機能性ディスペプシア(FD)への対処と鍼灸治療の効果
胃の不快感や痛みがあるのに明確な原因が見当たらない「機能性ディスペプシア(FD)」
機能性ディスペプシアは自律神経の乱れで悪化するため、生活習慣の見直しが大切になります。
また、鍼灸を行うことで自律神経が整い、胃痛や不快感の改善につながるためおすすめです。
今回はそんな機能性ディスペプシアについて綴らせていただきました。
機能性ディスペプシアとは
機能性ディスペプシア(FD:Functional Dyspepsia)は検査をしても異常や器質的原因がみられない胃腸症状のことです。
器質的原因とは潰瘍や腫瘍などの組織病変がある場合を指し、胃の組織(細胞)に異変がみられない機能性ディスペプシアは、何処が悪いのか検討がつかない状態になります。
命に関わる病気ではありませんが、胃痛や不快感が起こることで生活の質低下につながります。
胃痛や膨満感などは、よくある症状なだけに我慢して自然に治るのを待つもケースも多く、医療機関を受診していない人も多くいます。
機能性ディスペプシアの診断には上部消化管の内視鏡検査が必要になり、粘膜状態を観察する際にピロリ菌の有無も調べることもできるため、不快感を感じた場合には消化器内科の受診をご検討ください。
症状
胃の痛み、膨満感、胃もたれが代表的です。
食後愁訴症候群と心窩部痛症候群が週に何度か繰り返される特徴があります。
食後愁訴症候群
胃の運動機能低下に伴い、早期膨満感や食後の胃もたれが現れます。
胃は普段、萎んだ風船状態ですが食事のタイミングで上部が膨らむことで、食べ物を受け入れるスペースを広くして取り込みやすくしています。
また、十分なスペースを確保することで胃酸と混ざり合って殺菌と消化が進むため、速やかに十二指腸へ送ることができます。
機能性ディスペプシアでは食後に膨らまない(適応性弛緩障害)ため、十二指腸への排出が遅れるので膨満感や胃もたれが起こります。
心窩部痛症候群
機能性ディスペプシアの胃は、刺激に敏感な状態のため胃酸による刺激を痛みと認識してしまいます。
そのため、胃の痛み(心窩部痛)や心窩部の灼熱感が現れます。
原因
原因は完全には解明されていません。
緊張やストレスで自律神経が乱れることが、胃の働きと深く関わっていると考えられています。
自律神経は内臓をコントロールする神経で、活動時に優位になる「交感神経」とリラックス時に優位になる「副交感神経」で形成されます。
胃腸はリラックス時の副交感神経が優位の時に消化活動を行いますが、機能性ディスペプシアの患者さんには副交感神経が弱い(優位になりにくい)傾向がみられます。
これは常にストレスに晒されていることで「交感神経」が優位の緊張状態から抜け出せず、内臓の動きが悪くなっている状態です。
そのため、生活習慣の見直しや鍼灸など自律神経を整えることが重要になります。
『自律神経に関する詳細はこちら』
治療方法
薬物療法と生活習慣の見直しが中心になります。
胃の運動機能改善薬(アコチアミド)や胃食道逆流症が見られる場合には胃酸分泌抑制薬(H2ブロッカー)などを服用していきます。
生活習慣の見直しは、偏った食事内容やドカ食いを控えて胃酸の分泌量や胃の運動を整えます。
当たり前のことではありますが、ゆっくり良く噛んで食事されることが重要になります。
また、ストレス緩和や自律神経の乱れを整えるには鍼灸もおすすめです。
鍼灸の効果
鍼灸は自律神経を整えることに優れています。
機能性ディスペプシアの方は交感神経が優位の方(ストレスフルな方)が多く、心配事や不安を解消すると症状が良くなる傾向がみられます。
胃の運動機能や胃酸の分泌は自律神経によって調節されているため、ストレスを緩和して自律神経を整えることがとても効果的です。
「定期的にお腹の張りや痛みを感じる方」や「すぐに再発してしまう方」は鍼灸をご検討ください。
胃の不快感や痛みを感じたら
機能性ディスペプシアは多くの方が経験する可能性のある一般的な消化器系の問題です。
内視鏡の検査を行い、他の病気の可能性を排除して機能性ディスペプシアとわかるため、まずは消化器内科の受診をご検討ください。
機能性ディスペプシアは生活習慣の見直しや鍼灸で改善が見込めます。
「すぐに再発してしまう方」や「薬物療法以外をお探しの方」は鍼灸がおすすめです。
この記事の著者
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『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。
鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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