閉塞性動脈硬化症(ASO)への対処と鍼灸治療の考え方

下半身の血管循環が低下することで起こる「閉塞性動脈硬化症(ASO)」

閉塞性動脈硬化症の初期には、生活習慣の改善や運動療法を中心に治療が行われます。

また、鍼灸を併用することで下肢の循環改善を補助し、症状緩和の一助になります

今回は閉塞性動脈硬化症への対処方法と鍼灸の考え方についてご紹介いたします。

閉塞性動脈硬化症とは

ASOは動脈硬化によって下半身への血流が低下し、足先の冷えや痛みを生じる疾患です

50〜70歳代の男性に多くみられ、生活習慣病の増加とともに患者数も増加傾向にあります。

また、動脈硬化症は心筋梗塞や脳卒中の発症リスクにも関係するため、注意が必要な疾患です。

そもそも動脈硬化とは

加齢や生活習慣の影響により、血管内にコレステロールなどが蓄積し、血管が狭く硬くなる状態を動脈硬化といいます。

血管の狭窄や閉塞は全身で起こる可能性があり、脳梗塞や心筋梗塞など重篤な疾患の原因となることから「サイレントキラー」とも呼ばれています。

高齢化が進む現代日本において、特に注意すべき疾患の1つです。

症状

閉塞性動脈硬化症は、フォンテーヌ分類により重症度が4段階に分けられます

1度:下肢の冷え感

初期症状として足先の冷えや歩行時の違和感が現れます。

下肢動脈の狭窄や閉塞により、末梢循環障害が起こり、冷え性と区別がつきにくい場合もあります。

2度:間欠性跛行

歩行時に筋肉への血流量が不足し、一定距離を歩くと痛みやだるさが出て休憩を必要とします。

3度:自発痛

さらに進行すると、安静時にも血流不足が生じ、強い痛みが現れるようになります。

4度:足部の壊死・壊疽

重症化すると、足部の壊死や壊疽に至り、最悪の場合には切断が必要になることもあります。

原因

主な原因は生活習慣と喫煙です

生活習慣

食の欧米化により、LDL(悪玉)コレステロールが血管の内壁に蓄積しやすくなります。

蓄積したコレステロールは免疫細胞により処理されますが、その残骸がプラーク(塊)となり、血管を狭くする原因になります。

また、運動不足やストレス、加齢に伴う高血圧も動脈硬化の進行に関与します。

喫煙

喫煙量と重症度には関連性がみられます。

喫煙は血管収縮や高血圧を招き、LDLコレステロールの沈着を促進するため、動脈硬化を著しく進行させます。

治療方法

まずはABI検査(上肢と下肢の血圧比率)により、下肢血流障害の有無を評価します。

フォンテーヌ分類1〜2度の場合は運動療法や鍼灸が、3〜4度では外科的治療が優先されます

薬物療法

抗血小板薬や末梢血管拡張薬を用い、血流改善を図ります。

運動療法

歩行訓練により側副血行路の発達を促します。

特に、休憩しながらの歩行(間欠性跛行)がみられる方では重要な治療法です。

生活習慣の改善

禁煙、食事改善、体重管理が不可欠です。

青魚に含まれるEPA・DHAは血栓予防や脂質改善に有用とされています。

鍼灸の効果

鍼灸には全身の血流を促進する作用があり、下肢循環の改善が期待されます

下肢の冷えや違和感、歩行時の不快感の軽減を目的として、補助的に用いられることがあります。

報告例では、定期的な鍼灸施術により歩行時の下肢冷感や閉塞感が軽減したケースも示されています。

また動物実験では、血管新生に関与する因子(VEGF)の産生増加が確認されていますが、人体における明確な血管新生効果は現時点では十分に確立されていません。

そのため、鍼灸は動脈硬化そのものを改善する治療ではなく、薬物療法・運動療法・生活習慣改善を補助する位置づけとして併用することが重要です。

施術を検討する目安

閉塞性動脈硬化症は進行性疾患のため、まずは医療機関での診断と治療を優先することが大切です。

そのうえで、

  • 足先の冷えや違和感が続いている
  • 歩行時の重だるさや不快感が気になる
  • 薬物療法や運動療法を行っているが、体調面のつらさが残っている

といった比較的軽症の段階においては、血流環境を整えることを目的とした鍼灸が、日常生活の負担軽減に役立つ場合があります。

一方で、安静時痛や皮膚の変色、潰瘍などがみられる場合には、鍼灸の適応とはならず、専門的な医療機関での治療が必要になります。

症状の程度や経過に応じて、鍼灸が適しているかどうかを慎重に判断することが大切です。

当室の考え方

閉塞性動脈硬化症は、血管そのものの治療が必要となる疾患です。

当室では、動脈硬化を改善することを目的とした施術は行っておらず、医療機関での治療を前提としたうえで、冷えや違和感など日常生活の負担を軽減するための補助的な鍼灸を行っています。

医師からの診断内容や現在の症状を踏まえながら、鍼灸が適応となるかを確認したうえで施術をご提案しております。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
鍼灸は体の調整機能に働きかける療法ですが、
すべての症状に適しているわけではありません。

当室では、症状の背景や経過を確認したうえで鍼灸の適応を判断し、
その方にとって無理のない選択をご提案いたします。

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