過活動膀胱(OAB)への対処と鍼灸治療の効果

全国で1千万人以上の方が悩まされている「過活動膀胱」

過活動膀胱は強い尿意により頻尿や尿失禁を生じる病気です。

骨盤底筋や膀胱の訓練で改善するケースもあり、セルフケアに併せて鍼灸を取り入れることで自律神経が整い、蓄尿と排尿を円滑にする効果も期待できるためおすすめです。

今回はそんな過活動膀胱について綴らせていただきました。

過活動膀胱とは

過活動膀胱(OAB:Over active Bladder)は急な尿意でトイレに駆け込むようになる病気です。

「尿意切迫感を必須とした症状症候群であり、通常は頻尿と夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁を伴う場合もある」と定義されています。

患者数は全国で1千万人以上といわれておりますが、人に言いづらいこともあり、医療機関を受診するのはそのうちの20%程です。

泌尿器科を受診すべきかお悩みの際には「OABSS」という自己診断チェック表をインターネット上で確認されることをおすすめします。

そもそも正常な尿量(排尿)とは

膀胱は最大500mlの尿を溜めることができる臓器で、250〜300ml溜まると尿意を感じます。

1日4〜7回の排尿、1回の排尿量200〜400mlが健康的な指標です。

尿量は水分摂取量で大きく変化するため、体格や季節性を加味する必要があり、1日の水分摂取量は体重の約2%が目安になります。(50キロの方の場合1日約1ℓ)

症状

尿意切迫に伴う頻尿、尿失禁が主な症状です。

尿意切迫感

急に我慢の出来ない尿意が起こることをいいます。

自律神経の乱れや骨盤底筋の緩みにより、膀胱に尿が一定量溜まる前に尿意を感じてしまいます。

そのため、急な尿意による頻尿や尿失禁につながります。

頻尿

尿意を感じやすくなるため、トイレに行く回数が増えている状態です。

日中で8回以上、夜間睡眠時に1回以上、尿意で目覚めてしまう場合には頻尿といえます。

尿失禁

トイレまで我慢出来ずに漏れてしまうことで、尿失禁がみられる場合は比較的症状が重い状態です。

帰宅時にドアへ手をかけたタイミングで漏れてしまうケースも多く、「ドアノブ尿失禁」とも呼ぶこともあります。

説明しづらい方は「UUI」と医療機関でお伝えください。

原因

原因は不明です。

要因として、脳や脊髄、末梢神経障害などの「神経因性」と高血圧や骨盤底筋の低下などの「非神経因性」関与が考えられています。

神経因性

脳と膀胱をつなぐ神経回路に障害が起こることで「尿が溜まった」、「まだ出さないで」という信号に不具合が発生します。

脳梗塞や脳出血、脊髄損傷や多発性硬化症、末梢神経障害など、脳神経(中枢神経)や末梢神経のどちらでも起こり、全体の20%が神経因性です。

非神経因性

前立腺肥大症、肥満や高血圧、骨盤底筋の低下が考えられます。

前立腺肥大症

男性特有の臓器で生殖機能に関与します。

加齢などの原因により前立腺が肥大することで尿道を圧迫してしまう病気です。

『前立腺肥大症に関する詳細はこちら

肥満や高血圧

肥満、高血圧は血管を硬くして膀胱の血液循環悪化につながります。

また、脂肪細胞は炎症を引き起こす物質を分泌しているため、膀胱に炎症が起こることで過活動膀胱が起こりやすくなります。

骨盤底筋の低下

骨盤底筋は骨盤内で膀胱や直腸を支える働きがあるため、筋力低下は他の臓器が膀胱を圧迫する原因につながります。

治療方法

薬物療法が中心で、難治性の場合には神経変調療法やボトックスが行われます。

また、骨盤底筋トレーニングや膀胱訓練などのセルフケアも効果的です。

薬物療法

膀胱の過剰な収縮を防ぐ「抗コリン薬」、膀胱の筋肉を緩ませることで蓄尿機能を高める「β3作動薬」が中心になります。

蓄尿と排尿は自律神経でコントロールされていて、排尿時には副交感神経からアセチルコリンという神経伝達物質が分泌することで膀胱が縮み排尿を促し、蓄尿時には交感神経からノルアドレナリンが分泌されることで膀胱が緩むこと蓄尿量を増やしています。

この排尿を促進するアセチルコリンを抑えるのが「抗コリン薬」、アドレナリンを促すのが「β3作動薬」になります。

神経変調療法

膀胱や尿道を機能的にコントロールする末梢神経を電気や磁気で刺激して、骨盤底筋をトレーニングする方法です。

ボトックス

膀胱の神経に作用して膀胱収縮を抑える働きがあります。

骨盤底筋のトレーニング

骨盤底筋は骨盤内の底に広がり、臓器の重みを支えるハンモックのような働きをしています。

骨盤底筋の緩みは膀胱や直腸などの骨盤内臓器を支える力の低下につながり、尿道を締める(排尿を我慢する)力の低下にもつながります。

脱力状態から肛門や尿道を5秒間締める動作を1セットとして、1日5回以上取り組むことで鍛えることができます。

骨盤底筋のトレーニング中に腹筋が動いてしまっている場合には、上手く骨盤底筋を支えていないので注意してください。
「おなら」を我慢しているような時が骨盤底筋に力が入っている状態になります。

膀胱訓練

膀胱は伸び縮みする臓器のため、尿意を我慢することで膀胱容量をあげることができます。

しかし膀胱容量は急に増えるわけではなく、少しずつ慣れていくため3ヶ月程の期間を設けて取り組むことをおすすめします。

目標は排尿間隔2時間で1回の排尿量200〜300mlが目安です。

鍼灸師のコメント

骨盤底筋や膀胱訓練の際には

排尿量、排尿回数、尿失禁の有無、水分摂取量を記録すると客観的な指標になります。

また、トレーニングに併せて鍼灸を取り入れることで自律神経が整い、脳と膀胱のやり取りが円滑になるためおすすめです。

鍼灸の効果

蓄尿と排尿は自律神経でコントロールされています。

膀胱に尿が溜まって来たことを膀胱から脳へ伝達し、「トイレに行くまでは我慢」と脳から膀胱(尿道)に信号が行くことで我慢することができます。

排尿を促しているのは副交感神経のため、膀胱の活動が高まっている状態を招いているのは、副交感神経(骨盤神経の求心性繊維と遠心性線維)の活動が高くなっているためと考えられます。

そのため、鍼灸で自律神経を整えることで蓄尿と排尿のバランスが整うことにつながります。

実際に過活動膀胱の方へ鍼灸を行った結果、

  • 鍼灸治療対象群の82%に切迫性尿失禁および尿切迫感の改善がみられた。
  • 仙骨部へ鍼刺激は膀胱機能だけでなく尿道機能も含めた下部尿路機能にも影響を及ぼす可能性が示唆される。
  • 脊髄損傷者への鍼治療で4回終了時に61%の症例で尿失禁が減少し、鍼治療終了後1ヶ月を経過しても膀胱容量の増大が見られ持続性も示唆されている。
などの報告もあげられております。

急な尿意や尿失禁の場合には

過活動膀胱は適切な管理と治療が大切です。

まずは「OABSS」という自己診断チェック表を確認し、過活動膀胱の可能性が考えられる場合には泌尿器科の受診をご検討ください。

また、骨盤底筋や膀胱の訓練に併せて鍼灸を取り入れることで自律神経が整い、蓄尿と排尿のバランスが整うためおすすめです。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。

鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。

当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。

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