花粉症への対処と鍼灸治療の効果
スギやブタクサで引き起こる「花粉症」
花粉症は粘膜で炎症反応が起きているため、対処療法で炎症を抑えることが中心になります。
鍼灸は自律神経を整えてアレルギー反応の起こりづらい状態にすることが期待できるため、薬以外の対処方法としておすすめです。
今回はそんな花粉症について綴らせていただきました。
花粉症とは
スギやブタクサの花粉によって引き起こされる免疫の過剰反応です。
1961年にアメリカ進駐軍が持ち込んだブタクサから始まり、1980年頃に戦後復興のために日本国内に植林されたスギが成木になり花粉が飛散したことから流行するようになりました。
日本では約60種類の植物が花粉症を引き起こし、そのうち7割がスギ花粉により引き起こされるため、春が花粉症シーズンと考えられております。
現在では4人に1人がスギ花粉に悩まされている国民病でもあります。
症状
くしゃみ、鼻水(サラサラとした水っぽい)、目の痒みが代表的な症状です。
他にも目の異物感や頭痛、倦怠感や鼻詰まりによる集中力の低下など、日常生活に影響を及ぼす症状がいくつもあります。
アレルギー反応全般を示すため、症状の強さや部位は人により異なります。
アレルギー反応
外敵から身を守る「免疫システム」が無害なものに対しても過剰に反応することです。
免疫システムは細菌に対応するもの、ウイルスと戦うもの、さまざまな働きの細胞で成り立っており、このバランスが乱れるとアレルギー(過剰)反応を引き起こします。
ハウスダストやペットの毛など、原因物質の異なる場合にもアレルギー反応は起こります。
そのため、花粉症の方は他にもアレルギー性疾患をお持ちの傾向がみられます。
原因
空気中に浮遊す花粉が粘膜に付着することで生じる炎症反応です。
花粉(アレルゲン)が粘膜に付着する→免疫システムが反応する→粘膜を洗い流すための反応が起こる(ヒスタミンなど炎症物質を放出)→血管を広げて涙や鼻水が過剰に分泌される(ヒスタミンが受容体と結合してアレルギー反応が起こる)という流れで炎症は起こります。
治療方法
症状を抑える対処療法が中心になります。
「抗アレルギー剤」はヒスタミンなど炎症物質の放出を防ぎ、「抗ヒスタミン剤」は最後のヒスタミンと受容体の結合を防ぐことで炎症を抑えます。
皮下や舌下からアレルゲンを微量ずつ体内に投与して慣らしていく「舌下減感作療法」も有名ですが、2.3年続けることで効果が定着するため時間がかかり、アレルゲンが1つで無い方(スギとブタクサの両方など)は1種類ずつ慣らしていく必要があり更に時間を要する点には注意が必要です。
また、レーザーにより鼻粘膜の面積を小さくする方法もありますが、粘膜は再生力があるので1〜3年で戻り、レーザーを繰り返すと粘膜が癌化しやすくなるためおすすめできません。
身体を守る免疫が過剰に反応しないように体調を整えることが大切になりますので、副作用の少ない鍼灸がおすすめできます。
鍼灸の効果
自律神経を整えて免疫細胞のアンバランスを防ぐことで過剰反応が起こりづらい状態になります。
免疫を担当する細胞は、「顆粒球(54-60%)」「リンパ球(35-41%)」「マクロファージ(5%)」の割合で構成され、身体の状態に合わせて適正な比率で免疫活動を営んでいます。
しかし、自律神経が乱れて「交感神経優位」が続くと顆粒球増加、「副交感神経優位」が続くとリンパ球増加につながりアレルギー反応が現れやすくなります。
『自律神経に関する詳細はこちら』
鍼灸はお身体に適した免疫系の状態を保つことで過剰な反応を防ぐため「体質を改善することで症状を抑えたい方」におすすめできます。
実際に花粉症の方へ鍼灸を用いた結果、
- 8割以上の症例で有意な変化を示し、鍼灸は有効な治療法の1つであると考えられる
- 血管拡張性の鼻閉に灸が有効であった
- 鍼灸を行った花粉症の対象郡は飛散の多い日も症状が安定しており、持続した治療を行うことで累積効果を認められた
などの症状改善や予防効果も報告されております。
花粉症はシーズン前の体調管理が大切です
花粉症は対処療法が中心になります。
「舌下減感作療法」も効果的ですが、効果発現までに年単位の時間がかかり、複数のアレルゲンが原因の場合には1種類ずつ慣らすため倍の期間を要してしまいます。
予防には「花粉を身体に取り込む量を減らす」「免疫が過剰に反応しないように体調を整える」ことが大切になりますので、自律神経を整えて免疫の過剰反応を抑える鍼灸がおすすめです。
この記事の著者
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『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。
鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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