過敏性腸症候群(IBS)への対処と鍼灸治療の考え方
消化器疾患の中でも頻度の高い疾患の一つ「過敏性腸症候群(IBS)」
検査では明らかな異常が見つからないにもかかわらず、腹痛や下痢・便秘を繰り返すことが特徴です。
ストレスで悪化しやすく、鍼灸で自律神経を整えることも症状を安定させる一助になります。
今回は過敏性腸症候群への対処方法と鍼灸の考え方についてご紹介いたします。
過敏性腸症候群とは
IBSは通常の検査では、潰瘍や炎症などの質的異常が認められないにもかかわらず、腹痛と便通異常を繰り返す機能性消化管障害です。
有病率は一般成人の5〜20%とされ、比較的身近な疾患です。
生命を脅かす病気ではありませんが、日常生活や仕事に支障をきたし、生活の質(QOL)を大きく低下させることがあります。
特徴として、排便後に腹痛が軽減することが多い点が挙げられます。
症状
腹痛と、下痢や便秘などの便通異常を慢性的に繰り返す状態です。
男性では下痢型が多く、女性では便秘型が多い傾向がみられます。
腹部膨満感、ガス症状、心窩部痛などの消化器症状のほか、頭痛やめまい、不安感などの自律神経症状を伴うこともあります。
IBS診断基準(RomeⅣ基準)
直近3カ月間に週1回以上の腹痛があり、かつ以下のうち2つ以上を満たす場合に診断されます。
- 排便によって症状が軽減する
- 排便回数の変化を伴う
- 便の形状(硬さ)の変化を伴う
さらに、症状の出現が6カ月以上前から続いていることが条件となります。
原因
明確な原因は解明されていません。
ストレスによる自律神経の乱れが腸の蠕動運動に影響すると考えられています。
ストレス時に分泌されるCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が腸の神経を刺激し、過敏性を高めることが示唆されています。
また、腸内細菌叢の変化との関連も研究されています。
治療方法
薬物療法と生活習慣の調整が基本になります。
腸の運動を整える薬、腹痛を抑える薬、整腸剤、下痢止めや便秘薬などが処方されます。
症状によっては抗不安薬や漢方薬が用いられることもあります。
睡眠不足、過労、不規則な食生活などが悪化因子となるため、生活リズムを整えることも重要です。
鍼灸の効果
鍼灸には自律神経の調整を補助し、ストレス反応を緩和する作用があります。
腸そのものを直接治すというよりも、過緊張状態にある神経系の働きを落ち着かせることで、症状の波を緩やかにする補助的役割になります。
また、リラックスに関与するβエンドルフィンの分泌促進が報告されており、慢性的な腹痛や緊張感の緩和につながる可能性があります。
施術を検討する目安
医療機関で過敏性腸症候群と診断されていることを前提に、
- 症状の波が続いている
- ストレスや緊張で症状が悪化する自覚がある
- 自律神経症状(冷え、頭痛、不眠など)を併発している
このような場合に、鍼灸を検討する目安になります。
当室の考え方
過敏性腸症候群は、まず医療機関での診断と治療が前提です。
当室では、腸を直接「治す」とは考えておらず、自律神経の過緊張を整えることで、症状の波を和らげていくことを目的に鍼灸を行なっています。
この記事の著者

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鍼灸は体の調整機能に働きかける療法ですが、
すべての症状に適しているわけではありません。
当室では、症状の背景や経過を確認したうえで鍼灸の適応を判断し、
その方にとって無理のない選択をご提案いたします。
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