過活動膀胱(OAB)への対処と鍼灸治療の考え方

強い尿意により、頻尿や尿失禁が起こる「過活動膀胱(OAB)」

過活動膀胱は薬物療法が中心に行われ、骨盤底筋トレーニングなどが併用されることもあります。

こうした対処に併せて、鍼灸で自律神経の乱れにアプローチすることで、蓄尿と排尿のバランスを整える一助となるケースもあります

今回は過活動膀胱への対処方法と鍼灸の考え方についてご紹介いたします。

過活動膀胱とは

OABは、急に我慢しにくい尿意(尿意切迫感)を主症状とする症候群です

一般的には、頻尿・夜間頻尿・切迫性尿失禁を伴うことが多く、2002年に国際禁制学会で提唱された比較的新しい疾患概念です。

国内の患者数は1,000万人以上と推定されていますが、受診に至る方は一部に留まるとされています。

症状

主な症状は尿意切迫、頻尿、尿失禁です

尿意切迫感

突然強い尿意を感じ、我慢が難しくなる状態です。

膀胱に十分な尿が溜まる前に尿意を感じてしまうため、生活に支障をきたします。

頻尿

日中8回以上、または夜間に1回以上排尿のために目が覚める状態を指します。

夜間頻尿は転倒リスクの増加や睡眠の質低下につながる点で注意が必要です。

尿失禁

トイレまで我慢できずに漏れてしまう状態で、症状が進行しているケースに多くみられます。

原因

過活動膀胱の明確な原因は特定されていません

関与が考えられている要因として、以下が挙げられます。

神経因性要因

脳・脊髄・末梢神経の障害により、膀胱と脳の情報伝達がうまく働かなくなるケースです。

脳血管障害や神経疾患が背景にある場合もあります。

非神経因性要因

前立腺肥大症、肥満や高血圧による膀胱血流低下、骨盤底筋の筋力低下などが関与すると考えられています。

治療方法

過活動膀胱の治療は薬物療法が中心です

  • 抗コリン薬:膀胱の過剰な収縮を抑える
  • β3作動薬:胱の筋肉を緩ませることで蓄尿機能を高める

などの薬を服用して、膀胱に尿が溜まりやすい環境を作ります。

難治性の場合には、神経変調療法やボツリヌス毒素注入療法などが検討されることもあります。

セルフケア

骨盤底筋トレーニングと膀胱訓練は医療機関でも指導される基本的な対処法です。

骨盤底筋トレーニング

骨盤底筋は骨盤内の底に広がり、臓器の重みを支えるハンモックのような働きをしています。

骨盤底筋の緩みは膀胱や直腸などの骨盤内臓器を支える力の低下につながり、尿道を締める(排尿を我慢する)力の低下にもつながります。

脱力状態から肛門や尿道を5秒間締める動作を1セットとして、1日5回以上取り組むことで鍛えることができます。

おならを我慢しているような時が骨盤底筋に力が入っている状態になります。

膀胱訓練

膀胱は伸び縮みする臓器のため、尿意を我慢することで膀胱容量をあげることができます。

排尿間隔を2時間、1回の排尿量200〜300mlを1つの目安にして、少しずつ慣らしていく取り組みが大切になります。

鍼灸の効果

鍼灸には、自律神経や骨盤周囲の血流環境を整える作用があります

蓄尿と排尿は自律神経によってコントロールされており、過活動膀胱では、排尿を促す副交感神経の働きが過剰になっている可能性が指摘されています。

鍼灸刺激によって自律神経を整えることで、膀胱と脳の情報伝達を円滑になる働きが期待できます。

研究報告では、

  • 尿意切迫感や尿失禁の改善
  • 膀胱容量の増大
  • 効果の一定期間の持続

が示唆された例もあります。

施術を検討する目安

医療機関で、疾患による過活動膀胱ではことを確認したうえで、

  • 薬物療法やセルフケアと併用した対処を検討している
  • ストレスや冷え、季節変化で症状が悪化しやすい

このような場合には、鍼灸を検討する目安になります。

当室の考え方

当室では医療機関での対応に併せて、自律神経へのアプローチが有効と考えられる場合に鍼灸を行っています。

症状の背景や経過を丁寧に確認したうえで、鍼灸が適切かどうかを判断することを大切にしています。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
鍼灸は体の調整機能に働きかける療法ですが、
すべての症状に適しているわけではありません。

当室では、症状の背景や経過を確認したうえで鍼灸の適応を判断し、
その方にとって無理のない選択をご提案いたします。

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