ED(勃起障害)への対処と鍼灸治療の効果
勃起状態の持続が困難になる「ED(勃起障害)」
EDはさまざまな要因により、陰茎に十分な血液が送られなくなることで起こります。
治療の中心はED治療薬ですが、初期段階では鍼灸も回復の一助になります。
今回はEDへの対処方法と鍼灸の効果についてご紹介いたします。
EDとは
勃起障害は性交時に十分な勃起が得られない、または勃起を維持できない状態を指します。
加齢とともに発症リスクが高まりますが、年齢に関係なく誰にでも起こり得る症状です。
1999年に日本でバイアグラが販売されて以降、EDの認知は広がり、国内には1,000万人以上のED患者がいると推定されております。
EDの種類
EDは原因により以下の3つに分類されます。
- 器質性ED:血管障害や神経障害など身体的要因によるもの
- 機能性(心因性)ED:心理的要因が主となるもの
- 混合型ED:器質性と機能性が複合しているもの
実際には複数の要因が重なっているケースが多く、明確に区別できないことも少なくありません。
EDの確認指標
簡易的な評価指標として「EHS(勃起硬度スケール)」があります。
- グレード0:陰茎は大きくならない
- グレード1:陰茎は大きくなるが、硬くはない。
- グレード2:陰茎は硬いが、挿入に十分なほどではない。
- グレード3:陰茎は挿入には十分硬いが、完全には硬くはない。
- グレード4:陰茎は完全に硬く、硬直している。
グレード2以下の場合には、泌尿器科での相談をご検討ください。
症状
代表的な症状は、いわゆる「中折れ」です。
勃起は、性的刺激により脳が興奮し、その信号が神経を介して陰茎に伝わり、陰茎海綿体の血管が拡張することで起こります。
この充血状態を維持できなくなることで、中折れが生じます。
EDでは、中折れから始まり、次第に勃起の維持が難しくなり、勃起自体が困難になることがあります。
勃起の仕組み
- 1:性的興奮により、脳から陰茎に信号が送られる
- 2:NOとcGMPが産生され、陰茎の平滑筋が緩み、血管が拡張する
- 3:陰茎海綿体に血液が充満し、勃起が起こる
- 4:血液の流出が抑えられ、勃起が維持される
- 5:性的興奮が収まり、cGMPを分解するPDE5の働きによって勃起が終了する
ED治療薬(PDE5阻害薬)は、cGMPの分解を抑制することで、勃起を維持しやすくする薬です。
性的興奮を高める薬ではない点も重要です。
原因
加齢、糖尿病、心血管疾患、腎臓疾患、神経疾患、ホルモンバランスの乱れ、外傷、睡眠障害、肥満、喫煙、ストレス、薬剤が挙げられます。
加齢
加齢に伴うテストステロンの低下や血管・血管内皮機能の変化などがEDに関与します。
糖尿病
高血糖が続くと血管や神経が障害され、勃起に必要な血流や神経の働きに影響を及ぼします。
血糖値を適切にコントロールすることが重要で、HbA1c 7%未満が一般的な目標の一つとされています。
心血管疾患
高血圧や動脈硬化などの血管障害は、陰茎への血流に影響してEDの要因になります。
腎臓疾患
血液の濾過機能が低下することで血管内壁が傷きやすくなり、動脈硬化につながります。
また腎臓疾患は、テストステロン値の低下や高プロラクチン血症に関連して性欲減退を起こします。
神経疾患
中枢神経や末梢神経障害の疾患は、脳への興奮伝達、脳から陰茎への指令に影響を及ぼします。
ホルモンバランスの乱れ
テストステロンなどの男性ホルモンが低下すると、勃起機能の低下や性欲減退につながります。
外傷
交通事故による脊髄損傷や、骨盤内臓器の手術による血管・神経の障害がEDの原因になります。
睡眠障害
睡眠不足や睡眠時無呼吸症候群では、夜間の酸素飽和度が低下することがあります。
こうした低酸素状態は血管機能に影響し、陰茎への血流にも影響することでEDの要因になります。
肥満
肥満は、血管機能の低下やテストステロンの低下などを介して、EDのリスクを高めます。
また、精子の濃度や運動率など、男性の生殖機能にも影響することがあります。
喫煙
