高血圧症への対処と鍼灸治療の効果
血圧が高い状態を指す「高血圧症」
高血圧症は徐々に進行して心筋梗塞や脳卒中につながる恐れがます。
しかし食事や運動で改善するケースも多く、生活習慣の見直しや鍼灸で自律神経のバランスを整えることで悪化を防ぐことができます。
今回はそんな高血圧症について綴らせていただきました。
高血圧症とは
「最高血圧」と「最低血圧」のどちらか一方でも基準値を超えた状態を高血圧症と言います。
血圧の基準値は、
自宅での計測値
最高血圧が135mmHg未満/最低血圧が85mmHg未満
医療機関での計測値
最高血圧が140mmHg未満/最低血圧が90mmHg未満
となります。
病院よりもリラックスした状態で血圧計測できるため、自宅の方が低くなる傾向があります。
そもそも血圧とは
血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈(血管の壁)内側を押す力の事を言います。
心臓は血液を送り出すポンプの働きをしており、
- 心臓が収縮した時の血圧を「最高血圧または収縮期血圧」
- 心臓が弛緩(膨らんだ)時の血圧を「最低血圧または拡張期血圧」
と呼び、心臓の働き方により血圧も変化するため、体が活動している昼間に高く、夜間(睡眠時)に低くなる傾向があります。
また、精神的ストレスや肉体的ストレスも血圧を上昇させるため、何度か計測して平均的に基準値を超えるような場合には循環器科の受診をご検討ください。
症状
高血症状は自覚症状がないケースが多く、正常値よりもかなり血圧が高くなった際に、肩こり、頭痛、眩暈などの症状が現れます。
高血圧の状態が慢性化すると「動脈硬化」へと繋がる恐れがあり、
- 脳梗塞や脳出血
- 心筋梗塞
- 慢性的な腎臓病
といった重大な病気になりかねません。
そのため、定期的な血圧測定がとても大切になります。
原因
血管抵抗の上昇、血流量の増加、動脈硬化が主な原因になります。
これらは、生活習慣やストレスによる自律神経の乱れと密接に関係しているため、生活環境を見直すことがとても効果的です。
血管抵抗の上昇
動脈内の壁(中膜)にある平滑筋が緊張することで血管抵抗が上昇するため血圧が上がります。
血管拡張剤の服用で血圧をコントロールするタイプの高血圧です。
血管平滑筋は自律神経が支配しているため、自律神経の乱れが関与する高血圧の原因でもあります。
血流量の増加
身体を循環する血液の量が増加することで、血管を内側から押す力が増して血圧が上昇します。
利尿剤を服用して体内の水分量をコントロールするタイプの高血圧です。
塩分過多やカリウム不足など、食生活とも関係しています。
動脈硬化による上昇
高齢化に伴い動脈硬化が進むことで、血管抵抗が上昇します。
交感神経の興奮を抑える「β遮断薬」を服用して心臓の働きをコントロールするタイプです。
高齢化の他に、継続的な強いストレスも交感神経を興奮させるため悪化につながります。
その他、病気によるもの
腎臓の病気による「腎性高血圧」、ホルモン異常による「内分泌性高血圧」、服用している薬の副反応などが考えられます。
改善や予防方法
高血圧症は食生活の改善や適切な運動・休息で改善するケースが多くあります。
しかし、「高カリウム血症」や「果糖が身体に適さない」といったケースの方もおり、間違った改善や予防法を取り入れては本末転倒になるため、病院での問診や血液検査(尿検査)で合併症の有無を調べてから、生活習慣の改善に取り組むことをおすすめします。
食生活の改善
塩分過多は、水分の摂取量を増やして塩分を薄めようと(浸透圧を調整)するため、血液量が増加して血圧が上昇します。
通常であれば余分な塩分(ナトリウム)は腎臓から排出されておりますが、野菜や果物からのカリウム摂取が不足すると、ナトリウムの排出が低下するため、血圧の上昇に繋がってしまいます。
塩分の1日の摂取量目安は男性8g、女性7g未満のため、塩分摂取量を調整して野菜や果物からカリウムを摂ることで、ナトリウムとカリウムのイオンバランスを整え、体内の水分を適正に保つ事がとても大切になります。
また、お肉に含まれる飽和脂肪酸やコレステロールの摂り過ぎは高血圧や動脈硬化へ繋がりますが、お魚に含まれる不飽和脂肪酸は動脈硬化の予防に効果があるといわれており、お肉中心の食生活の場合にはお魚中心へと移行されることも効果的です。
適度な運動と休息
ストレスは心拍数を早め、血管を収縮させることで、緊急事態に備えた状態へと身体を変化させます。
継続的なストレスは常に緊張状態のリラックスできない身体になってしまうため、適度な運動を取り入れられることをおすすめします。
運動はストレスの緩和や血行改善の他に体重減少も期待でき、体重と血液量は比例関係のため心臓への負担軽減も期待できます。
また、生活習慣の見直しに併せ、鍼灸を試されることもおすすめです。
鍼灸の効果
鍼灸は血行や自律神経の乱れを整えることに優れています。
高血圧症の方は自律神経が乱れることで生じる睡眠障害(睡眠不足)に悩まされている方が多くいます。
慢性的な睡眠不足は副交感神経が疲弊して血圧を下げる機能を弱めるため、睡眠時間が「6時間の方」と「5時間の方」を経過観察した結果、睡眠時間が短いと高血圧を悪化させる確率が37%上昇してしまうことも明らかになりました。
そのため、自律神経を整えることは一時的に血圧を下げられるだけでなく、血圧上昇の予防にもなります。
『自律神経に関する詳細はこちら』
実際に高血圧の方に鍼灸刺激を行った結果、
- 四肢末端の循環改善や自律神経機能を調節することで血圧の低下がみられた
- 腰痛などの関節痛を主訴とした治療で高血圧の方の血圧の低下がみられた
との報告も得られております。
しかし、一度の施術で長期間持続して血圧が一定になる訳ではないため、生活習慣の見直しに併せて取り入れられることをおすすめいたします。
血圧が高めの場合には
高血圧症は症状がない場合が多く、発見が遅れることで動脈硬化へと繋がってしまう恐れもあります。
しかし高血圧は生活習慣の見直しで改善するケースも多いので、血圧計を見つけた際には計測して頻繁に基準値を上回るようであれば循環器科の受診をご検討ください。
また、生活習慣の改善を図られる際には、ストレス緩和やお身体の恒常性を引き出す鍼灸の併用をおすすめします。
この記事の著者

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「白金のかかりつけ鍼灸院」を目指し、日々鍼灸施術に励んでおります。
鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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