乳腺炎への対処と鍼灸治療の効果
乳腺が炎症を起こし、痛みや熱感などの症状を呈する乳腺炎。
そんな乳腺炎は乳腺が詰まることで生じる「うっ滞性乳腺炎」と細菌感染が原因で生じる「化膿性乳腺炎」と原因により対処が異なります。
鍼灸では、乳腺が詰まることで生じる「うっ滞性乳腺炎」に効果を期待する事ができます。
今回はそんな乳腺炎について綴らせていただきました。
乳腺炎とは
乳房内の母乳を作る組織(乳腺)が炎症を起こした状態です。
症状
代表的な症状として、
- 乳房の腫れやしこり
- 痛みや熱感
- 皮膚の赤み
が挙げられます。
また、化膿性乳腺炎のような細菌感染が原因の場合には38度を超える高熱を生じる場合もあり、悪寒を感じることもあります。
そのため、高熱や激しい痛み(腫れ)を伴う場合には病院やクリニックの受診をおすすめ致します。
原因と対処法
乳腺が炎症を起こす原因として、
- 授乳期に乳汁が詰まることで生じる「うっ滞性乳腺炎」
- 細菌感染により生じる「化膿性乳腺炎」
の2つに分かれます。
うっ滞性乳腺炎
乳腺内に母乳が溜まることで乳房の腫れや痛みを生じます。
初産婦の方に多く見受けられ、分娩後1週間以内の発症が多い傾向があります。
そのため、
- 授乳間隔があいてしまった
- 母乳を飲む力が弱い
などの母乳が溜まりがちな場合に炎症が生じ易い傾向があります。
対処方法
- 乳房のマッサージや搾乳器を使用して母乳の出を良くしたり、母乳が溜まらないようにする
- 乳房を冷却して炎症を落ち着かせたり、乳汁の分泌を抑える
といった対処法に加えて、乳頭や乳輪を清潔に保ち「急性化膿性乳腺炎」にならないよう注意することも重要です。
化膿性乳腺炎
乳頭や乳汁出口から細菌感染することで乳腺が炎症を起こします。
うっ滞性乳腺炎からの細菌感染で生じる場合もあり、分娩後2週間以後に多くみられる傾向があります。
腋窩(腋の下)やリンパ節まで痛みや腫れが広がることもあり、細菌感染のため悪寒や発熱を生じた場合には病院の受診が必要です。
対処法
- 授乳を中止して乳房を冷やします。
- 抗菌薬の使用や膿の塊が生じている場合には切開するケースもあります。
母乳の中止など母子ともに好ましくない状況へ進行しないためにも、軽度なうちに病院やクリニックを受診され適切な治療を受けられることをお勧め致します。
予防方法
代表的な予防法として下記3つが挙げられます。
乳房マッサージ
最も代表的な予防(対処)法になります。
乳房マッサージを行うことで母乳の分泌を高め、赤ちゃんが飲みやすくなり飲み残しの減少に繋がります。
しかし、乳腺炎が既に疑われている場合には、悪化させてしまう要因にもなりますので自己判断で行わずに医師に相談して下さい。
授乳回数や授乳姿勢の意識
乳腺の太さ(細さ)は生まれつき決まっております。
そのため乳腺が細いと言われた方は、
- 授乳間隔をあけすぎない(3時間以上はあけない)
- 赤ちゃんを縦抱っこや横抱っこなど姿勢を変換して偏りのない授乳を心がける
などに加えて、前屈み姿勢を控える(減らす)、小さいサイズの下着は控えるといった心がけが大切になります。
生活習慣の見直し
母乳は血液から作られます。
- 寝不足やストレスによる血行の悪化
- 脂質(コレステロール値)が高いものを中心の食生活
は血液がドロドロになり乳腺が詰まりやすくなる原因にもなりかねません。
そのため、野菜や海藻類などバランスよく取り入れた食事やストレスの解消はとても大切になります。
生活習慣や体質改善には鍼灸治療がお勧めです。
鍼灸治療
母乳が血液循環に深く関わりがあるため、鍼灸治療を行うことで血液循環改善(体質改善)の期待が持てます。
鍼灸治療を行うことで血行や自律神経が整い、
- 原因の1つともされるストレスの緩和
- 産後の疲労による免疫力の低下を防ぎ、細菌感染を予防する
- 全身(乳腺)の血液循環を良くすることで母乳の出を良くする
といった様々な予防効果を期待できます。
まとめ
乳腺が炎症を起こし、痛みや熱感などの症状を呈する乳腺炎。
乳腺炎は乳腺が詰まることで生じる「うっ滞性乳腺炎」と細菌感染が原因で生じる「化膿性乳腺炎」と原因により対処が異なります。
鍼灸では乳腺が詰まることで生じる「うっ滞性乳腺炎」に効果を期待する事ができる一方、化膿性乳腺炎は細菌感染のため鍼灸治療適応外となります。
そのため、悪寒発熱や症状の憎悪が見受けられる場合には1度病院やクリニックの受診をお勧め致します。
この記事の著者

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『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。
鍼灸治療は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当治療室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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