二コチンによる血管収縮作用があるだけでなく、造精機能や精子運動率も低下するため、喫煙者は非喫煙者に比べて精子の量が15%も少ないといわれています。
ストレス
仕事や人間関係、性行為へのプレッシャーなどの心理的ストレスは、性的興奮や勃起に影響します。
薬剤
前立腺癌の治療薬など、一部の薬剤は男性ホルモンを抑制することで、EDにつながることがあります。
薬剤の原因が疑われる場合でも、減薬や服用中止は自己判断で行わず、必ず主治医にご相談ください。
治療方法
薬物療法が中心です。
EDの治療では、PDE5阻害薬による薬物療法が中心となります。
代表的な治療薬には、バイアグラ(シルデナフィル)、シアリス(タダラフィル)があります。
薬剤によって効果が現れるまでの時間や作用時間などに違いがあります。
治療薬が使用できない場合には、陰圧式勃起補助具や外科的治療が検討されます。
鍼灸の効果
鍼灸には血流や自律神経を整え、ストレスを緩和する作用があります。
骨盤周囲への鍼刺激によって、神経反射を介した局所の血流改善がみられたことも報告されています。
EDに対する鍼灸の効果については研究が進められており、特にストレスや自律神経の影響が関与している場合や、ED治療薬(PDE5阻害剤)だけでは十分な効果が得られない場合においても一定の効果が期待されています。
施術を検討する目安
泌尿器科での診断や治療状況を踏まえたうえで、
- 過労やストレスが勃起に影響していると感じる
- ED治療薬を使用しているものの、十分な効果が得られない
- 睡眠や自律神経などの不調も気になっている
このような場合には、鍼灸を検討する目安となります。
鍼灸を受ける際の注意点
鍼灸は比較的安全性の高い施術とされていますが、お身体に鍼を用いる以上、内出血やだるさなどの反応がみられることがあります。
副反応については『鍼灸の副反応(内出血やだるさ)について』もあわせてご確認ください。
こうした特徴を踏まえたうえで、症状や体調に応じて施術を検討していくことが大切になります。
当室の考え方
EDには、腎臓疾患や神経疾患など、医療機関での診断・治療を優先するものがあります。
そのため当室では、必要に応じて医療機関の受診をお願いしています。
一方で、治療後も症状が続いている、といった方も少なくありません。
私はそのような不調を「仕方ない」と諦めてほしくありません。
鍼灸は万能ではありませんが、検査で捉えきれない身体の不調に対してアプローチすることが可能です。
だからこそ当室では、お身体全体を丁寧にみつめ、検査結果だけではわからない、一人ひとりの「つらさ」に向き合うことを何より大切にしています。
この記事の著者

-
鍼灸師/港区白金で開業8年
安心してご相談いただける鍼灸院を目指し、日々施術に取り組んでおります。
この著者の最新記事一覧
鍼灸適応疾患以外に関する記事2026年8月24日揉み返しと好転反応の違いについて
神経系2026年8月24日複合性局所疼痛症候群(CRPS)への対処と鍼灸治療の効果
運動器系2026年8月15日筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)への対処と鍼灸治療の効果
鍼灸適応疾患以外に関する記事2026年8月14日鍼とマッサージは別々に受けたほうがいいのか
施術経験のある症状・疾患に関する記事
アクセス
東京都港区白金3-9-16 マロン白金2A
東京メトロ
白金高輪駅(4番出口)より 徒歩6分
白金台駅(2番出口)より 徒歩9分
都営バス
渋谷-新橋(赤羽橋)「四の橋」より徒歩3分
渋谷-田町「三光坂下」より徒歩3分




ED治療薬を使用する際の注意点
ED治療薬はインターネットなどで購入できる場合がありますが、偽造薬や品質が保証されていない医薬品には注意が必要です。
また、バイアグラなどのPDE5阻害薬は、ニトログリセリンなどの硝酸薬と併用すると、血圧が過度に低下するおそれがあります。
持病や服用中の薬によっては使用できない場合があるため、自己判断で購入・服用せず、医療機関で相談することが大切です。