き上げる際に腕全体で抱え上げるなどの工夫を行い手首(親指)への負担を減らしてあげることも効果的です。
また、鍼灸治療を保存的治療と併用されることでスムーズな回復を期待する事ができます。
ステロイド注射
- 腫れや痛みが強い場合
- 日常の生活に支障が出る場合
- 湿布や消炎鎮痛剤の投与などを行っても改善が見られない場合
に腫れている腱鞘にステロイド注射を投与することで腫れや痛みを押さえます。
手術
- 力が入らない
- 再発を繰り返している
といった場合に腱を解放する手術が必要となる場合があります。
保存的治療に鍼灸併用をお勧め
腱鞘炎は鍼灸適応になります。
問題とされる指を含め、指を動かす際に関わる筋肉など腕(お身体)全体を診ていきます。
鍼灸治療を行うことで患部の炎症を抑えて循環を改善し、痛みを柔らげることで症状改善のお手伝いを目的として行います。
慢性の場合にはお灸を用いて温めることでスムーズな寛解へと繋がるケースもございます。
炎症を抑えて腫れが引くに従い指が動かし易い状態へと繋がっていきます。
最後に
ドケルバン症候群は使い過ぎにより痛めてしまうケースが最多です。
そのため、あまり手首や腕に負担を強いらないよう心掛けてお過ごし頂く事が何よりも重要になります。
また、安静にされると同時に鍼灸を受けられる事でスムーズな回復を期待する事ができます。
しかし、痛みの他に痺れや力が入らないといった場合には手根管症候群やリウマチといった他の原因が挙げられる場合もございます。
そのような場合には早めの病院受診をお勧め致します。
この記事の著者

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『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し日々鍼灸臨床に励んでおります。
鍼灸治療は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当治療室では、鍼灸適応の判別やご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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