耳鳴りへの対処と鍼灸治療の効果
難聴と深い関りをもち、65歳以上の30%の方が感じていると言われている耳鳴り。
耳鳴りは症状を表す呼び名でもあり、これといった明確な治療法が挙げられておりません。
鍼灸では内耳循環の改善などをおこない、聴こえやすい状態への身体づくりが期待できます。
しかし、内耳の有毛細胞や聴神経の変性や脱落といったことが原因の場合には効果を期待できません。
今回はそんな耳鳴りについて綴らせていただきました。
耳鳴り(じめい)とは
耳鳴りは症状を指す言葉のため、特定の病気ではございません。
症状としては、「ジー」というような機械音や「ヒュー」というような風切り音を感じるケースが多く、約15%の人が経験するといわれております。
また、難聴と深く関係があるとされており65歳以上では30%の方が苦痛な症状を感じているといわれております。
耳鳴りは大きく2種類
耳鳴りの種類は、
- ご本人だけが耳鳴りを感じる「自覚的耳鳴り」
- 第三者(側にいる方)にも聞こえる「他覚的耳鳴り」
の大きく2つに分けられます。
自覚的耳鳴り
耳鳴りで最も多く見受けられるタイプになります。
通常、耳鳴りと言えばこちらの「自覚的耳鳴り」を指します。
難聴との関連、騒音など様々な要因で起こります。
他覚的耳鳴
第三者にも音を聞き取ることができる耳鳴りです。
「血管性耳鳴り」と「筋性耳鳴り」の
2つのタイプが挙げられますが、非常に稀な耳鳴りとされております。
血管性耳鳴り(拍動性耳鳴)
耳周囲の血管から「ドクンドクン」や「ザー」と音が聞こえる耳鳴りです。
血管奇形や血流の乱れが原因とされ、高血圧や動脈硬化でも生じるとされております。
グロムス腫瘍という小さな腫瘍を通る血流が原因の場合もあります。
筋性耳鳴り
耳周囲の筋肉が収縮することで「カチカチ」というようなクリック音が聞こえる耳鳴りです。
口(噛み締め)の筋肉や中耳(耳の奥)にある小さな筋肉が痙攣して音が生じます。
そのため、血管の拍動などと一致しないのが特徴です。
原因は不明とされておりますが、腫瘍や多発性硬化症に起因するのでは無いかと考えられております。
耳鳴りの原因
原因には、難聴が深く関わっていると考えられております。
聴こえ辛い状態が続くことで体は、
- 耳の奥で音を脳へ伝える変換機の役割を果たす「蝸牛」から脳へ伝える電気信号を増幅させる
- 蝸牛からの電気信号を処理する脳(聴覚野)が過剰反応する
といった補正をおこなうことで、聞こえ辛さを補います。
その結果、無音やとても小さな音にも対しても過敏に反応してしまうと考えられております。
「蝸牛」や「脳の過剰反応」が生じてしまう原因として代表的なものに下記5つが挙げられます。
原因1:加齢
最も多いとされる原因です。
加齢に伴い症状が増悪していくケースも多く見受けられます。
原因2:騒音
騒音により蝸牛がダメージを受けてしまうケースです。
大きな騒音を感じる場所では耳栓をする、耳を休ませる時間を作るといったケアが重要になります。
原因3:ストレス
身体的ストレスまたは精神的ストレスにより耳鳴りが増強されるケースがあります。
耳鳴りに意識を向けてしまうことで、音に対して過敏に反応してしまうといった悪循環に陥ってしまいます。
原因4:血流障害
上記のストレスとも関係があり、ストレスや自律神経の乱れと相まって血流障害が生じることで耳鳴りが悪化してしまうケースがあります。
原因5:病気などによるもの
耳鳴りの症状が現れる疾患として下記のような疾患が考えられます。
突発性難聴
突然、耳の聞こえが悪くなる疾患です。
早期の治療が重要になります。
メニエール病
激しい眩暈や耳鳴り・難聴を伴う疾患です。
中耳炎
鼓膜の奥で炎症を生じているものです。
聴神経腫
耳の神経に生じることのある良性腫瘍です。
腫瘍の大きさに伴いし、症状が変化する傾向があります。
薬の副作用
用法容量を守り服用されている限り心配は不要ですが、一部のお薬(臓器に影響を与えるもの)により難聴や耳鳴りを生じるケースもありますので、気になる際には主治医または薬剤師に一度ご確認されることをお勧めいたします。
治療方法
耳鳴りは完治が難しい症状の1つです。
現在、決定的な治療法はなく、様々な治療法が試みられています。
まずは耳鳴りの原因を突き止め、原因に適した対応を取られることが重要になります。
主な治療方法として下記の方法が挙げられます。
薬物療法
ビタミン剤や血流改善剤、リドカイン(麻酔薬)などを服用して経過を診ていく方法です。
内耳循環を改善し、聴こえやすい状態を目指していきます。
補聴器療法
難聴と耳鳴りの症状が強く現れている場合に選択されることの多い治療法です。
補聴器で脳に伝わる音を大きくすることで、脳が音を聞き取る感度を上げる必要性を減らす方法になります。
長期的に使用することで耳鳴りが生じる悪循環を和らげていきます。
生活習慣の見直し
睡眠、運動、食事を整えることで、ストレスの解消や耐性を整え、自律神経や血流改善をはかります。
そのため、
- スポーツ
- サウナや読書
- 鍼灸やマッサージ
など、ご自身に適したストレス解消法を見つけておくことも大切です。
鍼灸が効果的な耳鳴り
鍼灸に効果(改善)が期待できる耳鳴りとして、
- 血液循環の悪化
- 筋肉の凝り固まり
といった事が原因として考えられる耳鳴りに対して効果(改善)を期待することが出来ます。
鍼灸を施すことで手足(四肢末端)の血流循環に加え、頭蓋内の血流改善も期待できます。
全身の血液循環が改善することで内臓の調子も整い自律神経やホルモンバランスも整ってきます。
また、皮膚刺激を通じて脳(視床下部)に影響を与えホルモン分泌のバランスを整える作用や「気持ちいい」という刺激により脳内のβエンドルフィンと言った神経ペプチド「脳内麻薬物質」の分泌を活性化させ筋緊張の解消やリラクゼーション効果も期待できます。
そのため、生活習慣の改善や薬剤療法をはじめとした、血流循環の改善に鍼灸治療はとても相性が良いと考えられます。
しかし、内耳有毛細胞や超神経の脱落や変性といったことが原因で生じている場合には、あまり効果を期待できません。
最後に
耳鳴りとは病名ではなく症状を指します。
耳鳴りや難聴の他に「眩暈」や「ふらつき」といったような別の症状が見られる際には、メニエール病などの疾患が原因となっているケースもありますので、お早めに病院やクリニックを受診されることをお勧め致します。
病気の可能性を排除した後に、生活習慣の改善や鍼灸施術を受けられることで症状が寛解に向かわれますと幸いです。
この記事の著者

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『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。
鍼灸治療は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当治療室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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鍼灸師のコメント
音を聞き取る仕組みについて
音は耳の穴を通り鼓膜を振動させます。
次に耳小骨という鼓膜の奥に存在する小さな骨により音(振動)を増幅させて、更に奥に存在する蝸牛(かぎゅう)へと音を伝えます。
蝸牛(かぎゅう)で音の振動を電気信号に変えて脳へ伝わることで音として認識されます。