痔疾(じしつ)への対処と鍼灸治療の効果

肛門周囲に出血や腫れが生じる「痔疾(じしつ)」

痔疾は排便異常や血行不良から生じるため、生活習慣の見直しが大切になります。

鍼灸も自律神経や血流を改善することで排便機能を整え、早期回復や予防につながるため、生活習慣の見直しと併用されることをおすすめします。

今回はそんな痔疾について綴らせていただきました。

痔疾(じしつ)とは

排便痛や出血など、お尻に関する症状を総称して「痔疾」と呼びます。

肛門は傷つき易い構造をしているため、便の状態や排便時の力の入れ方により肛門への負担が増えると痔疾になります。

男女差は無く、3人に1人は痔に悩んでいると言われ、適切な治療を受けず放置すると症状は重くなるため注意が必要です。

便秘や下痢、免疫力の低下で起こるため、食事や運動といった生活習慣の見直しが大切なります。

痔疾の種類

痔核(いぼ痔)、裂肛(きれ痔)、痔瘻(あな痔)の3種類に分けられ、症状や原因が異なります。

痔核(いぼ痔)

肛門にイボ状の腫れができた状態で、痔疾の中で最も多くの方が悩まされる種類です。

肛門出口付近にある静脈叢(毛細血管が密な部位)が詰まることで鬱血(しこり)が出来てしまった状態を「痔核」と呼びます。

静脈叢の血液は通常であれば門脈(肝臓へと流れる静脈)へ進んでいきますが、便秘や下痢、長時間の同一姿勢など血流が悪化すると鬱血してしまいます。

この鬱血して出来た「痔核」は形成される部分(歯状線)より、内側にできる「内痔核」と外側にできる「外痔核」に分かれます。

内痔核

痛みはないが出血がある痔で、一般的に「いぼ痔」は内痔核のことを示します。

大腸粘膜は痛感がなく柔らかいため出血しやすいので、排便時に痛みがあったとしてもたまたま痛かったのかと気づかないケースも多い特徴があります。

外痔核

痛みはあるが出血が無い、内痔核と反対の症状が現れます。

肛門外側は粘膜ではなく知覚神経が存在するため痛みを感じ、出血するケースは少ないのが特徴です。

一般的に1週間〜1ヶ月程度で症状は落ち着きます。

裂肛(切れ痔)

硬くなった便を排泄する際に肛門が切れることで生じます。

便秘が引き金になることから女性に多く、排便時の鮮血や痛みが主な症状になります。

痛みを避けるために排便回数を抑制すると、便がより強固になり排泄時に傷を広げてしまうため、排便回数の抑制よりも軟便になるよう水分量や食物繊維の摂取が大切になります。

出血はトイレットペーパーに多少付着する程度ですが傷口に感染が加わると肛門潰瘍の原因になり、潰瘍の過程によって「痔瘻」を引き起こすので注意が必要です。

痔瘻 (あな痔)

肛門管や肛門周囲に瘻孔(トンネル)が出来てしまった状態です。

直腸と肛門の境目には肛門陰窩と呼ばれるくぼみが6〜11個あり、免疫力が低下すると便に含まれる大腸菌などの細菌により炎症が起こります。

男性に多く、肛門周囲のしこり感や排便に関連ない痛みを感じ、炎症反応のため39度以上の高熱が出ることもあります。

化膿→痛み→排膿を繰り返して癌化するケースもあるので注意が必要です。

痔瘻は自然治癒が難しく手術療法を必要とするため、肛門科の受診をご検討ください。

治療方法

生活週間の見直しと軟骨などの薬物療法が中心になります。

重度の痔核や肛門狭窄がみられる裂肛の場合には、肛門拡張術などの外科的療法が行われる場合もあります。

命に関わることはありませんが放っておいても自然には治らない、治ったと思っても繰り返すこともあるので、
痔の慢性化や悪化は手術が必要になることもあるため、まずは肛門科の受診をまずは肛門科の受診をご検討ください。

生活習慣の見直しを行う際には、排便異常を整えるためにも鍼灸がおすすめです。

鍼灸の効果

鍼灸は自律神経を整えることで排便をスムーズにします。

痔疾の多くは便秘や下痢など、排便障害が引き金になります。

そのため、内臓をコントロールする自律神経を整えることは便秘症下痢症のどちらを改善するにも大切になります。※便秘下痢の詳細は各疾患名をクリック

また、血液循環を改善して全身(患部)の血流が整いうことでの鬱血緩和、知覚神経や血管運動神経の緊張緩和による痛みの軽減も期待できます。

「痔疾がなかなか改善しない方」や「すぐ再発してしまう方」は鍼灸をご検討ください。

肛門周囲に痛みを感じたら

痔疾と間違えやすい病気には大腸癌や大腸ポリープなど、多くの病気があります。

症状や状態によっては外科的療法も必要になるため、まずは肛門科の受診をご検討ください。

生活習慣の見直しや排便異常の回復から取り組まれる方は、鍼灸を併用こと早期回復や予防効果が期待できるためおすすめです。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。

鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。

当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。

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