前脛骨筋腱炎(ぜんけいこつきん)への対処と鍼灸治療の考え方
ランニングやジャンプ動作時に脛(すね)の前面が痛む「前脛骨筋腱炎」
前脛骨筋への過度な負荷により炎症が生じる状態で、まずは負荷の調整と安静が基本となります。
また、鍼灸で筋緊張を緩和して全身のバランスを整えることも回復の一助になります。
今回は前脛骨筋腱炎への対処方法と鍼灸の考え方についてご紹介します。
前脛骨筋腱炎とは
前脛骨筋やその腱に炎症が生じた状態です。
前脛骨筋は膝下から脛(すね)を通り、内踝(くるぶし)付近を経て足部に付着し、足首を持ち上げる働きを担っています。
歩行やランニング時には着地の衝撃をコントロールする役割もあり、繰り返しの負荷が続くと筋腱移行部や付着部に炎症が起こることがあります。
周囲の大きな筋肉に比べて負担が集中しやすく、疲労の蓄積に気づきにくい点も特徴です。
前脛骨筋には足三里という有名なツボがあり、松尾芭蕉の「奥の細道」にも登場する程に、昔から重要視されているポイントでもあります。
症状
主な症状は下腿前面外側の痛みです。
運動時に痛みが出現し、悪化すると歩行や足首のストレッチでも違和感を覚えることがあります。
炎症が強い場合には腫れや圧痛を伴うこともあります。
痛む部位によってはシンスプリントや他の腱炎との鑑別が必要になるため、症状が長引く場合には医療機関での評価が望まれます。
原因
主な原因は使いすぎ(オーバーユース)です。
急な運動量の増加、硬い路面でのランニング、足部アライメントの崩れなどが重なると負担が高まります。
また、ふくらはぎや足部周囲の筋バランス不良があると、前脛骨筋に過度な緊張が生じやすくなります。
治療方法
保存療法が中心になります。
炎症が強い場合にはアイシングや消炎鎮痛薬が用いられることがあります。
まずは運動量を調整し、患部を休ませることが重要です。
炎症が落ち着いた後は、足関節や下腿の柔軟性改善、フォームの見直し、筋力バランスの調整が再発予防につながります。
自己流の強いマッサージや過度なストレッチは悪化の要因になることもあるため注意が必要です。
鍼灸の効果
鍼灸には、筋緊張の緩和や血液循環を改善する作用があります。
前脛骨筋に過度な負担をかけずに筋の緊張を整えることで、局所のストレス軽減が期待されます。
また、周囲の後脛骨筋や長趾屈筋など隣接する筋群とのバランスを調整することで、足関節全体の動きを滑らかにすることも目的となります。
施術を検討する目安
医療機関での評価を受けたうえで、炎症が落ち着いたものの、
- 安静にしても違和感がある
- 運動再開で再発を繰り返す
- 下腿前面の強い張りや疲労感が続いている
このような場合に、鍼灸を検討する目安になります。
当室の考え方
前脛骨筋腱炎は局所の炎症であっても、背景には足部アライメントや股関節の動きが影響していることが少なくありません。
当室では、炎症の段階を見極めて刺激量を調整しながら、下肢全体の負荷と回復のバランスを整えることを目的に、鍼灸を行なっています。
この記事の著者

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鍼灸は体の調整機能に働きかける療法ですが、
すべての症状に適しているわけではありません。
当室では、症状の背景や経過を確認したうえで鍼灸の適応を判断し、
その方にとって無理のない選択をご提案いたします。
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松尾芭蕉「奥の細道」序文
「三里に灸すうるより、松島の月まづ心にかかりて」
(三里に灸をすえるなど、旅の支度にかかるうちに、早くももう松島の月が心に浮かんで)
膝下の足三里というツボにお灸をすえることが、旅の準備に大切である旨が記載されています。