慢性疼痛への対処と鍼灸治療の考え方

原因がはっきりしないまま長引く痛み「慢性疼痛」

慢性疼痛は、病気や怪我で生じる場合もあれば、検査で異常が見つからずに持続することもあります。

筋緊張や血流環境の影響が疑われる場合には、鍼灸も回復の一助になります

今回は慢性疼痛への対処方法と鍼灸の考え方についてご紹介いたします。

慢性疼痛とは

おおよそ3ヶ月以上持続する痛みを慢性疼痛といいます

国際疼痛学会(IASP)では「通常の治癒期間を超えて持続する痛み」と定義されています。

急性疼痛が身体への危険を知らせる警告信号であるのに対し、慢性疼痛は警告としての役割を超えて持続し、生活の質(QOL)に影響を及ぼします。

近年では、末梢だけでなく脳や脊髄を含む中枢神経系の機能変化が関与すると考えられています。

症状

主症状(例:腰痛であれば腰の痛み)に加え、全身倦怠感や睡眠障害、気分の落ち込みを伴うことがあります

「焼けるような痛み」「ビリビリする痛み」「うずくような痛み」など、表現も多様です。

活動量の低下や過剰な安静が続くことで、筋力低下や関節拘縮が生じ、さらに痛みが増強する悪循環が形成されることもあります。

原因

慢性疼痛の背景には、複数の要因が関与します

  • 末梢神経の損傷や過敏化
  • 脳や脊髄における中枢性感作
  • ストレスや不安など心理社会的要因

これらが重なり合うことで、痛みの悪循環が形成され、慢性化すると考えられています。

慢性化の一例

痛みを避けるために動かさない状態が続くと、筋肉は萎縮し関節は硬くなります。

その結果、軽い動作でも痛みを感じやすくなり、さらに活動量が低下するという循環に入ることがあります。

治療方法

原因に応じた医療機関での対応が基本です

整形外科、ペインクリニック、心療内科など、病態に応じた科での評価が重要になります。

慢性疼痛は単一の治療法で完結することは少なく、薬物療法、運動療法、心理的アプローチなどを組み合わせることが一般的です。

治療内容を理解し、何を目的として行っているのかを把握しながら取り組むことが大切です。

原因がはっきりしない場合

筋肉由来の痛みが背景にあるケースもあります。

筋緊張が持続すると、神経を圧迫したり、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)のような状態を引き起こすことがあります。

このような場合には、筋の状態を評価し、適切に整えることが一つの選択肢になります。

鍼灸の効果

鍼灸には、筋緊張の緩和と血流環境を調整する作用があります

筋筋膜性疼痛や筋緊張による神経圧迫が関与していると考えられる場合には、症状の軽減が期待できることがあります。

また、鍼刺激が内因性鎮痛系(身体に備わる痛みを抑える仕組み)に影響を与える可能性も報告されています。

施術を検討する目安

医療機関で重大な疾患が否定されていることを確認した後、

  • 保存療法を行っているが改善が停滞している
  • 筋緊張や姿勢の影響が疑われる
  • 活動量の低下や体の硬さが目立つ

このような場合には、鍼灸を検討する目安になります。

当室の考え方

慢性疼痛は単一の原因で説明できないことが多く、医療との連携が不可欠な領域です。

当室では「慢性疼痛を治す」と断定することではなく、筋緊張や血流環境といった、体の回復を妨げている可能性のある要素を整えることを目的として鍼灸を行なっています。

この記事の著者

中島 裕(Nakajima Yutaka)
中島 裕(Nakajima Yutaka)
鍼灸は体の調整機能に働きかける療法ですが、
すべての症状に適しているわけではありません。

当室では、症状の背景や経過を確認したうえで鍼灸の適応を判断し、
その方にとって無理のない選択をご提案いたします。

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