過敏性腸症候群(IBS)への対処と鍼灸治療の効果
検査に異常がなく、腹痛や便秘・下痢を繰り返す「過敏性腸症候群」
過敏性腸症候群はストレスで悪化する傾向があるため、鍼灸で自律神経を整え、ストレスを緩和することが効果的です。
今回はそんな過敏性腸症候群について綴らせていただきました。
過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群「IBS(Irritable Bowel Syndrome)」は、腸に異常はみられないが腹痛と便秘や下痢を繰り返す病気です。
血液検査や内視鏡検査でも異常がなく、ストレスで症状が悪化する傾向があるため、ストレスによる自律神経の乱れが腸の蠕動運動に影響していると考えられています。
また、排便後は痛みが軽減されるという特徴があります。
症状
腹痛と下痢や便秘が主な症状です。
便秘に伴う「膨満感」や「おなら」の症状が強く現れることもあります。
排便することで症状は落ち着き、睡眠時には症状が現れないことが多いのも特徴です。
症状の現れ方により下痢型、便秘型、混合型に分かれます。
下痢型
腹痛と下痢(水様便)により、1日に何度もトイレに行くタイプです。
男性に多い傾向があります。
『下痢症に関する詳細はこちら』
便秘型
腹痛と便秘による排便困難や残便感に悩まされるタイプです。
女性に多い傾向があります。
『便秘症に関する詳細はこちら』
交代型
下痢と便秘を繰り返しますタイプです。
男性に下痢症、女性に便秘症が優位に現れやすいのは、腸の働きに性ホルモンが一定の影響を与えているためだと考えられています。
原因
原因は不明。
ストレスで悪化するため自律神経が乱れて腸の蠕動運動に影響を及ぼすと考えられています。
ストレスを受けると脳内で分泌される「副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)」が腸の内臓求心性神経を過剰に刺激することで病態を招くとの考えが有力です。
また、ストレスによる腸内細菌叢の変化も関連があるようです。
診断と治療方法
過敏性腸症候群は内視鏡や血液検査に異常がないことが前提のため、まずは検査を行い大腸癌などの可能性を排除することが重要になります。
大腸癌や潰瘍性大腸炎の可能性が否定されると、過敏性腸症候群の診断基準に従い確定診断がされ、薬物療法、心理療法、生活習慣の改善が主に行われます。
IBS診断基準(ローマ基準)
過去3カ月の間に週1回の頻度で腹痛がみられ、かつ以下の2つ以上に該当する場合に過敏性腸症候群となります。
- 排便で症状が和らぐ
- 排便回数で痛みが変化する
- 便の硬さで痛みが変化する
薬物療法
腸の運動を整える薬、腹痛を抑える薬、腸内細菌を整える薬、下痢止め薬などが処方されます。
また、抗不安薬、自律神経調整薬、漢方薬が処方されるケースもあります。
心理療法
心理的ストレスから悪化することも多いため、薬物療法で改善がみられない場合には、「ストレスマネジメント」や「リラクゼーション療法」を薬物療法と併用していくこともあります。
生活習慣の改善
睡眠不足や過労などの悪化因子があれば、それらの改善を優先し、食事、睡眠、運動の日常生活の見直しを行います。
また、生活習慣の改善に併せて鍼灸を取り入れられることもおすすめです。
鍼灸の効果
鍼灸はストレスの緩和や自律神経を整えることに優れています。
過敏性腸症候群は自律神経が乱れることで腹痛や便秘・下痢の他に、頭痛や頭重感、動悸や倦怠感、四肢の冷感などの様々な症状が現れるケースもあります。
鍼灸では過緊張状態に陥った自律神経の働きを和らげたり、βエンドルフィンの分泌を活性化させるリラクセーション効果を発揮することで症状を和らげる期待ができます。
また、腸管内の環境(血流等)が整うことで栄養を消化・吸収しやすいお身体にもなります。
そのため、生活週間の改善と併せておこなうことで、より高い改善効果を期待することが出来ます。
腹痛や便秘・下痢が続く場合には
腹痛や便秘・下痢が続く場合、まずは消化器内科の受診をご検討ください。
検査結果に異常がなく、過敏性腸症候群の疑いのもと薬物治療や生活習慣の改善に取り組まれている場合には、ストレス緩和や自律神経を整えることに優れた鍼灸の併用をおすすめいたします。
この記事の著者
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『白金のかかりつけ鍼灸院』を目指し、日々鍼灸臨床に励んでおります。
鍼灸は様々な症状の改善へ効果が期待できる一方、効果の期待出来ないものや病院での治療を優先した方が良いケースもございます。
当室では鍼灸適応を判別し、ご利用者様に最善の治療方法をご提案させていただきます。
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鍼灸師のコメント
蠕動運動と自律神経の関係
腸管は輪状筋と縦走筋の2つの筋肉で構成され、それらがリズミカルに収縮を繰り返す事で便を移動させます。
この腸管の動きを蠕動運動といい、蠕動運動をコントロールするのが自律神経になります。
自律神経の乱れは蠕動運動の乱れにつながり、排便回数や便の状態が変化します。
『自律神経に関する詳細はこちら』