更年期障害への対処と鍼灸治療の効果
更年期障害はホルモンの分泌量低下やストレスによる自律神経の乱れによって起こり、男性にも多く見受けられます。
ホルモンの分泌量低下はホルモン補充療法で補うしかありませんが、鍼灸では自律神経や血流を整えることでホルモン(指令)を適正に機能するよう体調を整えることができるため、ホルモン補充療法との併用がおすすめです。
今回はそんな更年期障害について綴らせていただきました。
更年期障害とは
ホルモンの分泌量が減ることで、ホットフラッシュや手足の冷え、気分の落ち込みなど心身双方に様々な症状が現れます。
男性の場合には「LOH症候群」とも呼ばれ、テストステロン(男性ホルモン)の分泌量が減ることなどが原因と考えられており、女性では閉経に伴いエストロゲン(女性ホルモン)の分泌量が変化するため閉経時期を挟んだ前後10年間が更年期と一般的にいわれております。
更年期に現れる症状の中で病気が原因ではないものを「更年期症状」と呼び、更年期症状の中で日常生活に支障を来すよう症状(状態)を「更年期障害」と呼びます。
原因
更年期障害の主な原因はホルモン分泌量の減少ですが、仕事や家庭環境など心理的・社会的要因が複雑に関与しているとされています。
ホルモンは血流に乗って身体各部に指令(信号)を伝える役目を担っているのですが、生活環境やストレスにより自律神経が乱れると血流が悪化してしまいます。
加齢に伴い、脳の中では「ホルモンの分泌を増やす」司令を出す一方で、体内を循環しているホルモンの量が一向に増えない状態が続くことで、ホルモンバランスの乱れや自律神経の乱れといった悪循環を生じ、心身に様々な不調が現れます。
そのため、お身体や環境などのストレスが大きく加わる4.50代の方に多くみられ、症状にも個人差があります。
ホルモンバランスが乱れる原因には、加齢やストレスの他にも、子宮内膜症、卵巣嚢腫といった婦人科系の疾患や悪性腫瘍が原因の場合もあるため、まずは病院で問診や血中ホルモン濃度の測定をされることで他疾患の可能性を排除されることをお勧めいたします。
症状
症状は「精神的な症状」と「身体的な症状」のどちらもあり、同時に現れるケースもあります。
精神的な症状
- 気分の落ち込み、意欲の低下
- イライラ、不安感、
- 不眠、食欲不振
などの精神状態や「気持ちの上がり下がりが激しい」といったケースもあります。
身体的な症状
- ホットフラッシュ(のぼせ)
- 手足の冷え、全身倦怠感
- 頭痛、肩こり、腰痛
他には、動機や息切れも多く見受けられます。
男性特有の症状
テストステロン(男性ホルモン)減少に伴う更年期障害では、性欲減退(ED)や尿失禁などの泌尿生殖系の症状も多く挙げられます。
治療方法
病院ではホルモン補充療法や向精神薬の処方がおこなわれ、漢方が処方されるケースもあります。
ホルモン補充療法(HRT)
テストステロンやエストロゲンを補う治療法です。
ホルモン補充療法はホットフラッシュや発汗と言った血管の拡張と放熱に関与する症状に対して特に効果的とされております。
使用するホルモン剤には飲み薬の他、貼り薬や塗り薬や注射などいくつかのタイプがあり、投与方法も様々です。
向精神薬
抗不安薬や催眠鎮静薬といった向精神薬が用いられるケースもあり、最近では副作用が少なくホットフラッシュなどの症状にも有効であるとされる「セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害するお薬(SNRI)」が処方されるケースも多いようです。
漢方薬
- 桂枝茯苓丸(下腹部痛)
- 当帰芍薬散(貧血や冷え性)
- 加味逍遥散(不眠や不安感)
が代表的で、女性周期に関連した症状の際に多く処方されます。
その他
生活習慣の改善や病院でのカウンセリング、自律訓練法などをおこなうケースもあります。
また、各症状の緩和やお身体の状態を整えることに効果的な鍼灸治療もおすすめです。
鍼灸が効果的な理由
鍼灸は肩こり腰痛や頭痛といった各症状の改善・緩和の他、自律神経や血流を整えることでホルモンバランスを安定させる効果が期待できます。
筋緊張の緩和や皮膚への刺激は視床下部(脳)に影響を与えてホルモンの分泌バランスを整えることにも関与し、血流が整うことでホルモンの巡りも改善します。
また、脳内のβエンドルフィンという神経ペプチド「脳内麻薬物質」の分泌を活性化させてリラクセーション効果を促すため、精神的な症状の緩和にも適しています。
更年期障害は症状の現れ方や強さに個人差があるため、お一人お一人に合わせた治療をおこなえる鍼灸はおすすめです。
更年期障害か気になされた際には
更年期障害はホルモンバランスの乱れによって起こり、肩こり腰痛などの身体的な症状から、不安感や不眠など精神的な症状まで様々です。
ホルモンバランスが乱れる原因には、加齢やストレスの他にも、子宮内膜症、卵巣嚢腫といった婦人科系の疾患や悪性腫瘍が原因の場合もあるため、まずは病院で問診や血中ホルモン濃度の測定をされることで他疾患の可能性を排除されることをお勧めいたします。
ホルモンバランスをはじめ、お身体の状態を整えて各症状の緩和や改善にも繋がるため、ホルモン補充療法などの治療時に鍼灸治療を併用されることをおすすめいたします。
この記事の著者

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『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。
鍼灸治療は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当治療室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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